お盆になると、仏壇や精霊棚のそばに灯される盆提灯。花や草木、風景などが描かれたものもあれば、真っ白な提灯を見かけることもあります。
盆提灯には、お盆に迎える先祖や故人にとっての「目印」という意味があります。その背景には、迎え火や、提灯の火を頼りに先祖を家へ迎える習慣がありました。
なかでも白い提灯は、亡くなった人が初めて迎えるお盆で使われることがある特別な提灯です。
盆提灯はいつ頃から使われ、なぜ初盆には白い提灯が登場するのでしょうか。普段の盆提灯との違いまで見ると、お盆で灯りが大切にされてきた理由が分かります。
盆提灯はなぜ飾る?由来は「迎える灯り」とつながる
盆提灯は、お盆に迎える先祖や故人が迷わず家へ戻れるよう、目印となる灯りとして飾られてきました。
その役割は、お盆の初めに火を焚いて先祖を迎える「迎え火」ともつながっています。
かつては、お墓や菩提寺へ提灯を持って行き、墓前で灯した火を消さずに家まで持ち帰り、仏壇などへ移す迎え方も行われていました。現在でも、提灯を持って墓へ先祖を迎えに行く習慣が残る地域があります。
こうした、灯りを頼りに先祖を迎えるお盆の習慣の中で、盆提灯も帰る場所を示す灯りとして使われてきました。
盆提灯の習慣は江戸時代に広がったとされていますが、その発祥地や始まった年代を一つに特定することはできません。
江戸時代後期には盆提灯の記録が残っている
盆に提灯を使う文化が、少なくとも江戸時代後期には存在していたことを示す記録があります。
岐阜市の歴史資料によると、文政7年(1824年)に成立した『宮川舎漫筆』には、当時流行していた盆提灯についての記述があります。
19世紀中頃にまとめられた『守貞謾稿』にも、細い骨と薄い紙、美しい絵を特徴とする岐阜の提灯が盂蘭盆に使われていたことが記されています。
岐阜提灯は江戸時代の史料にも登場し、現在も盆提灯として広く親しまれています。江戸時代後期には、絵を施した提灯がお盆に使われていたことも記録から分かります。
岐阜提灯の古い記録が残っていても、盆提灯そのものが岐阜で生まれたことを意味するわけではありません。盆提灯の習慣が最初にどこで始まったのかについては、不明な部分が残っています。
現在では、ろうそくではなく電球や発光ダイオード(LED)を使う盆提灯も一般的です。灯し方は変わっても、お盆の灯りとして飾る習慣は受け継がれています。
白提灯は初盆・新盆で使われる特別な提灯
普段のお盆で見かける盆提灯には、花や草木、風景などが描かれたものがあります。初盆では、それとは異なる白い提灯を使う地域があります。
「初盆(はつぼん)」や「新盆(にいぼん・しんぼんなど)」とは、一般に故人が亡くなり、四十九日を過ぎてから初めて迎えるお盆を指します。
亡くなった時期や土地の習慣によっては、翌年のお盆を初盆として扱う場合もあります。
浄土宗でも、最初のお盆には白い提灯を軒下へ吊るすなど、普段とは異なる飾り方をする地域があると紹介されています。
白提灯は、初めてのお盆を迎える故人のために用意される提灯として知られています。
初盆用の白提灯には「白紋天」もある
初盆に使われる白い盆提灯には、「白紋天(しろもんてん)」と呼ばれるものがあります。
白い火袋(ひぶくろ)を使った初盆用の盆提灯の一種で、絵柄入りの盆提灯とは区別して用いられます。
白提灯と呼ばれるものがすべて同じ形をしているわけではありません。吊るすタイプなどがあり、土地や家庭によって用いられる提灯にも違いがあります。
「初盆なら必ず白提灯」ではない
初盆に白提灯を使う習慣は広く知られていますが、どこでも必ず用意するものではありません。
浄土宗の案内でも、地方によって新盆に限り白い提灯を使う場合があるとされています。
初盆の白提灯には地域差があり、家や土地、菩提寺によって飾り方が異なることがあります。
白提灯と普通の盆提灯は何が違う?
白提灯と、絵柄の入った一般的な盆提灯では、主に使われる場面と使用する期間に違いがあります。
白提灯は初盆に使われるものとして知られ、絵柄入りの盆提灯は初盆だけでなく、その後のお盆でも繰り返し飾ることができます。
全日本宗教用具協同組合でも、白紋天などの白い盆提灯は初盆のみ、絵や柄の入った盆提灯は翌年以降も使えるものとして紹介されています。
白い色そのものにはどんな意味がある?
初盆に白い提灯を使う風習は各地に伝わっていますが、なぜ白色が選ばれたのかという歴史的な理由は、はっきりしていません。
そのため、白提灯については「初盆に用いられる白い盆提灯」という役割と、白色そのものの起源を分けて捉える必要があります。
白提灯は初盆だけ、絵柄入りは翌年も使える
初盆用の白提灯は、その年のお盆を終えた後は再び使わない形が一般的です。
花や風景などが描かれた盆提灯は、初盆の後も毎年のお盆で使うことができます。紙や絹の火袋を傷めないよう箱へ戻して保管し、翌年また飾ります。
初盆を終えた白提灯を処分する場合は、自治体の分別方法や寺院の案内に従います。
盆提灯はいつから飾る?お盆の日程にも違いがある
盆提灯を飾る時期は、その土地で行われるお盆の日程によって変わります。
7月盆の場合は7月初め、8月盆の場合は8月初めから盆提灯を飾る例があります。お盆が終わる15日や16日ごろを目安に片付ける地域もありますが、日程は一律ではありません。
お盆は一般に7月または8月の13日から15日・16日ごろに行われます。旧暦に合わせて行う土地もあるため、「盆提灯は毎年この日に出す」という全国共通の日付はありません。
飾る時期は、その地域で行われるお盆の日程に合わせて異なります。
盆提灯の形や飾り方は地域・宗派によって異なる
盆提灯は日本のお盆を代表する飾りの一つですが、どの土地や宗派でも同じ形を使うわけではありません。
各地の初盆行事を見ると、提灯や燈籠の使い方にも違いがあります。
愛媛県佐田岬半島では、初盆の家に飾った提灯を精霊船に乗せて送り出す例があります。大分県宇佐市長洲地区には、初盆の家が「据え燈籠」「御殿燈籠」と呼ばれる大きな燈籠を飾る行事が伝わっています。
同じ「初盆の灯り」でも、家庭内に置く盆提灯だけが唯一の形ではありません。
浄土真宗では切子灯籠を使う例もある
宗派によっても、お盆に使われる灯籠や飾りには違いがあります。
例えば浄土真宗では、盂蘭盆会(うらぼんえ)に「切子(きりこ)灯籠」を用いることがあります。
浄土真宗本願寺派では、先祖を迎えるための精霊棚を設けないとされています。しかし、それを理由に、お盆に提灯や灯籠を一切使わないという意味にはなりません。
精霊棚、盆提灯、切子灯籠などは、土地や宗派によって位置付けが異なります。
Q&A
まとめ
盆提灯は、お盆に迎える先祖や故人が家へ戻るための目印となる灯りとして飾られてきました。その背景には、迎え火や、墓前で灯した提灯の火を家へ持ち帰るといった迎え方があります。
盆提灯の習慣は江戸時代に広がったとされ、少なくとも江戸時代後期には盆提灯について記した史料が残っています。最初にどこで始まったのかまでは特定されていません。
普段のお盆では絵柄入りの盆提灯が使われることがあり、初盆では白提灯や白紋天を飾る地域があります。白提灯は初盆のみ、絵柄入りの盆提灯は翌年以降も使えるという違いがあります。
白提灯を使うかどうか、盆提灯を飾る時期や形、使われる灯籠の種類には土地や宗派による違いがあります。盆提灯は、先祖を迎える灯りという意味を持ちながら、各地のお盆の習慣と結び付いて受け継がれてきました。
参考情報
- 浄土宗「盂蘭盆会」
- 岐阜市「岐阜市歴史的風致維持向上計画(第2期)」
- 全日本宗教用具協同組合「お盆の切子灯籠について教えてください」
- 全日本宗教用具協同組合「お盆飾りの片付け お供えはどうしますか」
- 浄土真宗本願寺派(西本願寺)「よくあるご質問」
- 文化遺産オンライン「佐田岬半島の初盆行事」
- 文化遺産オンライン「長洲の初盆行事」
