亜光速とはどれほど速い?光速との違いと正式な境界がない理由

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宇宙を扱った作品や科学ニュースでは、「亜光速で移動する宇宙船」「亜光速まで加速された粒子」といった表現が登場します。

亜光速は、光速にかなり近いものの、光速には届いていない速度を表します。

亜光速には「光速の90%以上」といった正式な境界はありません。物理学上の厳密な速度区分ではなく、光速に迫る速さを表す言葉で、具体的な数値は決められていないためです。

割合では光速とほとんど同じに見えても、実際に進む距離や必要なエネルギーを比べると、わずかな速度差が大きな違いにつながります。


目次

亜光速と呼ばれる理由

亜光速は「あこうそく」と読みます。「亜」という漢字には、主となるものに次ぐ、準じるという意味があります。「亜熱帯」が熱帯に準じる地域を指すように、亜光速は光速に迫っているものの、光速そのものではない速さを示しています。

亜光速は、メートル毎秒のような物理単位ではありません。特定の一つの数値を示す言葉でもないため、実際にどの程度の速度を指しているかは、使われる場面によって変わります。

英語では「near-light speed(光速に近い速度)」や「nearly the speed of light(ほぼ光速)」といった表現が使われます。

似た言葉には「relativistic speed(相対論的速度)」があります。相対論的速度は、時間の遅れなど、相対性理論による変化を無視しにくい速度を指して使われます。

一方の亜光速は、光速にかなり迫っていることへ重点を置いた表現です。似た場面で使われますが、必ずしも同じ意味ではありません。


亜光速に正式な境界はない

亜光速に「光速の何%以上」という境界がないのは、相対性理論の影響が、ある速度を境に突然始まるわけではないためです。

時間の進み方や運動エネルギーの増え方は、速度が上がるにつれて連続的に変化します。低速では、日常的に使われる古典力学による計算との差が小さく、光速へ近づくほど相対論的な変化が目立つようになります。

どの程度の違いから相対論的な計算が必要になるかは、求める精度や扱う現象によっても変わります。そのため、特定の割合を亜光速の開始地点として定めることはできません。

亜光速に正式な下限はありませんが、一般向けの説明では、光速の90%や99%、99.9%といった、光速との差が小さい速度が例として挙げられることがあります。NASAも、光速に近い粒子の例として光速の99.9%に達する粒子を紹介しています。

ただし、90%や99%という数字も定義ではありません。亜光速という言葉だけでは正確な速度を特定できないため、「光速の90%」や「0.99c(光速の99%)」のように割合を併記すると、意味が伝わりやすくなります。


亜光速と光速の差はどのくらいあるのか

真空中の光速は、正確に毎秒2億9979万2458メートルです。キロメートルに直すと毎秒約29万9792キロメートルで、物理学では「c」という記号で表されます。

この値は測定するたびに変わる近似値ではありません。現在の国際単位系では、真空中の光速を固定し、その値をもとに長さの単位であるメートルが定義されています。

割合では小さく見える差も、1秒間に進む距離へ置き換えると大きさがわかります。

光速の90%では毎秒約3万キロメートルの差

光速の90%は0.9cと表し、毎秒約26万9813キロメートルです。

光と同じ場所を同時に出発すると、1秒後には約2万9979キロメートルの差がつきます。光速の90%も想像しにくいほどの速さですが、光には毎秒約3万キロメートルずつ離される計算です。

光速の90%と100%の差は割合では10%です。しかし、基準となる光速が非常に大きいため、実際の移動距離では地球規模の差になります。

光速の99%でも毎秒約3000キロメートルの差

光速の99%は0.99cと表し、毎秒約29万6795キロメートルです。

光速との差は1%ですが、光は1秒ごとに約2998キロメートル先へ進みます。10秒後には約3万キロメートル、1分後には約18万キロメートルの差です。

光速の99%という数字だけを見ると、光とほとんど同じ速さに感じられます。それでも、進んだ距離を比べれば短い時間で大きな差が生まれます。

光速の99.9%でも同じ速度にはならない

光速の99.9%では、光との差は0.1%です。それでも1秒間に約300キロメートルずつ離されます。

さらに光速の99.9999%まで近づくと、1秒間の差は約300メートルになります。速度差はかなり小さくなりますが、光と同じ速さになったわけではありません。

進み続ける限り、光との距離は少しずつ広がります。光速の1%や0.1%は、割合だけでは小さく見えても、移動距離に直すと無視できない差です。


光速に近づくほどエネルギーと時間の差が大きくなる

亜光速では、移動距離だけでなく、加速に必要なエネルギーや時間の進み方にも大きな変化が現れます。

質量を持つ物体は光速に到達できない

日常的な速度では、物体にエネルギーを加えると、その分だけ速度も上がるように見えます。

特殊相対性理論では、物体の速度が光速へ近づくほど、さらに加速させるために必要なエネルギーが増えていきます。相対論的な運動エネルギーは、速度が光速へ近づくにつれて際限なく大きくなります。

現在の物理学では、質量を持つ物体は光速へ限りなく近づけても、光速そのものには到達できないと考えられています。光速へ近づくほど加速に必要なエネルギーが増え、到達には限りなく大きなエネルギーが必要になるためです。

光速の90%から99%、さらに99.9%へと近づくほど、速度差を縮めるために多くのエネルギーが必要になります。数字では少しの違いに見えても、同じ感覚で速度を上げ続けることはできません。

亜光速では時間の遅れも目立つ

光速に近い速度で移動すると、静止している側の基準で比べた移動中の時計は、ゆっくり進みます。これが特殊相対性理論における「時間の遅れ」です。

時間の遅れの大きさを表す際に使われるのが、ローレンツ因子です。速度が光速へ近づくほど、この数値は急激に大きくなります。

地球と宇宙船が一定の相対速度で移動している場合、光速の90%ではローレンツ因子が約2.29になります。地球側の基準で比べると、宇宙船側の時計が1年進む間に、地球側では約2.29年が経過する関係です。

光速の99%では約7.09、99.9%では約22.37になります。光速の90%から99.9%までの速度差は9.9ポイントですが、時間の進み方の差は大きく広がります。

ただし、宇宙船にいる人が、自分の時計や体の動きだけ遅くなったと感じるわけではありません。船内では時計も体も普段どおりに動きます。時間差は、異なる運動状態にある側が互いの時間を比べたときに現れます。


実際に亜光速で動く粒子は存在する

亜光速は、空想の中だけに登場する速さではありません。陽子や電子などの粒子は、粒子加速器によって光速に極めて近い速度まで加速できます。

欧州原子核研究機構の大型ハドロン衝突型加速器では、全周約27キロメートルのリング内を、二つの粒子ビームが反対方向へ光速近くで進みます。ビーム同士を衝突させ、物質を構成する粒子の性質を調べています。

宇宙空間にも、光速に迫る粒子があります。ブラックホールの周辺や地球近くの宇宙空間では、一部の粒子が光速の99.9%ほどに達することがあります。活動銀河やガンマ線バーストから噴き出すジェットにも、光速近くで進む粒子が含まれています。

人が乗る宇宙船では実現していませんが、素粒子や高エネルギーの宇宙現象では、光速に極めて近い速度が実際に観測や実験の対象になっています。


Q&A

亜光速は光速の何%からですか?

「光速の何%以上」という正式な境界はありません。光速の90%や99%などが例として挙げられることはありますが、定義ではありません。正確に伝える場合は、0.9cや0.99cのように具体的な割合を示します。

光速の99%なら光とほぼ同じですか?

割合ではかなり近いものの、同じ速度ではありません。光速の99%で進む物体は、光に1秒で約2998キロメートル離されます。光速へさらに近づくほど、加速に必要なエネルギーや時間の遅れも大きくなります。

亜光速からさらに加速すれば光速に到達できますか?

現在の物理学では、質量を持つ物体は光速へ限りなく近づけても、光速そのものには到達できないと考えられています。光速へ近づくほど加速に必要なエネルギーが増えるためです。


まとめ

亜光速とは、光速にかなり近いものの、光速には届いていない速度です。「亜」には、主となるものに次ぐ、準じるという意味があります。

亜光速に「光速の何%以上」という正式な境界はありません。時間の遅れや必要なエネルギーの変化が、特定の速度から突然始まるのではなく、速度の上昇に合わせて連続的に大きくなるためです。

亜光速は一つの決まった速度ではありません。具体的な速さを伝える際は、「光速の99%」や「0.99c」のように割合を示す必要があります。

光速の99%でも、光には1秒で約3000キロメートル離されます。現在の物理学では、質量を持つ物体が光速そのものへ到達することはできないと考えられています。

参考情報

  • 国際度量衡局「SI基本単位:メートル」
  • OpenStax『University Physics Volume 3』「Time Dilation」
  • OpenStax『University Physics Volume 3』「Relativistic Energy」
  • 欧州原子核研究機構「Large Hadron Collider」
  • NASA「Three Ways to Travel at Nearly the Speed of Light」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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