朝、目覚ましを止めたはずなのに、気づいたらまた眠っていた。少しだけのつもりが、いつの間にか30分以上たっていた。そんな二度寝の経験がある人は少なくないでしょう。
二度寝してしまう理由は、単に「意思が弱いから」ではありません。起きた直後の脳がまだ完全に目覚めていないこと、睡眠時間が足りていないこと、体内時計が朝の時間に合っていないことなどが関係しています。
特に、起きた直後に頭がぼんやりする状態は「睡眠慣性」と呼ばれます。眠りから覚醒へ切り替わる途中の状態で、眠気や反応の鈍さ、考えにくさが残りやすくなります。睡眠慣性は、起床直後の眠気や認知機能の低下と関係する状態として説明されています。
二度寝は「まだ眠い」だけで起こるわけではない
二度寝と聞くと、「眠気に負けた」「朝の意志が足りなかった」と考えがちです。けれど、朝の眠気には体の仕組みが関係しています。
人は、眠っている間に浅い睡眠、深い睡眠、レム睡眠をくり返しています。目覚ましが鳴ったタイミングが深い睡眠に近いと、起きた直後に強い眠気やだるさを感じやすくなります。
このとき、脳は起きる準備が整っていない状態です。意識は一応あるのに、体が重い、考えがまとまらない、もう一度目を閉じたくなる。こうした状態になると、目覚ましを止める判断だけはできても、起き上がる行動に移りにくくなります。
二度寝は、目覚ましを止めたあとに「起きる」という行動へ切り替わりにくいときに起こりやすいのです。
起きた直後のぼんやり感は睡眠慣性と呼ばれる
起きた直後に頭が働きにくい状態は、睡眠慣性と呼ばれます。英語では sleep inertia(スリープ・イナーシャ)といいます。sleep は「睡眠」、inertia は「慣性」という意味で、眠りの状態がしばらく残っているようなイメージです。
睡眠慣性についてのレビュー論文では、起床直後に眠気や認知機能の低下が起こり、起きている時間が長くなるにつれて弱まっていく状態として説明されています。目が覚めたからといって、脳がすぐに完全な活動状態へ切り替わるわけではありません。
この睡眠慣性が強いと、目覚ましを止めたあとに「あと5分だけ」と思いやすくなります。まだ脳がぼんやりしているため、時間の見積もりも甘くなります。5分のつもりが20分になったり、次のアラームまで深く眠ってしまったりするのは、この状態と関係しています。
睡眠慣性は、睡眠不足のあとや深い睡眠から急に起こされたときに強く出やすいとされています。朝の二度寝は、起きる意志だけでなく、目覚めた直後の脳の状態とも関係しているのです。
睡眠不足があると二度寝しやすくなる
二度寝してしまう大きな理由のひとつは、そもそも睡眠が足りていないことです。
睡眠時間が不足すると、体はまだ眠りを求めやすい状態になります。目覚ましで強制的に起きても、体の中では「まだ回復が足りない」という感覚が残りやすくなります。
このような状態では、朝の眠気が強くなります。目覚ましを止めたあとに布団の中にいたままだと、体はすぐに眠りへ戻ろうとします。とくに睡眠時間が短い日が続くと、二度寝は単なる習慣ではなく、睡眠不足を補おうとする反応に近くなります。
米国睡眠医学会と睡眠研究学会の共同声明では、成人は健康のために毎晩7時間以上の睡眠を規則的に取ることが推奨されています。必要な睡眠時間には個人差がありますが、短い睡眠が続くほど、朝に起きる難しさは増えやすくなります。
二度寝が続くときは、朝の意志だけでなく、前日の夜に十分眠れているかを見ることも大切です。
体内時計が朝に合っていないこともある
二度寝は、睡眠時間だけでなく体内時計とも関係します。体内時計とは、眠くなる時間や目が覚めやすい時間を調整する体のリズムです。
夜遅くまで明るい画面を見ていたり、休日に遅くまで寝ていたりすると、体内時計が後ろへずれやすくなります。その結果、朝になっても体はまだ「起きる時間ではない」と感じてしまいます。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、起床後に朝日の強い光を浴びることで体内時計がリセットされ、睡眠・覚醒リズムが整い、脳の覚醒度が上がると説明されています。また、夜に照明やスマートフォンの強い光を浴びると、睡眠を促すメラトニンの分泌が抑えられ、入眠が妨げられることも説明されています。
夜遅くまで明るい光を浴び、朝に光を浴びない生活が続くと、朝の目覚めが重くなりやすいのです。二度寝を減らしたい場合、目覚ましの音を変えるだけでなく、朝にカーテンを開けて光を入れるだけでも、目覚めの切り替えを助けやすくなります。
スヌーズ機能が二度寝を助けてしまうこともある
二度寝をしやすくする仕組みとして、目覚ましのスヌーズ機能があります。数分おきにアラームが鳴るため、安心してもう一度目を閉じられるように感じます。
しかし、スヌーズは目覚めをすっきりさせるとは限りません。短い間隔で起こされると、眠りに戻りかけたところでまた起こされるため、かえってぼんやり感が長引くことがあります。
2022年の研究では、スヌーズアラームの使用が、単回のアラームよりも睡眠慣性を長引かせる可能性があると報告されています。理由として、スヌーズによって強制的な覚醒が繰り返されることが挙げられています。
また、二度寝で再び深い眠りに入りかけると、次のアラームで起きたときに、かえってぼんやり感が強くなることがあります。短い休憩のつもりでも、体は眠りの続きを始めようとするためです。
もちろん、スヌーズ機能が必ず悪いというわけではありません。ただ、毎朝スヌーズを何度も押してしまう場合は、目覚めを助けるというより、二度寝の習慣を固定している可能性があります。
二度寝が気持ちよく感じる理由
二度寝はなぜ気持ちよく感じるのでしょうか。理由のひとつは、「起きなければならない」という緊張から少し解放されるからです。
目覚ましが鳴ったあとに、まだ布団の中にいられる時間は、少し特別に感じます。眠気が残っている状態で暖かい布団に戻ると、体はすぐに休息モードへ戻りやすくなります。
また、朝方は夢を見やすいレム睡眠が出やすい時間帯でもあります。短い二度寝の間に夢を見たり、浅い眠りを心地よく感じたりすることがあります。そのため、二度寝は「よく眠れた」というより、「気持ちよく眠りに戻れた」と感じられやすいのです。
ただし、二度寝が気持ちいいからといって、必ずしも睡眠の質が高いとは限りません。短い眠りと覚醒を繰り返すと、起きたあとにかえってだるく感じることもあります。
二度寝を減らすにはどうすればよいか
二度寝を減らしたい場合、朝だけで対策しようとすると難しくなります。原因は、前日の睡眠、体内時計、起きる環境にまたがっているからです。
まず見直したいのは、十分な睡眠時間を確保できているかです。睡眠不足が残っていると、朝に強い眠気が出やすくなります。平日と休日で起床時刻が大きくずれると、体内時計も乱れやすくなります。
次に、朝に光を浴びることです。起きたらカーテンを開ける、窓際に行く、短時間でも外の光を浴びる。こうした行動は、体に「朝になった」と知らせるきっかけになります。
また、アラームを手の届かない場所に置く方法もあります。布団の中で目覚ましを止められる状態だと、二度寝に戻りやすくなります。立ち上がらないと止められない場所に置くと、少なくとも一度は体を起こすことになります。
さらに、夜の強い光を減らすことも大切です。夜遅くまでスマートフォンや明るい照明を浴びると、体内時計が遅れやすくなります。朝の眠気を減らすには、朝だけでなく夜の過ごし方も関係しているのです。
二度寝が続くときに気をつけたいこと
二度寝そのものは、誰にでも起こる身近な行動です。たまに二度寝をしたからといって、すぐに問題になるわけではありません。
ただし、十分に寝ているはずなのに毎朝起きられない、日中も強い眠気が続く、休日に極端に長く寝てしまう、目覚ましにまったく気づかない、といった状態が続く場合は、睡眠の質や生活リズムを見直すきっかけになります。
睡眠不足だけでなく、睡眠の途中で何度も目が覚めている、生活リズムが大きくずれている、といった要因が隠れていることもあります。生活に支障が出るほど強い眠気が続く場合は、生活リズムの見直しだけで抱え込まず、専門家に相談する選択肢もあります。
二度寝は「だらしない行動」と決めつけるより、体や脳が何を求めているのかを見るサインとして考えると、対策しやすくなります。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
二度寝してしまう理由は、単に意思が弱いからではありません。起きた直後の脳がまだ完全に目覚めていない睡眠慣性、睡眠不足、体内時計のずれ、スヌーズ機能による短い眠りの繰り返しなどが関係します。
二度寝を減らしたいなら、朝の努力だけでなく、前日の睡眠時間、夜の光、朝の日光、アラームの置き場所などを見直すことが大切です。
二度寝は身近な行動ですが、毎日続く場合は体が休息を求めているサインかもしれません。責めるよりも、眠り方と起き方を少しずつ整えるほうが、朝を楽にしやすくなります。
参考情報
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- Hilditch CJ, McHill AW.「Sleep inertia: current insights」
- Watson NF, Badr MS, Belenky G, et al.「Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society」
- Ogawa K, et al.「Effects of using a snooze alarm on sleep inertia after morning awakening」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
