固定観念はどう使われる?固定概念との違いと使い分け

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「固定観念にとらわれない」「固定観念を捨てる」といった表現は、日常会話だけでなく、仕事の文章や広告などでも見かけます。その一方で、よく似た「固定概念」という表記が使われることもあります。

凝り固まった思い込みや、簡単には変えられない考えを表す一般的な言葉は「固定観念」です。「固定概念」も意味を推測できる表現ですが、固定観念や既成概念との混同だと受け取られる場合があります。

両者を使い分けるには、「観念」と「概念」の違いを知っておくと分かりやすくなります。固定観念の意味や例文とあわせて、既成概念や先入観との違いも紹介します。

目次

固定観念は簡単に変えにくくなった考え

固定観念とは、周囲の状況が変わったり、新しい情報を得たりしても、手放しにくくなっている考えや思い込みのことです。

「こうでなければならない」「普通はこうするものだ」といった見方が心に残り、ほかの考え方を受け入れにくくなっている状態を表します。

自分で思い込みだと気づいているものだけが固定観念になるわけではありません。家庭や学校、職場などで繰り返し聞き、特に疑わず受け入れてきた考えが、いつの間にか定着している場合もあります。

たとえば、次のような考え方です。

  • 会議は全員が同じ場所に集まって行うものだ
  • 本は紙で読むものだ
  • 新しい仕事は若い人のほうが得意だ
  • この料理には決まった材料を使わなければならない
  • 趣味は年齢に合ったものを選ぶべきだ

これらの考えが、いつも間違っているわけではありません。しかし、別の方法や事実があるのに、最初から選択肢に入れられない場合は、固定観念にとらわれていると表せます。

固定観念は否定的な場面で使われることが多い言葉です。ただし、経験から生まれた考えがすべて悪いわけではありません。新しい事実を知っても見方を変えられず、行動や選択の幅を狭めてしまうときに問題になりやすいものです。

「固定観念にとらわれる」が代表的な使い方

固定観念は、次のような言葉と組み合わせて使われます。

  • 固定観念にとらわれる
  • 固定観念に縛られる
  • 固定観念を捨てる
  • 固定観念を打ち破る
  • 固定観念から離れる
  • 固定観念を見直す
  • 固定観念を持つ

「固定観念にとらわれる」は、固まった考えに縛られている様子を表す言い方です。「固定観念を捨てる」なら、それまで当然だと思っていた見方を手放すという意味になります。

固定観念にとらわれず、別の方法を試してみた。

年齢に対する固定観念から離れ、好きな服を選んだ。

私は、家電は白いものだという固定観念を持っていた。

固定観念をいったん脇に置き、さまざまな意見を聞いてみた。

固定観念は考え方の変化と関係するため、「とらわれる」「捨てる」「見直す」といった動詞とよく組み合わされます。

「固定観念を覆す」という言い方も意味は伝わりますが、個人や集団の思い込みを変える場面では「固定観念を打ち破る」「固定観念を捨てる」のほうが使いやすいことがあります。

大正時代の文献にも用例が残っている

「固定観念」は、最近になって広まった言葉ではありません。

『精選版 日本国語大辞典』には、相馬御風の『個人主義思潮』に見られる1915年の用例が掲げられています。これは1915年に言葉が作られたことを示すものではありませんが、少なくとも大正時代の文献で使われていたことが分かります。

現在では、日常的な思い込みから、社会や業界に根づいた考え方まで、幅広い場面で使われています。

固定観念と固定概念は何が違う?

凝り固まった思い込みを表す場合は、「固定観念」を使うのが一般的です。「固定概念」という表記も実際の文章で見かけますが、通常は「固定観念」や「既成概念」への書き換えが考えられます。

違いを理解する手がかりになるのが、「観念」と「概念」の意味です。

言葉日常的な意味使用例
観念人が物事に対して持つ考えや意識時間の観念、道徳観念
概念物事の共通点をまとめ、意味や範囲を捉える枠組み家族の概念、自由の概念

「時間の観念がない」という表現は、時間というものを知らないという意味ではありません。時間を守ろうとする意識や、時間の経過を気にする感覚が乏しいことを表しています。

概念は、形や性質が異なるものを共通した意味で捉えるときにも使われます。

木製の椅子、金属製の椅子、脚のない椅子は、素材や形が異なります。それでも「人が腰掛けるためのもの」という共通点から、いずれも椅子だと理解できます。この共通する意味や範囲が、椅子の概念です。

一方で、「椅子は木製でなければならない」と思い込み、ほかの種類を椅子として受け入れられないなら、それは椅子に対する固定観念に当たります。

なぜ「固定概念」と混同されるのか

「観念」と「概念」は、どちらも物事の考え方に関係する言葉です。また、「既成概念」「基本概念」「新しい概念」のように、概念を使った表現は数多くあります。

そのため、「固定された考え」を表す言葉として「固定概念」が使われることがあります。

たとえば、次の文章です。

固定概念にとらわれず、新しい発想を取り入れる。

ここで伝えたいのは、概念の意味や範囲が固定されていることではありません。これまでの思い込みに縛られず、別の発想を受け入れるという内容です。

そのため、一般的には次のように書きます。

固定観念にとらわれず、新しい発想を取り入れる。

同じように、次の文章でも「固定観念」が合います。

性別に関する固定観念を見直す。

固定観念に縛られない商品開発を目指す。

本は最初から読むものだという固定観念を捨てた。

人や集団の思い込みなら「観念」、物事の意味を捉える枠組みなら「概念」と考えると使い分けやすくなります。

概念そのものが固定されている場合の書き方

概念の内容や範囲が、一定の形に固定されている状態を伝えたい場面もあります。

この場合は、「固定概念」と一語にするよりも、「固定された概念」「概念が固定されている」と書くほうが意図を伝えやすくなります。

この制度では、家族の概念が一つの形に固定されている。

従来の分類は、固定された概念をもとに作られている。

作品の評価基準となる概念が固定され、別の見方が入りにくくなっていた。

ここで述べているのは、個人が抱えている思い込みではありません。概念の内容や範囲が、変化しにくい状態です。

凝り固まった思い込みなら「固定観念」、概念の状態を説明するなら「固定された概念」と書き分けると、伝えたい内容が明確になります。

ただし、「固定概念」という表記が、どのような文脈でも誤字になるわけではありません。揺るぎなく定められた概念を表すために使われる余地はあります。それでも、思い込みを意味する文章では「固定観念」を選ぶほうが一般的です。

既成概念や先入観とは何が違う?

固定観念に似た言葉には、「既成概念」と「先入観」があります。どれも考え方や見方に関係しますが、注目している部分が異なります。

言葉主な意味注目する部分
固定観念固まって簡単には変わらない考え考えが変わりにくい状態
既成概念すでにでき上がり、動かしにくいとされる考え方以前からある枠組み
先入観最初の情報や印象から作られた見方考えが生まれたきっかけ
概念物事の意味や共通点をまとめた枠組み意味や分類の範囲

意味が重なる場面もあるため、文章の中で何を伝えたいのかに合わせて選ぶことが大切です。

既成概念は以前から受け入れられている考え方

既成概念は、ある物事について、すでにでき上がり、動かしにくいものとして一般に考えられている性質や枠組みを表します。

固定観念が個人や集団の中に根づいた思い込みを表しやすいのに対し、既成概念は、社会や業界で以前から受け入れられてきた枠組みに使われる傾向があります。

新しい製品が、家電の既成概念を覆した。

このサービスは、店舗に対する既成概念を変えた。

従来の既成概念にとらわれない働き方が広がった。

従来からある枠組みを大きく変える場面では、「既成概念を覆す」という表現がよく合います。

個人の中にある思い込みから抜け出す場面なら、「固定観念を捨てる」「固定観念を打ち破る」と書けます。実際の文章では意味が重なることもありますが、個人の思い込みか、社会で共有されてきた枠組みかを考えると選びやすくなります。

先入観は最初の情報から作られた見方

先入観は、相手や物事を十分に知る前に、最初に得た情報や印象から作られた見方です。初めに知った内容が、その後の評価にも影響している状態を表します。

有名ではない店なので、料理も期待できないという先入観があった。

表紙を見て、難しい本だという先入観を持っていた。

相手の経歴だけを見て、話が合わないという先入観を抱いていた。

たとえば、初対面の人を見て「無口だから冷たい人だろう」と考えるのは先入観です。その後、親切な一面を何度も知ったのに評価を変えられないなら、その見方が固定観念として残っているとも表せます。

先入観は、その考えが最初の情報や印象から作られたことを表す言葉です。固定観念は、考えが固まり、変わりにくくなっている状態を示します。

場面ごとに見る固定観念の使い方

固定観念は、日常生活、仕事、商品開発、作品の評価など、幅広い場面で使えます。一人だけが持つ考えに限らず、集団の中で長く共有され、疑われにくくなった見方にも使われます。

日常生活で使う場合

日常生活では、年齢、服装、家事、趣味などに対する決めつけを表せます。

家事の分担について、昔からの固定観念を持っていた。

年齢に対する固定観念から離れ、好きな服を選んだ。

本は最初から順番に読むものだという固定観念を捨てた。

昔から続いている習慣であっても、現在の暮らしに必ず合うとは限りません。それまで当たり前だと思っていた考えを見直す場面では、「固定観念から離れる」「固定観念を見直す」といった表現が使えます。

仕事や商品開発で使う場合

仕事では、従来の方法や業界内の考えから離れ、別の方法を検討する場面に向いています。

業界の固定観念にとらわれず、新しいサービスを考えた。

働く時間に対する固定観念が、在宅勤務の普及によって変わった。

固定観念をいったん脇に置き、複数の方法を検討した。

商品開発では、「この商品はこの形でなければならない」「この素材を使うものだ」といった見方を変える場面で使われます。

この商品は、収納家具に対する固定観念を変えた。

素材に対する固定観念から離れたデザインが採用された。

業界全体で長く受け入れられてきた枠組みを大きく変えたことを伝えるなら、「既成概念を覆した」と表現することもできます。

作品や人物を紹介する場合

小説、映画、漫画などでは、従来の登場人物像とは異なる特徴を伝えるために使われます。

従来の固定観念を打ち破るような主人公が登場する。

その作品は、家族に対する固定観念を問い直している。

年齢や立場に対する固定観念に縛られない人物として描かれている。

ただし、人や作品を評価するときに「固定観念を打ち破った」と書くと、従来の作品や考え方を否定しているように読まれる場合があります。内容に合わせて、「別の見方を示した」「これまでとは異なる人物像を描いた」といった穏やかな表現に置き換えることもできます。

Q&A

固定概念は誤字ですか?

どのような文脈でも誤字になるとは言い切れません。ただし、凝り固まった思い込みを表す文章では、「固定観念」との混同だと受け取られやすい表記です。一般的な文章では「固定観念」を使うと伝わりやすくなります。

「固定観念にとらわれる」は正しい使い方ですか?

一般的な使い方です。簡単には変えられない考えに縛られている様子を表します。「固定観念を捨てる」「固定観念から離れる」「固定観念を見直す」といった形でも使われます。

固定観念と先入観は同じですか?

同じではありません。先入観は、最初に得た情報や印象から作られた見方です。固定観念は、その考えが固まり、別の情報を得ても変わりにくくなった状態を表します。意味が重なる場面もあります。

「固定観念を打ち破る」と「既成概念を覆す」はどう違いますか?

「固定観念を打ち破る」は、個人や集団に根づいた思い込みから抜け出す場面で使えます。「既成概念を覆す」は、以前から一般に受け入れられてきた枠組みや評価を変える場面に向いています。

固定観念は必ず悪い意味になりますか?

否定的な場面で使われることが多い言葉ですが、考えを持つこと自体が悪いわけではありません。新しい事実や別の選択肢があるのに見方を変えられず、行動の幅を狭めている場合に、固定観念という表現が使われやすくなります。

まとめ

固定観念は、状況が変わったり新しい事実を知ったりしても、簡単には手放せない考えや思い込みを表す言葉です。「固定観念にとらわれる」「固定観念を捨てる」「固定観念を見直す」などの形で使われます。

「固定概念」という表記も見かけますが、思い込みを表す一般的な言い方は「固定観念」です。観念は人が物事に対して持つ考えや意識、概念は物事の共通点や意味を捉える枠組みを表します。

概念そのものが固定されている状態なら、「固定された概念」や「概念が固定されている」と書くと伝わりやすくなります。以前からでき上がっている考え方は「既成概念」、最初の情報から作られた見方は「先入観」と使い分けられます。

参考情報

  • コトバンク「固定観念」
  • コトバンク「観念」
  • コトバンク「概念」
  • コトバンク「既成概念」
  • コトバンク「先入観」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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