7月8日は、英語圏で National Video Game Day(ナショナル・ビデオゲーム・デー/ビデオゲームの日) と呼ばれることがあります。
国が定めた祝日ではなく、ゲーム文化を楽しむために広がった非公式の記念日です。ただし、よく似た名前の National Video Games Day(ナショナル・ビデオゲームズ・デー/ビデオゲームズの日) が9月12日に紹介されることもあり、日付が少し混同されやすい記念日でもあります。
7月8日はどんな日なのか。なぜ9月12日にも似た記念日があるのか。ゲームの歴史とあわせて見ると、ビデオゲームが遊びから文化へ広がってきた流れが見えてきます。
National Video Game Dayとは何の日?
7月8日にゲーム文化を楽しむ海外の記念日
National Video Game Dayは、毎年7月8日に紹介されることが多い海外の記念日です。
ゲームそのものだけでなく、作り手、プレイヤー、キャラクター、音楽、物語、対戦や協力の体験まで、ゲーム文化を広く楽しむ日として扱われています。
この日は、特定のゲーム会社や作品だけを祝う日ではありません。家庭用ゲーム、アーケードゲーム、スマホゲーム、PCゲーム、レトロゲーム、インディーゲームなど、幅広いゲームが対象になります。
祝日ではないため、学校や会社が休みになるわけではありません。それでもSNSでは、好きなゲームを振り返ったり、昔遊んだタイトルの思い出を投稿したり、友人とオンラインで遊んだりするきっかけとして使われています。
国の祝日というより、ゲーム好きの間で楽しむ記念日と見るほうが近いです。
9月12日の似た記念日と混同されやすい
National Video Game Dayでややこしいのは、9月12日に National Video Games Day というよく似た名前の記念日も紹介されることです。
英語表記で見ると、7月8日は Video Game と単数形で書かれることが多く、9月12日は Video Games と複数形で書かれることが多いです。ただし、実際にはネット上でも混同されやすく、どちらも「ゲームを楽しむ日」として扱われています。
ゲーム史を扱うVideo Game History Foundationは、この記念日が1991年の『Chase’s Calendar of Events』に7月8日として登場し、その後1994年・1995年は7月12日、1996年は9月10日、1997年以降は9月12日に落ち着いていった流れを紹介しています。つまり現在は別の日のように紹介されることがありますが、もともとは同じ記念日が日付の揺れを経て2つの日付で語られるようになった、と見るとわかりやすいです。
なぜ7月8日がゲームの記念日になったのか
はっきりした公式由来は残っていない
National Video Game Dayには、「この出来事があったから7月8日になった」とはっきり説明できる公式な由来があるわけではありません。
クリスマスや独立記念日のように、歴史上の大きな出来事と結びついた記念日ではなく、カレンダー文化の中で広がった非公式の記念日です。
Video Game History Foundationの調査では、1991年の『Chase’s Calendar of Events』に、David Earleという人物とKid Video Warriorsという団体名が関係する形で登場したことが紹介されています。ただ、その人物や団体の詳しい活動は、現在ではよく分かっていません。
そのため7月8日は、「この日に有名ゲームが発売されたから」というより、ゲームを楽しむ日としてカレンダーに載り、そこから広がっていった日と考えるのが自然です。
日付が揺れたことで9月12日も広がった
この記念日の不思議な点は、日付が固定されるまでに揺れがあったことです。
Video Game History Foundationの記事では、1991年から1993年は7月8日、1994年と1995年は7月12日、1996年は9月10日、その後1997年から9月12日に落ち着いた流れが紹介されています。
現在では、7月8日をNational Video Game Day、9月12日をNational Video Games Dayとして分けて紹介するサイトもあります。
ただ、どちらかが「正しくて」どちらかが「間違い」と言い切るよりも、ゲーム文化を祝う日がネット上で2つの日付として残った、と考えるほうが実態に合っています。
ゲームはどのように文化になったのか
研究所の実験から遊びへ広がった
ビデオゲームの歴史は、今のような家庭用ゲーム機やスマホから始まったわけではありません。
初期の電子ゲームのひとつとしてよく挙げられるのが、1958年にアメリカのブルックヘブン国立研究所で公開された Tennis for Two(テニス・フォー・ツー) です。ブルックヘブン国立研究所によると、このゲームは研究所の見学者向けに作られた2人用の電子テニスゲームで、アナログコンピューターとオシロスコープ画面を使って遊ぶものでした。
この時代のゲームは、まだ商品として広く売られるものではありませんでした。研究施設や大学など、コンピューターに触れられる限られた場所で、技術のデモや実験的な遊びとして生まれていました。
今では大きな娯楽産業になったゲームも、始まりは限られた場所で楽しまれる実験的な遊びでした。そこから少しずつ、家庭や街の遊びへ広がっていったのです。
家庭用ゲームとアーケードが広げた遊び
1970年代になると、ゲームは研究室を離れ、家庭や街の娯楽へ広がっていきます。
家庭用ゲーム機としては、1972年に Magnavox Odyssey(マグナボックス・オデッセイ) が登場しました。スミソニアン国立アメリカ歴史博物館は、Magnavox Odysseyを、Ralph Baer(ラルフ・ベア)が発明した試作機「Brown Box(ブラウンボックス)」をもとにした家庭用ビデオゲームシステムとして紹介しています。
同じ1972年には、Atariのアーケードゲーム Pong(ポン) も登場しました。The Strong National Museum of Playによると、PongはNolan Bushnell(ノーラン・ブッシュネル)が着想し、Allan Alcorn(アラン・アルコーン)がコイン式アーケード版の試作機を作ったゲームです。The Strongは、Pongが多くの人にビデオゲームの楽しさを広め、アーケードゲーム時代の始まりを印象づけた存在だったと紹介しています。
このころのゲームは、今の大作ゲームのように複雑な物語や美しい映像があるわけではありません。ルールはかなりシンプルです。それでも、画面の中のボールを動かし、相手と競い、得点を取るという体験は、多くの人にとって新鮮でした。
ゲームが文化になった理由は、技術の進歩だけではありません。家族や友人と同じ画面を見ながら遊ぶ時間、ゲームセンターで順番を待つ体験、攻略法を話し合う会話が、ゲームをただの機械ではなく、人と人をつなぐ遊びにしていきました。
National Video Game Dayの楽しみ方
昔好きだったゲームを遊び直す
7月8日には、昔好きだったゲームをもう一度遊んでみるのもよいでしょう。
子どものころに遊んだゲームを今プレイすると、当時とは違う見え方をすることがあります。難しいと思っていたステージが意外と短く感じたり、気づかなかった音楽の良さに気づいたり、昔は読まずに飛ばしていた会話が印象に残ったりします。
ゲームは、遊んだ時期や一緒に遊んだ相手の記憶と結びつきやすい娯楽です。National Video Game Dayは、そうした思い出を振り返るきっかけにもなります。
古いゲーム機を引っ張り出すのもよいですし、リマスター版や配信版で遊び直すのもよいでしょう。ゲームの楽しさは、最新作だけにあるわけではありません。
誰かと一緒に遊ぶきっかけにする
ゲームは一人でじっくり遊ぶ楽しさもありますが、誰かと遊ぶことで記憶に残ることも多いです。
対戦ゲーム、協力ゲーム、パーティーゲーム、オンラインゲームなど、今は離れた場所にいる人とも一緒に遊びやすくなっています。久しぶりの友人に声をかける理由として、National Video Game Dayを使うのもよいでしょう。
勝ち負けにこだわらなくても、同じゲーム画面を見ながら笑ったり、うまくいかなかった場面を話したりするだけで、ゲームはコミュニケーションになります。
普段あまりゲームをしない人にとっても、この日はゲーム文化に触れるきっかけになります。短時間で遊べる作品や、物語を楽しめる作品、音楽や映像が印象的な作品を選ぶと、ゲームに慣れていない人でも入りやすくなります。
ゲーム記念日が広がる理由
かつてゲームは、子どもや若者の遊びという印象が強い時代もありました。けれども現在では、子どもから大人まで幅広い世代がゲームに触れています。
家庭用ゲーム機で育った世代が大人になり、スマホゲームで初めてゲームに親しむ人も増えました。ゲーム実況、eスポーツ、ゲーム音楽のコンサート、キャラクターグッズ、映画化やアニメ化など、ゲームはプレイするだけのものではなくなっています。
National Video Game Dayのような記念日が広がる背景には、ゲームが単なる暇つぶしではなく、多くの人の記憶や文化に入り込んできたことがあります。
好きなゲームの話をすると、その人の世代や経験が少し見えてきます。ファミコン、アーケード、携帯ゲーム機、オンラインゲーム、スマホゲーム。どの時代に何を遊んだかで、思い出の形も変わります。
映画や音楽は、基本的には見る・聴くメディアです。一方でゲームは、プレイヤーが操作して進めるメディアです。
同じゲームでも、誰が遊ぶかによって体験が変わります。苦戦したボス、迷ったダンジョン、友人と盛り上がった対戦、何度も挑戦したステージ。こうした記憶は、自分が手を動かして関わったからこそ残りやすいものです。
7月8日のNational Video Game Dayは、ゲームを「消費するもの」としてだけでなく、自分が体験してきた遊びとして振り返る日でもあります。
日本の「ゲームの日」とは違うのか
7月8日のNational Video Game Dayは、海外で広がった非公式の記念日です。一方、日本には11月23日の「ゲームの日」があります。
一般社団法人日本アミューズメント産業協会の協会案内では、毎年11月23日を「ゲームの日」と定め、全国統一イベントやゲームを通じた社会福祉活動を実施していることが紹介されています。
つまり、7月8日のNational Video Game Dayと、日本の11月23日の「ゲームの日」は別のものです。どちらもゲーム文化に関係する日ですが、日付も由来も異なります。
日本でこの記念日を話題にするときは、7月8日は海外のゲーム記念日、11月23日は日本のゲームの日として分けて見ると混同しにくくなります。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
7月8日のNational Video Game Dayは、ゲーム文化を楽しむために広がった海外の非公式な記念日です。
日付の由来ははっきりした公式行事というより、1990年代のカレンダー文化の中で紹介され、現在まで残ってきたものです。よく似た9月12日のNational Video Games Dayもあり、2つの日付が並んで語られることがあります。
ゲームは、研究所の実験的な遊びから始まり、アーケードや家庭用ゲーム機を通じて広がり、今では世代を超える文化になりました。
7月8日は、ただゲームを遊ぶだけでなく、好きだった作品、夢中になった時間、一緒に遊んだ人を思い出す日としても楽しめます。画面の中の遊びが、いつの間にか人の記憶や文化の一部になっていることに気づける記念日です。
参考情報
- Video Game History Foundation「Why is today “National Video Games Day”?」
- Brookhaven National Laboratory「The First Video Game?」
- Smithsonian National Museum of American History「Magnavox Odyssey Video Game Unit, 1972」
- The Strong National Museum of Play「Pong」
- 一般社団法人日本アミューズメント産業協会「協会案内 2024」
