毎年8月8日は「そろばんの日」です。そろばんの珠をはじく「パチパチ」という音を数字の「8・8」に重ね、全国珠算教育連盟が1968年に定めました。
電卓やスマートフォンで手軽に計算できる現在も、そろばんは小学校の算数や珠算教室、競技大会で使われています。中国から伝わったそろばんが日本でどのように形を変え、現在まで残ってきたのかを見ていきましょう。
そろばんの日は「パチパチ」の音から生まれた
「そろばんの日」が8月8日になった理由は、珠をはじくときの音にあります。数字の8を「パチ」と読んで二つ並べると、そろばんを使うときの「パチパチ」になります。
全国珠算教育連盟の沿革には、1968年12月24日に8月8日を「そろばんの日」に制定したことが記録されています。道具の名前や見た目ではなく、使ったときに聞こえる音が日付の由来になった記念日です。
記念日ができたのは昭和43年
そろばんの日が定められた1968年は、昭和43年にあたります。全国珠算教育連盟は1953年に設立され、珠算検定や競技大会などを行ってきました。
記念日の名称が「パチパチの日」ではなく「そろばんの日」である点も特徴です。「パチパチ」は記念日の名前ではなく、8月8日という日付を説明する語呂合わせとして使われています。
8月8日には珠算競技大会も行われており、単なる語呂合わせにとどまらない一日になっています。
8月8日には珠算日本一を決める大会が開かれる
全国珠算教育連盟は、毎年8月8日のそろばんの日に全日本珠算選手権大会を開催しています。全国から500人を超える選手が参加し、その年の「そろばん日本一」を目指して計算の速さと正確さを競います。
大会で行われるのは、問題用紙を解く個人総合競技だけではありません。読み上げられる数字をそろばんで計算する読上算、実物のそろばんを使わずに答えを出す読上暗算、画面へ短時間表示される数字を計算するフラッシュ暗算、都道府県対抗競技などがあります。
読上算では、次々と読み上げられる数に合わせて選手の指が素早く動きます。読上暗算やフラッシュ暗算では、限られた時間の中で数字を正確に処理する技術が求められます。
全日本珠算選手権大会は、過去の計算道具を紹介する催しではありません。現在も練習を重ねている選手が集まり、珠算と暗算の技術を競う大会です。8月8日は、そろばんの歴史を振り返る日であると同時に、現在の珠算文化が見える日でもあります。
日本のそろばんは中国から伝わり形を変えた
そろばんに似た計算道具は、古くから世界のさまざまな地域で使われてきました。現在の日本式そろばんにつながる道具は、中国から室町時代の末ごろに伝わったと考えられています。
日本へ伝わった中国式そろばんは、上側にある五珠が2個、下側にある一珠が5個という形でした。その後、日本の計算方法に合わせて珠の数が変わり、現在広く使われる五珠1個・一珠4個の形へつながりました。
五珠は一つで「5」、一珠は一つで「1」を表します。同じ桁の珠を組み合わせることで、0から9までの数を示せる仕組みです。
珠が置かれた位置によって数の大きさも変わります。一の位にある一珠は1、十の位では10、百の位では100を表します。そろばんは、珠の位置によって数と桁を同時に示す計算道具です。
現在の形が標準になったのは1938年
日本では、五珠を1個にしたそろばんが広がった後、一珠も5個から4個へ減りました。1938年には、当時の文部省が五珠1個・一珠4個のそろばんを標準の形と定めています。
この形は「四つ珠そろばん」とも呼ばれます。一つの桁で0から9までを表すために必要な珠がそろっており、余分な珠を使わずに計算できます。
珠の形にも違いがあります。古い中国式そろばんには丸みのある珠が見られますが、日本では中央が細くなった菱形の珠が広く使われるようになりました。
中国から伝わったそろばんをそのまま使い続けたのではなく、珠の数や形を変えながら日本式の道具へ発展させてきたのです。
現存する古いそろばん書は1622年に出版された
日本に残る最も古いそろばんの本として知られているのが、1622年に刊行された『割算書』です。毛利重能(もうり・しげよし)が著した計算書で、江戸時代の初めには、そろばんを使った計算法が書物にまとめられていました。
江戸時代には商業が発達し、商品の代金や帳簿を計算する道具としてそろばんが使われました。寺子屋でも「読み・書き・そろばん」が教えられ、商売や暮らしに関わる技能として広がっていきます。
1627年に吉田光由が刊行した『塵劫記』も、そろばんを使った計算の普及に関わった書物です。日常生活に結びついた計算問題が掲載され、版を重ねながら広く読まれました。
そろばんは商人だけが扱う特別な道具ではなく、数を学び、実際の生活で計算するための身近な道具になっていきました。
電卓の時代にも小学校でそろばんを学ぶ
日常の計算では、電卓やスマートフォンを使う機会が増えました。それでも、そろばんは現在の小学校教育から姿を消していません。
文部科学省の小学校学習指導要領では、そろばんによる数の表し方を知り、簡単な足し算や引き算を行う内容が算数に位置づけられています。
そろばんでは、一の位や十の位、百の位を珠の位置で表します。同じ一珠でも、一の位にあれば1、十の位にあれば10です。紙に書かれた数字とは異なり、数が置かれている桁を珠の位置から確かめられます。
たとえば、十の位に一珠を一つ、一の位に一珠を三つ置くと13になります。五珠を使えば、5を含む数も少ない珠の動きで表せます。
こうした仕組みは、数字の位置によって値が変わる「位取り」を目で捉えることにつながります。そろばんは答えを出すためだけでなく、数がどのように表されているのかを珠の配置から見る道具でもあります。
実物のそろばんを動かさない暗算もある
珠算の練習を重ねると、実物のそろばんを使わずに計算する「そろばん式暗算」へ進む場合があります。
数字を見たり聞いたりしながら、そろばんの珠を頭の中で動かすように計算する方法です。全日本珠算選手権大会で行われる読上暗算やフラッシュ暗算も、こうした暗算技術を競う種目にあたります。
そろばんそのものは昔からある道具ですが、競技では画面に数字を表示するフラッシュ暗算も取り入れられています。木の枠と珠を使う伝統的な道具が、現代的な競技と組み合わされている点も、現在の珠算文化の特徴です。
Q&A
まとめ
そろばんの日は毎年8月8日です。珠をはじく「パチパチ」という音を「8・8」に重ね、全国珠算教育連盟が1968年に定めました。
日本のそろばんは、中国から伝わった計算道具をもとに、珠の数や形を変えながら発達しました。現在広く使われる五珠1個・一珠4個の形は、1938年に標準とされています。
電卓やスマートフォンが普及した現在も、そろばんは小学校の算数や珠算教室で使われています。8月8日には全日本珠算選手権大会が開かれ、珠算と暗算の技術を競う文化も続いています。
参考情報
・公益社団法人全国珠算教育連盟「沿革」
・公益社団法人全国珠算教育連盟「歴史の中のそろばん」
・公益社団法人全国珠算教育連盟「数の始まり」
・公益社団法人全国珠算教育連盟「そろばんの歴史」
・公益社団法人全国珠算教育連盟「競技大会」
・公益社団法人全国珠算教育連盟「いろいろなそろばん」
・文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編」
