新作ゲームの紹介で、「AAAタイトル」「AAA級の大作」という言葉を見かけることがあります。
読み方は「トリプルエー」。映像が豪華なゲームや有名シリーズを思い浮かべやすい言葉ですが、ゲームを審査してA・AA・AAAへ振り分ける公式制度があるわけではありません。
AAAは一般に、大きな開発予算や大規模な制作体制を伴うことが多い大型の商業ゲームを表す非公式な呼び名として使われています。一方、「開発費○億円以上」「スタッフ○人以上」といった世界共通の線引きもありません。
さらに「AAA」という名前そのものも、もともとはゲームから生まれた表現ではありません。
なぜ大作ゲームに、金融分野でも見かける「AAA」という呼び名が使われるようになったのでしょうか。
AAAタイトルとは大規模な商業ゲームを表す言葉
AAAタイトルの「AAA」は、ゲームのジャンルを示しているわけではありません。
アクションゲーム、RPG、シューティングゲームなど内容はさまざまでも、大規模な開発・販売計画を持つ作品がAAAと呼ばれることがあります。
欧州委員会の2023年の決定文では、AAAゲームを業界全体で使われる非公式なカテゴリーと説明しています。大規模な開発スタジオ、多額の予算、数年に及ぶこともある開発期間などが典型的な特徴として挙げられています。
同じ文書では、『Call of Duty』『FIFA』『Grand Theft Auto』が、大きな制作予算や人気などから、多くの人にAAAとみなされる例として挙げられています。もちろん、欧州委員会がこれらを審査して「AAA認定」したという意味ではありません。AAAという言葉がどのような作品に使われているかを示す例です。
また決定文の脚注には、届出当事者が普遍的に受け入れられたAAAゲームの定義を認識していないと説明したことも記録されています。予算や複雑さ、人気などが判断材料になるものの、主観的な判断も含まれるという説明です。
日本のゲーム会社もAAAという言葉を使っています。コーエーテクモホールディングスは投資家向け情報(IR)の用語集で、AAAタイトルを「大ヒットしたタイトル」や、大ヒットを目指して莫大な制作費をかけた大型タイトルという趣旨で説明しています。
AAAは国際機関などが認定する資格やレーティングというより、ゲーム業界で大作の規模感や商業的な位置づけを伝えるための言葉に近いものです。
「AAAによくある特徴」と「AAAになる条件」は別
AAA作品では、多額の予算、長い開発期間、大人数の制作体制、大規模な宣伝などがみられることがあります。
しかし、それらはAAAによくある特徴であって、満たさなければAAAになれない条件ではありません。
| AAA作品でみられること | 世界共通の基準はある? |
|---|---|
| 大きな開発予算 | 最低金額は決まっていない |
| 大規模な開発チーム | 最低人数は決まっていない |
| 数年に及ぶ開発 | 必要な年数は決まっていない |
| 大規模な宣伝・販売 | 必要な宣伝費は決まっていない |
| 高度な映像表現や大きなゲーム世界 | それだけでAAAになるわけではない |
2026年にオーストラリア政府機関Screen Australiaが公開したゲーム業界用語集でも、AAAは「大きな予算と比較的大きなチームによる大規模ゲーム」という趣旨で説明されています。この用語集自体も法的な定義ではなく、参考用の非拘束的な説明であることが明記されています。
AAAには規模をイメージする特徴はあっても、共通の合格ラインはないと考えると分かりやすいでしょう。
なぜ大作ゲームを「AAA」と呼ぶの?
AAAは、3つの英単語の頭文字を並べた略称ではありません。「A」が3つ並ぶため、英語でもTriple-A(トリプルエー)と読まれます。Screen Australiaの用語集でも、この読み方が示されています。
ゲーム分野で使われる「AAA」という呼び方は、金融分野の債券格付けで使われるAAAから借用されたものとされています。
ニューヨーク市のゲーム産業調査では、ゲーム業界のAAAについて、信用業界の債券格付け制度から借りた呼び名で、大きな開発・制作・マーケティング予算を持つゲームを表すと説明しています。
金融分野のAAAは、高い信用力を示す格付けに使われます。一方、ゲーム分野のAAAは信用格付けそのものではなく、大規模な商業ゲームを表す呼び名です。
そのため、
「AAAゲーム=投じた資金を確実に回収できるゲーム」
という意味にはなりません。
巨額の予算を使ったゲームでも、発売後の販売本数や評価が期待通りになるとは限らないからです。
少なくとも1991年の業界誌にAAAの使用例が報告されている
AAAというゲーム用語については、「1990年代後半から使われ始めた」と説明されることがあります。
しかし、それより古い例が見つかっています。
2025年に更新されたゲーム史資料の調査では、1991年9月の米国ゲーム業界誌『Electronic Gaming Retail News』に「AAA 8-Bit games」という表現が掲載されていたと報告されています。
一方、『Electronic Gaming Retail News』そのものについても、非営利団体Video Game History Foundationの公式資料庫に1991年9月号が所蔵されていることを確認できます。
ここで重要なのは、1991年に使用例があることと、1991年にAAAという言葉が誕生したことは別だという点です。
2024年にゲーム専門誌『Edge』がAAAの起源を関係者へ取材した際にも、調査は一つの「起源」ではなく、複数の「起源」を追う形になったと説明されています。地域や職種によってAAAという言葉に接した時期や使われ方が異なり、「この人物が最初に作った」と一人へ絞れる状況ではありません。
したがって、現在確認できる範囲では、少なくとも1990年代前半にはゲーム業界でAAAという表現が使われていた一方、最初の使用者までは特定されていないとするのが適切です。
AAAには予算・人数・開発年数の固定基準がない
AAAについて特に誤解されやすいのが、「どこかに具体的な基準額がある」という考えです。
AAAは大規模作品に使われる言葉なので、結果として莫大な開発費、長い制作期間、多数のスタッフを伴うことがあります。しかし、それらはAAAになるための審査項目ではありません。
そのため、
「開発費100億円ならAAA」
「5年間作ればAAA」
「500人が参加すればAAA」
とは決められません。
欧州委員会の決定文でも、AAAは業界全体で使われる非公式カテゴリーとして扱われています。さらに同文書には、届出当事者が統一された定義を認識していないと説明したことが記録されています。
「開発費○億円」という数字を比べるときにも注意
AAA作品については、ニュースなどで巨額の「開発費」が紹介されることがあります。
ここでも注意したいのが、資料によって予算に含めているものが同じとは限らないことです。
ゲーム本編を作るための費用だけを指す場合もあれば、制作関連費用や宣伝・マーケティングまで含めて紹介される場合があります。
ニューヨーク市のゲーム産業調査でも、AAAは開発だけでなく、制作やマーケティングにも大きな予算を持つゲームとして説明されています。
そのため、
「A作品は100億円」
「B作品は200億円」
という数字だけを比較して、「B作品のほうがAAAらしい」と決めることはできません。
同じ「予算」という言葉でも対象範囲が違う可能性があるため、数字を見る場合は何を含んだ金額なのかも重要になります。
過去には企業独自の「AAA基準」もあった
共通基準がないことをよく示しているのが、企業独自の定義です。
Ubisoft(ユービーアイソフト)の2004~2005年度年次報告書では、同社の用語集でAAAを、
業界メディアで95%以上の評価を得て、世界で100万本を超える販売本数を記録したゲーム
という条件で定義していました。
かなり具体的な数字ですが、これは当時のユービーアイソフトが自社資料で使っていた定義です。ゲーム業界全体が採用していた公式ルールではありません。
現在のAAAという言葉も、レビュー得点が95%を超えたか、販売本数が100万本を超えたかだけで決まるものではありません。
企業や時代によってAAAという言葉で重視される要素が異なる例があることも、AAAを一つの固定基準だけでは捉えにくい理由です。
AAAはファーストパーティーや独占タイトルという意味でもない
AAAは、任天堂、ソニー、マイクロソフトなどのプラットフォームを持つ企業が送り出すゲームだけを指す言葉でもありません。
ゲーム業界では、プラットフォーム企業やその傘下のスタジオが開発するものを「ファーストパーティー」、独立した開発会社によるものを「サードパーティー」などと呼ぶことがあります。
欧州委員会の決定文でも、AAA/非AAAという区分とは別に、ファーストパーティー、セカンドパーティー、サードパーティーという開発・流通上の区分が説明されています。
つまり、
AAA=ファーストパーティー作品
AAA=特定のゲーム機だけで遊べる独占タイトル
ではありません。
ユービーアイソフトやコーエーテクモのような企業もAAAという表現を使用しています。
AAAは「どの会社がゲーム機を持っているか」ではなく、主に作品の制作規模や商業的な位置づけについて使われる呼び名です。
AAAだから最高品質・高評価とは限らない
「AAA」という響きから、ゲームとしての評価も最高ランクだと思うかもしれません。
しかし、現在一般に使われるAAAは、基本的にレビュー得点を示す称号ではありません。
まだ発売されていない作品についても、企業が「AAAタイトル」「AAAクラス」と表現することがあります。プレイヤーや評論家から高い評価を受けたあとで、AAAへ昇格する制度ではないのです。
大規模な予算があれば、映像、音楽、音声収録、大量のゲーム内コンテンツ、多言語対応、品質管理などへ多くの資源を投入しやすくなります。
それでも、制作規模が大きいことと、プレイヤーから高く評価されることは別です。
AAA作品が期待ほど評価されない場合もあれば、小規模なチームによる作品が世界的な高評価や大きな販売成果を得ることもあります。
「AAA級のグラフィック」「AAA品質」といった表現も見かけますが、これらも公的な品質認証ではありません。大作ゲームを思わせる制作水準や作り込みを表す言葉として使われる場合があります。
AAAという言葉から分かるのは主に規模や商業上の位置づけであり、遊んだ人の満足度まで保証するものではありません。
「AA」もある?Aが増えるほど上のゲームなの?
AAAという言葉があるなら、「その下にはAAがあるの?」と疑問に思うかもしれません。
実際にAA(ダブルエー)という表現も使われます。
ニューヨーク市のゲーム産業調査では、AAを中規模市場のゲームについて使われる分類として紹介しています。ただし、AAについても「予算○円以下」「スタッフ○人以下」といった世界共通の条件があるわけではありません。
ゲームを審査する機関が、
「A」
「AA」
「AAA」
と一段ずつ格付けしているのではなく、制作規模などを伝えるために使われる業界表現です。
そのため、「AAAの一つ下は必ずAA」「Aが増えるほど正式に高ランクになる」と考えるのは適切ではありません。
AAA自体に統一基準がない以上、その周辺の呼び名についても固定された階級表として見る必要はないでしょう。
まとめ
AAAタイトルは「トリプルエータイトル」と読み、大きな予算や制作体制を伴うことが多い、大規模な商業ゲームを表す非公式な業界用語です。
AAAは3つの英単語を略した言葉ではなく、「A」が3つ並ぶ呼び名です。ゲーム分野での名称は、金融分野の債券格付けで使われるAAAから借用されたものとされています。
多額の開発費、多数のスタッフ、数年に及ぶ制作期間、大規模な宣伝などはAAA作品でみられる特徴ですが、予算・人数・年数について世界共通の最低基準があるわけではありません。
過去にはユービーアイソフトのように具体的な自社基準を設けた例もありましたが、それが業界全体のルールだったわけでもありません。
ゲーム分野では少なくとも1991年の業界誌にAAAの使用例が報告されています。一方、最初にAAAという言葉をゲームへ持ち込んだ人物までは特定されていません。
また、AAAはファーストパーティー作品や独占タイトルだけを指す言葉でも、品質やレビュー評価を保証する称号でもありません。
大規模な投資と制作体制を持つ「ゲーム業界の大作」を表す言葉。ただし、その境界線には世界共通の一本線が引かれていない。
この点を知っておくと、「AAAタイトル」「AAA級」「AAAクラス」という表現を見たときに、単なる「すごいゲーム」という意味より一歩踏み込んで理解できます。
参考情報
- European Commission「Case M.10646 – Microsoft / Activision Blizzard」
- New York City Mayor’s Office of Media and Entertainment「2021 NYC Digital Games Industry Economic Impact Study」
- Screen Australia「Australian Games Industry Glossary of Terms」
- Ubisoft「Annual Report 2004-2005」
- 株式会社コーエーテクモホールディングス「IR情報 用語集」
- Video Game History Foundation Library「Electronic Gaming Retail News」MAG-EGRN
