謝れない人はなぜ謝れない?謝罪を難しくする心理と防衛反応

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明らかに自分にも非がありそうなのに謝らない。指摘されると言い訳をしたり、別の話を持ち出したりする。そんな反応を目にすると、「一言謝れば済むのに、なぜ謝れないのだろう」と疑問に感じることがあります。

謝れない理由は、一つの性格だけでは説明できません。心理学の謝罪研究では、自分についての評価が揺らぐことへの抵抗、責任を認める難しさ、相手への関心、恥や罪悪感、謝っても意味がないという予想など、複数の要因が関係すると考えられています。

謝罪は短い言葉ですが、自分の行動を振り返り、相手への影響を認め、ときには責任を引き受ける必要があります。自分を守ろうとする気持ちが強く働けば、謝罪より先に言い訳や反論が出てくることもあります。

なお、ここで紹介する研究は、人に見られる傾向を調べたものです。「謝らない人には必ずこの心理がある」と個人を診断できるものではありません。

目次

謝れない理由は一つではない

「謝れない人」と聞くと、その人の性格に原因があるように思えます。しかし実際には、同じ人でも相手や状況によって謝れることもあれば、なかなか謝れないこともあります。

謝罪研究では、質の高い謝罪を妨げる要因として、相手や関係への関心が低いこと、自分のイメージが傷つくと感じること、謝罪しても効果がないと思うことなどが挙げられています。

自分のイメージが傷つくと感じると防衛的になりやすい

多くの人は、自分を「悪い人ではない」「ある程度まともな人間だ」と考えています。ところが、自分の行動によって誰かを傷つけたと認めると、その自己イメージと実際の行動の間にズレが生まれます。

そのとき、

「自分だけが悪いわけではない」
「相手にも原因があった」
「そんなつもりではなかった」
「そこまで大きな問題ではない」

と考えれば、自分にとって受け入れやすい形に出来事を捉え直すことができます。

自己防衛と謝罪を調べた研究では、自分を守ろうとする傾向が強いほど、自分が起こした問題について謝罪しようとする意思が低くなる関連が示されました。その過程には、自分の責任を小さく捉えることや、罪悪感の弱まりが関係していました。

外から見ると単なる言い訳に見えても、本人の中では自分自身についての評価を守ろうとする反応になっている可能性があります。

相手との関係をどう考えているかも影響する

謝罪には、傷つけた相手との関係を修復する役割があります。そのため、その関係を本人がどれほど大切に感じているかによっても、謝ろうとする気持ちは変わります。

関係を維持したい、以前のような距離に戻りたいと思えば、謝罪する理由も生まれやすくなります。反対に、本人が関係を続ける必要性をほとんど感じていなければ、謝罪への動機が弱くなる場合もあります。

もちろん「大切な相手には必ず謝る」というほど単純ではありません。謝罪するかどうかには、本人の考え方だけでなく、相手との関係をどう捉えているかも影響します。

「謝っても意味がない」と思っていることもある

謝罪をためらう理由として、謝った後の結果をどう予想しているかも関わります。

「謝っても許してもらえない」
「何を言っても怒られる」
「今さら謝っても関係は戻らない」

と考えていれば、本人には謝罪する意味が見えにくくなります。

心理学のレビューでも、謝罪には効果がないという予想は、十分な謝罪を妨げる要因の一つとして挙げられています。

さらに、傷つけられた側と問題を起こした側では、「どんなときに謝罪が必要か」という感覚が一致しないこともあります。

複数の実験を行った研究では、意図的に傷つけられた場合ほど被害を受けた側は謝罪を求めやすかった一方、問題を起こした側では、意図的ではなかった場合のほうが謝ろうとする傾向が見られました。

この研究では、被害を受けた側と行為者側で、謝罪を必要と感じる場面にずれが生じることが示されています。 同じ出来事でも、それぞれの立場から見えているものは同じとは限りません。

防衛反応が強くなると責任を認めにくくなる

自分のミスを指摘されたとき、反射的に身を守りたくなることは珍しくありません。

その反応が強くなると、何が起きたのかを考えるより先に「自分は悪くない」と証明することへ意識が向いてしまう場合があります。

言い訳と事情説明は同じではない

たとえば遅刻について、

「電車が遅れていた」
「道路が事故で渋滞していた」

と事情を説明すること自体は問題ではありません。本当に避けられない事情もあります。

一方で、

「そもそも集合時間が早すぎる」
「あなたも前に遅刻した」
「数分くらい大したことではない」

と話題が移り、自分に責任がある部分まで認めなくなると、謝罪からは遠ざかります。

謝るために「すべて自分が悪かった」と認める必要はありません。出来事には複数の原因があることも多いため、自分に責任がある部分を認められるかどうかは、謝罪へ進むうえで一つのポイントになります。

謝らないことで一時的に自分を保ちやすくなることもある

謝罪をしないことで、一時的に自分を保ちやすくなることを示した研究もあります。

ある実験では、謝罪を拒否した人で、自尊心や「自分で状況を動かしている」という感覚、自分の価値観を保っている感覚が高まる結果が報告されています。

相手から見ると「謝ったほうが楽なのでは」と思えても、本人の中では非を認めずにいるほうが、自分を守れたように感じる場合もあるのです。

もちろん、自分を守りたい気持ちがあれば他人を傷つけてもよいという話ではありません。謝らないという行動にも、本人側では自分を保つ働きが生じる可能性がある、という意味です。

責任を認めることと全面的に非を認めることは別

謝罪への抵抗が大きくなる背景には、「一度謝ったら何もかも自分が悪いことになる」という受け止め方が隠れていることもあります。

しかし、

「言い方がきつかったことは悪かった」
「連絡しなかったことは申し訳なかった」

のように、自分が責任を負う部分だけを認めることもできます。

相手の主張を全面的に受け入れることと、自分の行動に問題があった部分を認めることは同じではありません。

責任を0か100かで考えず、自分が引き受けるべき部分を見つけられることも謝罪への一歩になります。

恥や罪悪感、共感も謝罪への反応を左右する

謝罪を考えるときには、自分の行動をどう感じるかだけでなく、相手の立場をどこまで想像できるかも関わります。

特に「罪悪感」と「恥」は似た感情に見えますが、謝罪との関わり方は同じではありません。

「悪いことをした」と「自分はダメだ」では反応が変わる

罪悪感は「自分のしたことがよくなかった」という行動への評価につながりやすいのに対して、恥は「こんなことをする自分はダメだ」という自己全体への評価につながることがあります。

罪悪感や共感と謝罪の関係を調べた研究では、罪悪感を感じやすいことや他者への共感が高いことが、謝罪への積極性と関連していました。

「悪いことをしてしまった」と感じれば、「謝ろう」「埋め合わせをしよう」と行動を修正する方向へ向かうことがあります。

一方で、「こんな失敗をした自分はダメだ」と自己全体への否定が強くなると、問題と向き合うより、その場から逃げたり話題を避けたりしたくなることもあります。

罪悪感が強ければ必ず謝れる、恥を感じれば必ず逃げるというほど明確に分けられるわけではありません。それでも、失敗した行動を問題だと感じるのか、自分自身まで否定されたように感じるのかは、その後の反応を考えるうえで役立つ違いです。

自分を責めすぎないことが謝罪につながることもある

「謝れる人は自分に厳しい人」というイメージを持つかもしれませんが、必ずしもそうではありません。

自分の失敗に対して過度に自分を責めないセルフ・コンパッション(自分への思いやり)と謝罪の関係を調べた研究では、セルフ・コンパッションが高いほど謝罪への意思も高いという関連が報告されています。

自分への思いやりとは、失敗をなかったことにしたり、自分を何でも正当化したりすることではありません。「悪い行動をしたこと」と「自分という人間すべての価値」を分けて受け止めることに近い考え方です。

間違いを認めても自分自身の価値まで失われるわけではないと思えれば、失敗とも向き合いやすくなります。

相手への共感は「謝罪の質」とも関係する

謝罪では、「自分に悪意があったか」だけでなく、「結果として相手にどのような影響を与えたか」を考えることも関わってきます。

共感と謝罪についての研究では、共感性の高さと謝罪する傾向に関連が報告されています。さらに、相手への共感が高い人ほど、責任や相手への影響などを含み、防衛的な表現の少ない謝罪をする傾向も示されています。

自分には傷つける意図がなかったとしても、

「相手は困ったかもしれない」
「結果として傷つけてしまった」

と考えられれば、謝る理由が生まれます。

反対に「悪気はなかったのだから問題はない」と考えれば、同じ出来事でも謝罪の必要性を感じにくくなることがあります。

意図がなかったことと、相手への影響がなかったことは同じではありません。

「ごめんなさい」と言うだけが謝罪ではない

誰かがなかなか謝らないと、「どうすれば謝らせられるのか」と考えたくなることがあります。

ただ、形式的に「ごめんなさい」と言わせても、本人が何について責任を感じているのか分からなければ、問題が解決したとは限りません。

謝罪には、言葉を発するかどうかだけでなく、その中に何が含まれているのかという違いがあります。

謝罪には複数の要素がある

謝罪の構成を調べた研究では、謝罪に含まれ得る要素として、後悔を示すこと、何が起きたのかを説明すること、責任を認めること、反省を示すこと、修復を申し出ること、許しを求めることなどが検討されています。

すべてを毎回そろえなければならないわけではありませんが、複数の要素が含まれた謝罪ほど効果的に評価される傾向がありました。なかでも、責任を認めることや問題を修復しようと申し出ることは、相手が謝罪を受け取るうえで大きな役割を持つとされています。

たとえば、

「ごめん」

だけで終わるのと、

「約束の時間に遅れて待たせてしまった。連絡もしなくて申し訳なかった。次から遅れそうなときは早めに連絡する」

と伝えるのでは、相手が受け取れる情報が違います。

後者には、何について謝っているのか、責任を認めているのか、今後どうするのかが含まれています。

謝罪を見るときは、「謝った・謝らなかった」だけでなく、何について責任を認め、どう修復しようとしているのかにも目を向けると、謝罪の中身が見えやすくなります。

その後の行動も判断材料になります。謝罪の言葉は少なくても行動を改める人がいる一方で、何度も謝りながら同じことを繰り返す人もいます。

また、謝罪したからといって、相手が必ず許さなければならないわけでもありません。謝る側が責任を認めることと、傷つけられた側がその後の関係をどうするかは別の問題です。

Q&A

謝れない人は性格が悪いの?

謝らなかったという一つの行動だけで、その人の性格全体を判断することはできません。自己防衛、責任の捉え方、相手との関係、恥や罪悪感、謝罪しても意味がないという予想などが影響します。

ただし、責任転嫁を繰り返したり同じ問題を何度も起こしたりする場合は、謝罪の言葉だけでなく普段の行動も見る必要があります。

謝れない人は自分の非に気づいていないこともある?

あります。同じ出来事でも、「自分にも責任がある」と考える人と「自分にはほとんど責任がない」と考える人がいます。

自分の責任そのものを認識していなければ、本人には謝る理由が見えていないことがあります。そのため、周囲には「どうして謝らないのか」と見える場面でも、本人はそもそも謝罪が必要な状況だと捉えていない可能性があります。

謝れる人と謝れない人の違いは?

研究では、相手への共感、罪悪感、自分の責任の認識、自己防衛の程度、相手との関係などが謝罪と関連しています。

また、同じ人でも相手との関係や出来事の受け止め方によって、謝罪への反応は変わります。「謝れる人」と「謝れない人」を完全に二つへ分けることはできません。

まとめ

人が謝れない背景には、自分についての評価を守ろうとする防衛反応、責任の捉え方、相手との関係、罪悪感や恥、謝罪しても意味がないという予想などがあります。

同じ人でも、相手との関係や出来事の受け止め方によって、謝罪への反応は変わります。相手への影響を考えられるか、自分の責任をどこまで認識しているかも関わってきます。

そして謝罪では、「ごめんなさい」という言葉の有無だけでなく、責任を認めているか、相手への影響を理解しようとしているか、問題を修復しようとしているかを見ることも一つの手がかりになります。

「なぜ謝れないのか」を考えるときは、その人を一つの性格で決めつけるより、何から自分を守ろうとしているのか、責任をどう捉えているのか、相手への影響をどこまで認識しているのかを見ると、その反応を理解しやすくなります。

参考情報

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  • Joost M. Leunissen, David De Cremer, Christopher P. Reinders Folmer, Marius van Dijke(2013)「The apology mismatch: Asymmetries between victim’s need for apologies and perpetrator’s willingness to apologize」Journal of Experimental Social Psychology
  • Tyler G. Okimoto, Michael Wenzel, Kyli Hedrick(2013)「Refusing to apologize can have psychological benefits (and we issue no mea culpa for this research finding)」European Journal of Social Psychology
  • Roy J. Lewicki, Beth Polin, Robert B. Lount Jr.(2016)「An Exploration of the Structure of Effective Apologies」Negotiation and Conflict Management Research

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