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なぜゲームのチュートリアルは丁寧に?遊びながら覚える進化

ゲームのチュートリアルがここまで丁寧になったのは、単に最近のゲームが親切になったからではありません。ゲームそのものが複雑になり、紙の説明書だけでは足りなくなり、しかも最初の数分で「わからない」と感じた人がそのまま離れやすくなったため、ゲームの中で自然に教えることが重要な設計になったからです。今のチュートリアルは、説明のための説明ではなく、ゲーム体験の入口そのものになっています。


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昔のゲームにチュートリアルがなかったわけではない

昔のゲームは、今より不親切だったというより、教える場所がゲームの外にあったと見るほうが自然です。The Strong National Museum of Play の整理でも、初期のゲーム文化では印刷物やマニュアル、筐体まわりの情報が大きな役割を持っていました。加えて、当時は限られた容量の中でゲームそのものを成立させる必要があり、画面内に長い説明や段階的な案内を入れる余裕は今ほど大きくありませんでした。表示できる文字量やUIの柔軟さにも制約があり、ルールや背景、操作方法の多くは外部の説明書に任されやすかったのです。

一方で、ゲーム内でプレイヤーに学ばせる発想そのものは、最近になって急に生まれたわけでもありません。The Strong によれば、少なくとも1980年代初頭にはアーケードゲームで画面内の説明表示が見られ、短い案内や視覚的なヒントを使って遊び方を伝える工夫はすでに存在していました。つまり、昔は案内がなかったのではなく、容量や表示の制約が大きい中で、外部説明と短いゲーム内案内を組み合わせていたという違いが大きいのです。


いちばん大きな理由は、ゲームが複雑になったから

チュートリアルが丁寧になった最大の理由は、やはりゲーム側の複雑化です。2022年のレビューでは、ゲーム内チュートリアルはとくに複雑なゲームプレイを持つ作品ほど重要だと整理されています。必要なタイミングで必要な説明が出ること、プレイヤーが実際に試しながら学べること、すぐに結果が返ることは、理解を助けやすい特徴としてまとめられていました。

この流れは実データでも確認されています。3作品・4万5000人超を対象にした CHI 2012 の研究では、もっとも複雑で慣習から外れた Foldit で、チュートリアルがプレイ時間を最大29%、進行度を最大75%押し上げました。一方で、より単純で試行錯誤しながら理解しやすいゲームでは、チュートリアルの効果はかなり小さくなっていました。ゲームが複雑になるほど、「触ればわかるだろう」では済みにくくなったわけです。


説明書から、ゲーム内オンボーディングへ重心が移った

昔は説明書を読んでから遊ぶ流れが自然でしたが、今はダウンロードしてすぐ触り始めるのが当たり前になりました。そうなると、ゲームの外でまとめて教えるより、ゲームの中で必要なことだけを順番に覚えさせるほうが合っています。2023年の研究でも、チュートリアルはプレイヤーが最初に触れる first-time gaming experience の中心であり、導入の作り方そのものが継続率に影響しうると整理されています。

とくにモバイルゲームでは、この変化がさらにわかりやすく出ます。2020年の研究では、チュートリアルの存在は、シンプルなゲーム文脈でも非熟練プレイヤーのフロー感や継続利用意図にプラスに働きました。いまのチュートリアルが丁寧なのは、プレイヤーを信用していないからではなく、複雑なゲームでも楽しめるところまで最短で連れていく必要があるからです。


ただ長く説明すればいいわけでもない

説明しすぎると退屈になる

丁寧なチュートリアルが重要だからといって、長い文章を最初にまとめて読ませればよいわけではありません。2023年の研究では、チュートリアルは学習の入口である一方、説明くさすぎると退屈になり、逆にドロップアウトを招きうると指摘されています。せっかく遊び始めたのに、なかなか自由に触らせてもらえない状態が長いと、「面倒そう」という印象が先に立ってしまうからです。

説明が足りないと、あとで苦しくなる

逆に、説明が少なすぎるのも問題です。同じ研究では、チュートリアルが不足していると、あとになって強い混乱やストレスにつながり、やはり離脱率を上げうると整理されています。だから今の良いチュートリアルは、長い文章で一気に教えるのではなく、新しい操作や能力が必要になった瞬間にだけ短く示し、すぐ実際に使わせる形へ寄っていきました。

ここで重要なのは、丁寧さと説明量は同じではないことです。2022年のレビューでも、just-in-time な提示、練習、即時フィードバックが有利だとまとめられていました。最近のチュートリアルが「親切なのに説明していないように見える」ことがあるのは、知識を渡すより、プレイヤーが自然に習得できるよう環境を作っているからです。


いまのチュートリアルは「離脱させない設計」でもある

現代のチュートリアルは、単なる親切な導入ではありません。とくに継続プレイが重要なゲームでは、最初の数分で「動かせる」「わかる」「もう少し続けたい」と感じてもらえるかがかなり重要です。2023年の研究では、チュートリアルが退屈すぎても、不足していてあとで詰まっても、どちらもプレイヤーの離脱につながりうるとされています。

この話は、モバイルや free-to-play の時代になるとさらに重くなります。2020年の研究では、モバイルゲーム市場ではダウンロード後24時間以内の高い離脱が課題として挙げられており、導入のわかりやすさは継続利用意図と切り離せません。いまのチュートリアルが丁寧なのは、単なる過保護ではなく、最初の数分そのものをゲームとして成立させる必要が強くなったからでもあります。


まとめ

ゲームのチュートリアルがこれほど丁寧になったのは、ゲームが複雑になり、紙の説明書だけでは足りなくなり、しかも最初の数分で理解してもらうことがますます重要になったからです。昔のゲームにも案内はありましたが、説明書や短い画面表示に分散していました。そこから今は、必要な操作を必要な瞬間に、遊びの流れを止めすぎずに教える方向へ進んでいます。チュートリアルが丁寧になったのは、単なる親切さの問題ではなく、「まず遊ばせながら覚えさせる」ほうが現代のゲームに合っているからです。


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気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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