敵が次々と押し寄せる道のそばに砲台やキャラクターを配置し、拠点へ到達されないように防ぐ――。こうしたゲームは「タワーディフェンス」と呼ばれています。
英語ではtower defense(タワーディフェンス)と表記され、「TD」と略されることもあります。towerは「塔」、defenseは「防衛」という意味ですが、実際のゲームでは本物の塔を守るとは限りません。植物や兵士、ロボットなどが防衛役になる作品もあれば、敵が進むルートそのものをプレイヤーが変えられるタイプもあります。
1990年の『Rampart』には後のタワーディフェンスにつながる要素があり、2000年代にはRTSのカスタムゲームやブラウザゲームを通じて現在に近い形式が広がっていきました。
タワーディフェンスとはどんなゲーム?
タワーディフェンスは、敵の進行を防ぐために防衛設備やユニットを配置し、拠点やゴールを守ることを中心とした戦略ゲームです。
作品によって細かなルールは異なりますが、代表的な流れは次のようになります。
- 敵がフィールドへ出現する
- 砲台やキャラクターなどを配置する
- 配置したユニットが敵を攻撃する
- 敵を倒して資金などを獲得する
- 新しいユニットを置いたり、既存のものを強化したりする
- 次に押し寄せる敵を迎え撃つ
一定数の敵がまとまって登場する単位は、英語のwave(ウェーブ:波)になぞらえて「ウェーブ」と呼ばれることがあります。
多くのゲームでは、敵が防衛網を突破してゴールへ到達するとライフや拠点の耐久値などが減ります。それが尽きればステージ失敗となるため、押し寄せる敵を途中で食い止めなければなりません。
タワーが自動で攻撃するタイプでは、敵を一体ずつ自分で狙うことよりも、「何を、どこへ、いつ置くか」が重要になります。
同じ砲台でも、敵が一瞬しか射程に入らない場所と、曲がり角のように長く射程内を通る場所では攻撃できる回数が変わります。
資金の使い方にも選択があります。安いユニットを増やすのか、資金を残して強いタワーを置くのか、今あるものを強化するのか。限られた資源をどこへ使うかも防衛の一部です。
なお、ウェーブ制、自動攻撃、固定された進路などは代表的な特徴ではあるものの、すべてのタワーディフェンスに必須ではありません。アクションやキャラクター育成を取り入れたタイプもあります。
タワーディフェンスでいう「タワー」とは?
ジャンル名でいう「タワー」は、主に敵を攻撃したり、移動を妨害したりするために配置する防衛設備やユニットを指します。
大砲、弓兵、魔法使い、ロボット、罠、植物、戦闘キャラクターなど、見た目はゲームによってさまざまです。守る対象も城や基地、門、村、ゴール地点などに変わります。
さらに、タワーの役割は敵へダメージを与えることだけではありません。
敵の移動速度を下げる、複数の敵をまとめて攻撃する、遠距離から狙う、空中の敵に対応するといった役割分担を持たせるゲームもあります。
2007年に登場した『Desktop Tower Defense』でも、通常攻撃のタワーに加えて敵を凍らせるものや、空中の敵へ対処する防衛手段が用意されています。
そのため「タワーディフェンス」は、塔そのものを守るというより、防衛用の設備やユニットを配置して敵の進撃を防ぐゲームを表すジャンル名として使われています。
敵が進む道も一本道とは限らない
敵が決められた一本道を進み、その横へ砲台を並べる形式はタワーディフェンスの代表例です。
しかし、敵の進路が最初から完全に固定されているとは限りません。
何もないフィールドへタワーを配置し、その置き方によって敵が通る場所へ影響を与えられるタイプもあります。
たとえばタワーを壁のように並べて敵を遠回りさせれば、同じ防衛設備でも長い時間攻撃できる場合があります。『Desktop Tower Defense』も空いたフィールドへタワーを配置して防衛線を作る形式で、配置が敵の進み方にも関係します。
敵をどこで攻撃するかだけでなく、どこを通らせるかまで戦略になるゲームもあるということです。
タワーディフェンスはどこから生まれた?
タワーディフェンスには、「これが最初の1本」と断定しにくい歴史があります。
現在のジャンルにつながる先駆的な作品としてよく挙げられるのが、Atari Gamesのアーケードゲーム『Rampart(ランパート)』です。
1990年に登場した『Rampart』では城壁を組み立て、その内側へ大砲を配置します。砲撃のあとには壊された城壁を修復し、次の戦いに備えます。MobyGamesでも1990年のアーケード作品として記録され、城の建設、大砲の配置、砲撃、修復を組み合わせたゲームとして紹介されています。
ただし、『Rampart』を現在のタワーディフェンスとまったく同じ形式と考える必要はありません。
その後、現在よく見られるTDが広がる舞台の一つになったのが、PCのRTS(real-time strategy:リアルタイムストラテジー)とカスタムゲーム文化でした。
Warcraft IIIなどのカスタムゲームから広がった
『StarCraft』や『Warcraft III』では、プレイヤーが通常とは異なるルールを持つマップを作って遊ぶ文化が発達しました。
特に2002年に登場した『Warcraft III』ではカスタムゲーム制作が盛んになり、Tower DefenseやDefense of the Ancientsなどが人気を集めました。Blizzardも、こうしたユーザー制作ゲームが独立した新しいジャンルへ発展していったと振り返っています。
この流れを象徴する作品の一つが『Element TD(エレメントTD)』です。
『Element TD』はWarcraft III向けの作品として展開され、その後StarCraft II、Dota 2、モバイル、独立作品の『Element TD 2』へと広がっています。公式サイトでも複数のプラットフォームへ展開してきた歴史が掲載されています。
『Rampart』のような先駆的作品がある一方、現在よく知られるタワーディフェンスの普及には、こうしたカスタムゲーム文化も大きく関わりました。
そのため、「Warcraft IIIが世界初のタワーディフェンス」とするのも、『Rampart』の時点ですでに現在のジャンルが完成していたとするのも、歴史を単純化しすぎます。
2000年代にはブラウザゲームでも広がった
タワーディフェンスがRTSのカスタムゲーム以外でも触れやすくなった時期の一つが、2000年代後半です。
代表例が、Paul Preeceが制作した『Desktop Tower Defense(デスクトップ・タワーディフェンス)』です。
同作は2007年3月に制作され、同年7月までに1,570万回以上プレイされました。空いたフィールドへ能力の異なるタワーを配置し、敵を倒して得た資金で新しいタワーを購入したり、既存のものを強化したりします。
ブラウザから遊べるゲームが広がったことで、タワーディフェンスはRTSを持っていない人でも触れやすいジャンルになりました。
その後はPCだけでなく家庭用ゲーム機やスマートフォンにも広がり、アクション、育成、カードなど別ジャンルの要素を組み合わせた作品も登場しています。
タワーディフェンスとRTSは何が違う?
タワーディフェンスとRTSには歴史的なつながりがありますが、典型的な遊び方には違いがあります。
RTSでは、資源を集める、基地を建てる、ユニットを生産する、複数の部隊を移動させるといった幅広い操作をリアルタイムで行うゲームが多く見られます。
一方、タワーディフェンスでは防衛設備の配置や強化と、押し寄せる敵への対応に重点を置くタイプが中心です。
| 比較 | タワーディフェンス | RTS |
|---|---|---|
| 典型的な遊びの中心 | 防衛設備の配置・強化 | 資源管理・生産・部隊操作 |
| 防衛 | ゲームの中心になりやすい | 複数の要素の一つになりやすい |
| ユニット操作 | 自動攻撃するタイプが多い | 直接移動させるタイプが多い |
| 敵の登場 | ウェーブ形式がよく見られる | 敵勢力が継続的に活動する場合が多い |
| 主な判断 | 配置場所・相性・資金配分 | 経済・生産・移動・戦闘 |
もちろん、両者の境界が完全に分かれているわけではありません。
キャラクターを直接操作できるタワーディフェンスもあれば、基地建設や資源管理を深く取り入れたゲームもあります。反対にRTSにも、拠点を一定時間守り続ける防衛ステージがあります。
そのため「自動攻撃ならTD」「ユニットを動かすならRTS」と一つの要素だけで分けることはできません。
防衛設備の配置と、押し寄せる敵への対応が遊びの中心になっているかが、タワーディフェンスを見分ける大きな手掛かりです。
なぜ「置くこと」がゲームになるの?
タワーディフェンスは画面だけを見ると、「ユニットを置いたら自動で戦ってくれるゲーム」に見えることがあります。
しかし、プレイヤーの判断は配置した時点で終わりません。
敵が長く射程内を通る場所はどこか。大量の敵が集まりやすい場所には範囲攻撃を置くべきか。序盤で資金を使うのか、後のウェーブに備えて残すのか。今あるタワーを強化するのか、新しい場所へ別の役割を持つものを追加するのか。
同じステージでも、この選択によって防衛の形は変わります。
敵側にも違いがあります。速度が速い敵、耐久力の高い敵、大量に現れる敵、空中を進む敵などが登場する場合、一種類の防衛設備だけでは対応しにくくなります。
『Desktop Tower Defense』にも速度や耐久力の異なる敵が登場し、空中を移動する敵には対応したタワーが必要になります。
そこで、攻撃速度の速いタワー、広い範囲を狙うもの、敵を遅くするもの、空中の敵へ対応できるものなどを組み合わせます。
一度置いた設備を簡単に動かせないゲームでは、序盤の配置が後半まで響きます。売却や建て替えができる場合には、「いつ防衛網を組み替えるか」という選択も生まれます。
敵が動き始める前から結果を予測し、先に配置を決めておくことが、タワーディフェンスの戦略性につながっています。
まとめ
タワーディフェンスとは、砲台やキャラクターなどの防衛ユニットを配置し、押し寄せる敵から拠点やゴールを守ることを中心とした戦略ゲームです。
「タワー」には砲台だけでなく、兵士や植物など防衛を担うユニットも含まれます。敵の進路が固定されたゲームもあれば、配置によって通り道へ影響を与えられるタイプもあります。
歴史では1990年の『Rampart』に先駆的な要素が見られ、その後『Warcraft III』などのカスタムゲーム文化を通じて現在に近いタワーディフェンスが広がりました。2000年代には『Desktop Tower Defense』のようなブラウザゲームも登場しています。
何を置くかだけでなく、どこへ置き、次の敵へどう備えるかを考える。 そうした配置と先読みが、タワーディフェンスを特徴づけるゲーム性です。
参考情報
- International Arcade Museum / Museum of the Game「Rampart」
- Blizzard Entertainment「Warcraft III: Reforged」
- Blizzard Entertainment「Heroes of the Storm Panel Recaps at BlizzCon 2013」
- Element TD公式サイト
- Hand Drawn Games「Desktop Tower Defense」

