ピーマン、ゴーヤ、春菊、青菜など、子どもが苦い食べ物を嫌がることは珍しくありません。大人から見ると「少し苦いだけ」「慣れれば食べられそう」と感じる食べ物でも、子どもにとってはかなり強い味に感じられることがあります。
これは単なるわがままではなく、味覚の発達や食べた経験の少なさ、苦味に対する警戒しやすさが関係しています。苦いものが苦手なのは、子どもの味覚が未熟だからというより、成長途中の体が食べ物を慎重に判断しているためとも考えられます。
苦味は「危ないかもしれない味」として反応されやすい
人間の味覚には、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などがあります。この中で、苦味は特に警戒されやすい味です。自然界では、苦味を持つ植物や物質の中に、体に害のあるものが含まれる場合があります。
もちろん、苦いものがすべて危険という意味ではありません。野菜やお茶、薬味、カカオのように、苦味がある食べ物でも安全でおいしく食べられるものはたくさんあります。ただ、経験の少ない子どもにとっては、「苦い=よくわからない味」「口に入れるのを避けたい味」として反応しやすいことがあります。
乳幼児は苦味を拒みやすい傾向を持つとされ、苦味のある新しい野菜は受け入れにくい場合があります。葉物野菜やアブラナ科の野菜などには、苦味や青臭さを感じやすいものがあります。大人にとってはほどよい風味でも、子どもにとっては「強い味」として印象に残りやすいのです。
子どもが苦味を嫌がるのは、味に対する慎重な反応の一つとも考えられます。
子どもは甘味を好み、苦味を避けやすい
子どもは、一般的に甘い味を好みやすいと言われます。甘味は、エネルギーを含む食べ物のサインになりやすい味です。成長中の子どもにとって、甘味に引かれやすいことには意味があります。
一方で、苦味や酸味は最初から好まれにくいことがあり、幼い時期にはその傾向が目立ちやすくなります。子ども時代の味覚では、甘味と苦味が食の好みに大きく関係するとされています。甘い味は受け入れやすく、苦い味は避けやすい。この反応は、食べ物を慎重に選ぶためのしくみとも考えられます。
そのため、子どもがピーマンや青菜を嫌がっても、「食べ物をわかっていない」と決めつける必要はありません。大人には少しの苦味でも、子どもには味の印象が強く出ていることがあります。また、苦味だけでなく、におい、食感、見た目も関係します。野菜の青臭さ、繊維っぽさ、口の中に残る感じが苦手で、苦味と一緒に「嫌な食べ物」として記憶されることもあります。
味覚は経験で少しずつ変わっていく
子どもの味覚は、成長とともに変わります。幼いころは苦手だった野菜を、大人になってから食べられるようになることがあります。コーヒー、山菜、薬味、ビターチョコレートなども、子どものころは苦手でも、あとから「おいしい」と感じる人がいます。
これは、舌そのものだけの問題ではありません。食べた経験、周囲の食文化、家族の食べ方、料理の仕方、その食べ物にまつわる記憶などが、味の感じ方に影響します。同じ苦味でも、ただ苦いと感じる時期もあれば、香りや食感、料理との組み合わせまで含めて味わえるようになることもあります。
子どもは、初めての食べ物に慎重になりやすい時期があります。これは食物新奇性恐怖、つまり見慣れない食べ物を避けようとする傾向として説明されることがあります。苦味のある食べ物は、もともと警戒されやすい味であるうえ、見慣れない食材や独特の食感と組み合わさることがあります。そのため、苦い野菜ほど最初に拒まれやすくなるのです。
何度か経験すると受け入れやすくなることがある
子どもが苦いものを苦手に感じるとしても、ずっと同じとは限りません。食べ物の好みは、繰り返しの経験で変わることがあります。特に野菜のように、最初は苦味や青臭さを感じやすい食べ物でも、少しずつ慣れることで受け入れやすくなる場合があります。
未就学児の食の好みに関する研究では、野菜のように受け入れが難しい食べ物でも、繰り返し味わう経験や、食材に親しむ機会が受け入れにつながる方法として扱われています。ただし、これは「無理に食べさせればよい」という意味ではありません。苦手な味を強く押しつけられると、その食べ物への嫌な記憶が残ることもあります。
受け入れやすさには、少しずつ見慣れること、においに慣れること、調理法を変えてみること、家族がおいしそうに食べている場面を見ることも関係します。子どもにとっては、食べる前の安心感も味の受け入れに影響します。食べる量よりも、まず「これは危なくなさそう」「少しなら試せそう」と感じられることが入口になる場合があります。
苦味をおいしく感じるようになることもある
苦いものを好むようになると、「大人の味がわかるようになった」と言われることがあります。これは完全に間違いではありません。大人になるにつれて、苦味を含む食べ物や飲み物を経験する機会が増えます。
最初は苦いだけだった味の中に、香り、コク、後味、食事との相性を感じるようになることがあります。たとえば、コーヒーは苦味だけでなく香りを楽しむ飲み物です。春菊や山菜は、苦味が料理のアクセントになります。ビターチョコレートは、甘さを抑えることでカカオの香りを感じやすくなります。
苦味を好きになるのは、味覚が鈍くなったからというより、苦味をどう味わうかが、経験によって変わっていく面があります。もちろん、大人でも苦味が苦手な人はいます。味の感じ方には個人差があり、遺伝的な苦味感受性の違いも関係するとされています。苦味の感じ方や野菜の受け入れ方は、人によって大きく変わるのです。
子どもの苦手は「成長の途中」として見るとわかりやすい
子どもが苦いものを嫌がると、食べさせる側は困ることがあります。ただ、苦味が苦手なのは、成長の途中では自然な反応でもあります。経験が少ない時期には、苦味や酸味、新しいにおい、見慣れない食感に警戒しやすいからです。
周囲の大人が関わるなら、「苦いものを無理に好きにさせる」より、苦味にも慣れる機会を少しずつ作るほうが受け入れられやすくなります。小さく切る、油やだしと合わせる、苦味の少ない種類から試す、食卓に出すだけの日を作るなど、食べる前の距離を少しずつ縮める方法があります。
ただし、食事の悩みが強い場合や、食べられるものが極端に少ない場合、体重や成長に不安がある場合は、家庭だけで判断せず専門家に相談するほうが安心です。ここで扱っているのは、一般的な味覚の傾向です。子どもの食べ方には個人差があり、苦味への反応も一人ひとり違います。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
子どもが苦いものを苦手に感じやすいのは、苦味が警戒されやすい味であり、味覚や食経験がまだ変化の途中にあるからです。
甘い味は受け入れやすい一方、苦味や酸味は最初に拒まれやすいことがあります。さらに、見慣れない食べ物への警戒や、におい、食感の違いも苦手意識につながります。
ただし、味の好みは成長や経験で変わります。苦味は無理に克服するものというより、少しずつ慣れたり、料理の中で別の魅力を知ったりしながら受け入れ方が変わっていく味です。
参考情報
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