ハイファンタジーとローファンタジーの違いは?世界設定と分類の基準

当ページのリンクには広告が含まれています。

剣と魔法が登場する物語を探していると、「ハイファンタジー」「ローファンタジー」という言葉を見かけることがあります。

名前だけを見ると、魔法の強さや物語の規模を表しているようにも思えます。しかし、代表的な分類ではそこが最大の違いではありません。

ハイファンタジーは、私たちの現実とは異なる世界を主な舞台とする作品。ローファンタジーは、現実世界やそれに近い世界へ魔法・怪異・超能力などの幻想的な要素が入り込む作品と捉えると、基本的な違いをつかみやすくなります。

ただし、ハイ/ローには複数の使われ方があります。「魔法が多ければハイ、少なければロー」と一つの基準だけで分けられるものではありません。

目次

ハイファンタジーとローファンタジーは世界設定が一つの目安

二つの違いを見る手がかりになるのが、「一次世界」と「二次世界」という考え方です。

私たちが暮らす現実に相当する世界を一次世界、作者が作り上げた別の世界を二次世界として捉えると、それぞれの特徴が見えてきます。

比較ハイファンタジーローファンタジー
主な舞台現実とは異なる世界現実世界またはそれに近い世界
幻想的な要素世界の仕組みとして存在することが多い日常へ入り込む形が多い
魔法の量多いとは限らない少ないとは限らない
物語の規模壮大でなくてもよい日常規模に限らない
作品の優劣関係しない関係しない

たとえば、現実とは異なる地理や国家、歴史を持つ世界があり、その中で物語の大半が進むなら、ハイファンタジー側の特徴を持ちます。

一方、現代の東京に妖怪が現れる、普通の学校の裏側に魔法使いの社会が存在するといった設定なら、ローファンタジー側に近づきます。

ただし、これは代表的な分け方の一つです。出版社や作品、ゲームなどでは別の基準で「ハイ」「ロー」を使う場合もあります。

「二次世界」はトールキンのファンタジー論にも登場する

「Secondary World(二次世界)」という考え方は、J・R・R・トールキンのファンタジー論でも知られています。

トールキンは「On Fairy-Stories(妖精物語について)」で、作者が作り上げる二次世界について論じました。

独自の地理や歴史、文化を持つ世界そのものが物語の土台になる作品を考えるときにも、この考え方は役立ちます。

ただし、トールキンが現在使われている「ハイファンタジー対ローファンタジー」という二分類そのものを作った、という意味ではありません。

ハイファンタジーは「魔法が多い作品」ではない

ハイファンタジーと聞くと、巨大な城、ドラゴン、大魔法、世界を巻き込む戦争などを思い浮かべるかもしれません。

そうした作品もありますが、魔法の量や派手さだけでハイファンタジーになるわけではありません。

完全な架空世界を舞台にしながら、魔法をほとんど使わず、政治や旅、人間同士の争いを中心に描く作品も作れます。舞台そのものが現実とは異なる独立した世界なら、世界設定を基準にした分類ではハイファンタジー側に位置づけられます。

反対に、現代日本を舞台に大量の魔法や怪異が登場する作品もあります。幻想的な要素が派手だからという理由だけで、ハイファンタジーになるとは限りません。

「ハイ」と「ロー」は作品の格付けではない

「ハイ」「ロー」という言葉から、ハイファンタジーのほうが壮大で本格的、ローファンタジーは小規模という印象を受けることもあります。

しかし、世界設定を基準にした使い方では、作品の品質を表す言葉ではありません。

ハイファンタジーでも、一つの村や家族を中心にした物語は作れます。ローファンタジーでも、都市や世界全体を巻き込む事件を描けます。

highとlowは、作品の優劣を示す言葉ではありません。

ローファンタジーでは日常と非日常の境目が物語になる

ローファンタジーでは、読者にとって見慣れた日常の中へ、現実には存在しないものが入り込む構成がよく見られます。

現代の街に妖怪がいる。学校生活の裏側で魔法使いが活動している。会社員だけが幽霊を見る。住宅街に、人間には知られていない怪異の世界が隠れている。

こうした作品では、いつもの世界に「あり得ないもの」が存在すること自体が物語の魅力になります。

現代都市を中心に幻想的な出来事を描く作品には、「urban fantasy(アーバンファンタジー)」という呼び名もあります。

ローファンタジーと重なる作品はありますが、二つは完全な同義語ではありません。都市を舞台にしている作品が、一つのジャンルだけに収まるとも限りません。

一つの作品が複数のジャンルの特徴を持つこともあります。

異世界転移ものはハイファンタジー?ローファンタジー?

分類に迷いやすいのが、現実世界と異世界の両方が登場する作品です。

主人公が現代日本の人物でも、序盤で異世界へ移動し、その後の物語の大半が異世界で進むなら、主人公の出身地より「物語の主な舞台がどこか」を見るのが一つの目安になります。

日本の小説投稿サイト「小説家になろう」でも、現実とは異なる世界を主な舞台とする作品をハイファンタジー、現実に近い世界へファンタジー要素を加えた作品をローファンタジーとして分類しています。

この基準なら、

現代人が登場する=ローファンタジー

ではありません。

現代日本から異世界へ転生・転移したとしても、その後の中心舞台が異世界ならハイファンタジーに分類されやすくなります。

反対に、異世界から魔物や魔法が現代日本へやって来て、物語の中心が現代社会にあるなら、ローファンタジー側の特徴が強くなります。

二つの世界を行き来する作品は境界が曖昧

主人公が現実世界と異世界を何度も往復する作品になると、ハイとローのどちらか一方へ分けにくくなります。

現実世界から別世界へ通じる入口が登場する物語には、「portal fantasy(ポータル・ファンタジー)」という呼び方もあります。

ポータル・ファンタジーは「世界を移動する物語」という構造に注目した呼び名なので、ハイ/ローと同じ意味ではありません。

一つの作品が複数のジャンルに当てはまることもあるため、ハイとローだけですべてのファンタジーを分けられるわけではありません。

なぜ「魔法の量」でハイとローを分ける説明もあるの?

ハイファンタジーとローファンタジーについて、

「魔法や怪物が多いのがハイ」
「魔法を控えた現実的な作品がロー」

と説明されることもあります。

こうした違いが生まれる背景には、ハイ/ローという言葉が常に同じ基準だけで使われているわけではないことがあります。

世界設定を見る分類とは別に、幻想要素の強さや物語の雰囲気を表すためにハイ/ローを使う例もあります。

さらに文献によっては、「high fantasy」を中世風・宮廷的な世界を描く作品に使うなど、現実世界か異世界かとは別の視点で分類することもあります。反対に、日常や都市を舞台にした幻想を必ず「low fantasy」と呼ぶわけではなく、別のジャンル名を使う場合もあります。

つまり、ファンタジーには一つだけの分類方法があるわけではありません。

作品を見るときは、

  • 舞台が現実世界か、独立した架空世界か
  • 魔法や怪物がどの程度身近な存在か
  • 壮大な英雄譚なのか、日常に近い物語なのか
  • その作品や掲載先がどの分類基準を採用しているか

といった違いによって、同じ「ハイ」「ロー」でも意味が変わる場合があります。

なお、「high fantasy」という表現は、児童文学作家ロイド・アリグザンダー(Lloyd Alexander)が1971年に発表した「High Fantasy and Heroic Romance」という論考にも確認できます。

ただし、現在のハイファンタジーという言葉の意味が、この論考だけで決まったわけではありません。ハイファンタジーとローファンタジーには、現在も複数の定義や使い方があります。

また、「なぜ二次世界側をhigh、現実に近い側をlowと呼ぶのか」という名称そのものの由来については、一つの明確な説明に絞るのが難しい部分です。少なくとも、highとlowが作品の格や魔法の強さをそのまま示しているわけではなく、文脈によって分類の基準が異なります。

まとめ

ハイファンタジーとローファンタジーの違いは、魔法の強さよりも物語の世界が私たちの現実とどのような関係にあるかを見ると捉えやすくなります。

代表的な分類では、現実とは異なる独立した世界を主な舞台にするのがハイファンタジー、現実やそれに近い世界へ幻想的な要素が入り込むのがローファンタジーです。

ただし、これは唯一の分類法ではありません。現代都市を舞台にする作品、異世界を行き来する作品、魔法を抑えた架空世界など、簡単には分けられない例もあります。また、作風や幻想性を基準にhigh/lowを使う場合もあります。

ハイとローは作品の格付けではなく、ファンタジー作品の特徴を見るための分類語です。 「舞台となる世界」を基準にしているのか、それとも「幻想性や作風」を基準にしているのかを見ると、ジャンル表示の違いも理解しやすくなります。

参考情報

  • The Encyclopedia of Science Fiction「Fantasy」
  • The Tolkien Estate/Verlyn Flieger「On Fairy Stories」
  • 小説家になろう ヘルプセンター「ジャンル」
  • MDPI「The Specificity of Fantasy and the “Affective Novum”: A Theory of a Core Subset of Fantasy Literature」
  • Texas A&M University Libraries「The Science Fiction and Fantasy Research Database:Alexander, Lloyd」
  • The Journal of Anime and Manga Studies「A Survey of the Story Elements of Isekai Manga」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

目次