言葉の響きで印象はなぜ変わる?身近な音と意味の意外な関係

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意味を知らない言葉を聞いただけなのに、「丸そう」「小さそう」「重たそう」と感じることがあります。同じ意味に近い言葉でも、響きによって柔らかく聞こえたり、勢いがあるように聞こえたりするものです。

音と形、大きさ、動きなどが結びついて感じられる現象は「音象徴」と呼ばれています。代表的な例が、丸い図形には「ブーバ」、尖った図形には「キキ」が似合うと感じやすいブーバ・キキ効果です。

ただし、音に決まった意味が備わっているわけではありません。母音や子音、音の高さに加え、普段使っている言語や、これまでに聞いてきた言葉も印象に関わります。


目次

音と印象の結びつきは「音象徴」と呼ばれる

言葉の音と意味は、多くの場合、社会の中で共有されてきた約束によって決まります。

日本語では「犬」、英語では「dog」と呼ぶように、同じ動物でも言語によって使われる音は異なります。「犬」という意味を、必ず「いぬ」という音で表さなければならない理由があるわけではありません。

その一方で、意味を持たない架空の言葉を聞いたときにも、多くの人が似た形や大きさを思い浮かべる場合があります。こうした音と意味、感覚の結びつきが音象徴です。

世界各地の言語を調べた研究でも、一部の意味には特定の音が現れやすい傾向が報告されています。言葉の多くが社会的な約束によって成り立つことと、一部に音と意味の結びつきが見られることは、矛盾するものではありません。

擬音語と音象徴は同じものではない

音象徴と聞くと、「ざあざあ」「わくわく」「ごろごろ」などの擬音語や擬態語を思い浮かべる人もいるでしょう。両者は深く関係していますが、まったく同じ意味ではありません。

音象徴は、音と形、大きさ、動き、手触りなどの結びつきを幅広く指します。まだ意味が決まっていない架空の言葉を聞いて、丸さや重さを感じる現象も含まれます。

擬音語や擬態語は、音や状態を表すために実際の言語の中で使われている言葉です。響きそのものが意味を伝える助けになっていますが、日常で何度も聞き、その意味を覚えてきた影響も重なっています。


ブーバ・キキ効果では音から形を想像する

音象徴の代表例として広く知られているのが、ブーバ・キキ効果です。

丸みのある図形と角の尖った図形を見せ、「ブーバ」と「キキ」のどちらの名前が似合うかを尋ねると、丸い図形をブーバ、尖った図形をキキと結びつける人が多く見られます。

異なる言語や文字を使う人々を対象にした調査でも、この組み合わせを選ぶ傾向は幅広く確認されています。ただし、すべての地域やすべての人が同じ答えを選ぶわけではありません。

ブーバ・キキ効果が知られる以前には、丸い図形に「マルマ」、角張った図形に「タケテ」を対応させる実験も行われていました。その後、「ブーバ」と「キキ」の組み合わせが広く紹介されるようになります。

「ブーバ」と「キキ」では、母音や子音、音の高さ、発音の長さなどが異なります。どの特徴が丸さや尖りの印象を生むのかについては複数の説明があり、一つの仕組みだけで決まるわけではないと考えられています。


母音や子音でも大きさの印象が変わる

言葉から受ける印象には、母音や子音の違いも関係します。ある音が必ず特定の意味を持つわけではありませんが、複数の人に共通しやすい傾向があります。

「イ」は小さく「ア」「オ」は大きく感じやすい

母音では、「イ」に近い音が小ささや軽さと結びつき、「ア」や「オ」に近い音が大きさや重さを連想させる傾向があります。

意味を持たない言葉を使った実験でも、「イ」を含む音は小さいもの、「ア」を含む音は大きいものに対応させられやすいという結果が報告されています。

日本語では「ちびちび」から細かな動きを感じ、「どーん」から大きさや勢いを感じることがあります。ただし、この違いを母音だけで説明することはできません。子音、音の長さ、すでに知っている単語の意味も加わっています。

音の印象は、一文字ずつ切り離して決まるのではなく、言葉全体の響きとして受け取られます。

濁音は重さや大きさを伝えることがある

「ころころ」と「ごろごろ」を比べると、「ごろごろ」のほうが大きく重いものが転がる様子に聞こえます。「さらさら」と「ざらざら」では、後者から粗い手触りを思い浮かべやすいでしょう。

日本語では「ガ」「ゴ」「ド」などの濁音が、大きさ、重さ、勢いと結びつく例があります。音の一部が変わるだけで、対象の大きさや動き方まで違って感じられることがあります。

濁音が悪い印象だけを表すわけではありません。迫力や頼もしさにつながる場合もあり、受け取り方は言葉全体の意味や使われる場面によって変わります。

高い音は小さく、低い音は大きく感じやすい

言葉を構成する母音や子音だけでなく、声そのものの高さも印象に関わります。

高い音は小ささや軽さ、低い音は大きさや重さと結びつけられやすい傾向があります。小さな動物は比較的高い声を出し、大きな動物は低い声を出すことが多いため、日常で聞いてきた音の経験が関係している可能性もあります。

同じ言葉でも、高い声で短く発音した場合と、低い声でゆっくり発音した場合では、受ける印象が変わることがあります。言葉の響きには、文字では表しきれない話し方も関わっています。


擬音語は音の違いで情景を描き分ける

日本語の擬音語や擬態語は、音と印象の関係を身近に感じやすい言葉です。

雨の降り方だけでも、「ぽつぽつ」「しとしと」「ざあざあ」では、思い浮かぶ情景が異なります。「ぽつぽつ」は間隔を空けて落ちる雨粒、「しとしと」は静かに続く雨、「ざあざあ」は勢いのある雨を表します。

歩き方も「とことこ」「すたすた」「どしどし」で違って聞こえます。足音の速さや重さだけでなく、歩いている人の体格や様子まで想像する人もいるでしょう。

手触りを表す言葉にも違いがあります。「ふわふわ」からは軽く柔らかな感触、「ごつごつ」からは硬く角張った感触、「ぬるぬる」からは滑りやすい感覚が伝わります。

こうした表現は、音だけで意味のすべてが伝わるものではありません。日本語を使う中で意味を覚えた影響もあります。それでも、似た場面を表す言葉を比べると、響きの違いが動きや勢い、手触りを細かく描き分けていることが分かります。

音と意味が結びつきやすい言葉は、初めて聞く表現を想像する手がかりになることもあります。


音の印象が人によって異なるのはなぜ?

音と印象には共通しやすい傾向があるものの、全員が同じ受け取り方をするわけではありません。

普段話している言語では、特定の音を含む単語を何度も耳にします。その積み重ねによって、ある音から特定の意味や雰囲気を連想するようになる場合があります。

たとえば、濁音を含む言葉が大きな動きに多く使われる言語では、濁音から重さを感じやすくなるかもしれません。別の言語では同じ音が異なる種類の言葉に使われ、違った印象を持たれる可能性もあります。

文字の見え方も無関係ではありません。丸みのある文字と角張った文字では、同じ音を表していても、目から受ける印象が加わる場合があります。

複数の言語に共通する結びつきと、それぞれの言語の中で身についた結びつきは、どちらか一方だけが働くものではありません。音の特徴、普段使う言語、知っている単語などが重なり、聞いたときの印象が生まれます。


Q&A

音象徴とは何ですか?

音と形、大きさ、動き、手触りなどが結びついて感じられる現象です。意味を持たない架空の言葉から丸さや重さを想像する場合も、音象徴の一例です。

ブーバ・キキ効果とは何ですか?

丸い図形には「ブーバ」、尖った図形には「キキ」が似合うと感じやすい現象です。異なる言語を使う人々にも広く見られますが、すべての人が同じ組み合わせを選ぶわけではありません。

特定の音には決まった意味がありますか?

決まった意味が備わっているわけではありません。「イ」は小ささ、濁音は重さと結びつきやすいといった傾向はありますが、言葉全体の意味や声の高さ、普段使っている言語によっても印象は変わります。


まとめ

意味を知らない言葉からも、丸さ、尖り、大きさ、重さなどを感じることがあります。こうした音と印象の結びつきが音象徴です。

代表例のブーバ・キキ効果では、丸い図形に「ブーバ」、尖った図形に「キキ」が選ばれやすくなります。母音と大きさ、濁音と重さ、声の高さにも一定の傾向が見られます。

日本語の「ころころ」と「ごろごろ」、「ぽつぽつ」と「ざあざあ」のような言葉は、響きの違いによって動きや勢いを描き分けています。ただし、音だけで意味が決まるわけではありません。多くの人に共通しやすい感覚と、普段使う言語や知っている言葉の影響が重なり、言葉の印象が作られています。

参考情報

  • Imai, M. & Kita, S.(2014)
    “The sound symbolism bootstrapping hypothesis for language acquisition and language evolution”
    Philosophical Transactions of the Royal Society B
  • ・Ćwiek, A. et al.(2022)
    “The bouba/kiki effect is robust across cultures and writing systems”
    Philosophical Transactions of the Royal Society B
  • ・Blasi, D. E. et al.(2016)
    “Sound–meaning association biases evidenced across thousands of languages”
    Proceedings of the National Academy of Sciences
  • ・Knoeferle, K. et al.(2017)
    “What drives sound symbolism? Different acoustic cues underlie sound-size and sound-shape mappings”
    Scientific Reports
  • ・Saji, N. et al.(2019)
    “Cross-linguistically shared and language-specific sound symbolism in novel words elicited by locomotion videos in Japanese and English”
    PLOS ONE

※研究結果は、特定の音に固定された意味があることを示すものではありません。言語、文化、実験条件などによって結果が異なる場合があります。

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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