買う物を決めてスーパーマーケットへ行ったはずなのに、気づけば予定になかった商品までカゴに入れていた経験はないでしょうか。
その理由は、特売や商品の魅力だけではありません。通路の作り方、棚の高さ、商品の並べ方、レジ前の売り場なども、店内で何を見るか、どの商品を手に取るかに影響します。
スーパーのレイアウトが購買意欲を左右するのは、商品を目にする機会が増え、比較や選択がしやすくなり、使う場面を思い出しやすくなるためです。
配置だけで購入が決まるわけではありません。価格や好み、買い物の目的も関係しますが、売り場は商品に気づくきっかけを作っています。
スーパーのレイアウトが買い物に影響する理由
スーパーマーケットには、野菜、肉、魚、飲料、調味料、菓子、日用品など、多くの商品が並んでいます。
商品を無計画に置くと、買い物をする人は目的の品を探しにくくなります。店側にとっても、補充や在庫管理を進めにくい売り場になります。
そこで、通路や売り場の位置、棚に置く商品を計画的に決めます。目的の商品を見つけやすくしながら、それまで意識していなかった商品にも気づけるように設計されているのです。
レイアウトと商品配置には違いがある
スーパーのレイアウトには、大きく分けて2つの考え方があります。
一つは、入口、レジ、通路、青果売り場、冷蔵ケースなどの位置を決める店内全体の設計です。もう一つは、棚のどの位置に、どの商品を、どれだけ並べるかという商品配置です。
商品を棚に並べる計画は「棚割り」と呼ばれます。棚割りを図にしたものは、プラノグラム(棚割り図)と呼ばれることもあります。
店内全体のレイアウトは、買い物客がどの売り場を通るかに関係します。棚割りは、同じ売り場の中でどの商品に気づき、何と比較するかに影響します。
通る場所によって目に入る商品が変わる
商品を買うためには、まず存在に気づく必要があります。
目的の商品へ向かう途中で季節商品や新商品が目に入れば、「そういえば必要だった」「今夜の料理に使えそう」と思い出すきっかけになります。
店に入るまで買うつもりがなかった商品でも、視界に入ったことで選択肢の一つになります。通路の位置や売り場の順番が変われば、目にする商品の種類や順番も変化します。
同じ人が同じ買い物リストを持っていても、歩いた場所によって気づく商品は異なります。予定外の商品をカゴに入れるのは、意思が弱いからとは限りません。売り場で商品を見たことで、必要性や使い道を思い出したとも考えられます。
選びやすい配置は探す負担を減らす
商品が種類ごとにまとまっていれば、候補を比較しやすくなります。
例えば、しょうゆが同じ棚に集まっていれば、容量、価格、メーカー、減塩タイプなどをその場で見比べられます。商品が店内の離れた場所に分かれているより、短い時間で違いを確認できます。
棚の商品分類が買い物客の考える分類と合っていると、品ぞろえを把握しやすくなり、売り場を複雑に感じにくくなるという研究があります。購入意向や、選んだ商品への満足度との関連も報告されています。
商品を見つけやすく、その場で比較できる売り場では、探す手間が減ります。「見つからないから今回はやめよう」と購入を見送る場面も少なくなります。
売り場で使われている代表的な配置の工夫
スーパーでは、商品をカテゴリー別に分けるだけでなく、通路の入口、棚の端、手に取りやすい高さなども考えて配置しています。
同じ商品でも、置かれる場所が変われば目に入る頻度が変わります。ただし、目立つ場所へ置けば必ず売れるとは限りません。価格、ブランド、買い物の目的などが重なって、最終的な選択につながります。
通路は商品を探しやすくする
多くのスーパーでは、商品棚を直線状に並べた通路が使われています。限られた面積に多くの商品を置きやすく、買い物客も通路に沿って目的の売り場を探せます。
すべての通路を端から端まで歩く人ばかりではありません。必要な売り場へ直接向かう人もいれば、店内を広く見ながら献立を考える人もいます。
そのため、通路の中だけでなく、離れた場所から見える棚の端や案内表示も重要です。売り場の内容が遠くからわかれば、目的の商品を探しやすくなります。近くを通った人が、予定していなかった売り場へ足を向けるきっかけにもなります。
通路の幅や並び方には、混雑を抑え、買い物カートを通しやすくする役割もあります。店員が商品を補充するときの動きやすさも考慮されます。
棚の高さで見つけやすさが変わる
商品棚では、同じカテゴリーの商品でも置かれる高さが異なります。
正面を向いたときに見つけやすい場所、手を伸ばしやすい場所、かがまなければ見えにくい場所では、商品への気づきやすさが変わります。棚の中央付近や視線に入りやすい位置は、商品を紹介しやすい場所として使われます。
とはいえ、目の高さに置かれた商品が必ず売れるわけではありません。
研究上、より健康的と分類された朝食用シリアルを目の高さへ移した実店舗の実験では、棚の位置を変えただけでは購入割合の増加が確認されませんでした。調査に答えた買い物客は、棚の高さより価格やブランドを重視していました。
棚の高さは商品へ気づくきっかけになりますが、購入を決める要素の一つです。普段から買っている商品がある人は、目立つ場所に別の商品があっても、いつもの品を選ぶことがあります。
通路の端にあるエンド棚は目に入りやすい
商品棚の列の端に設けられた売り場は、「エンド」または「エンド棚」と呼ばれます。
通路の中へ入らなくても見えるため、特売品、季節商品、新商品などを紹介する場所として使われます。普段はそのカテゴリーの通路を歩かない人にも商品を見せやすい場所です。
海外のスーパーで行われた実験では、エンド棚の位置によって販売への影響が変わり、店内後方の陳列が買い物客を通路へ導いた例も報告されています。
これは特定の店舗で行われた実験結果であり、どのスーパーでも同じ結果になるとは限りません。入口や通路の位置、店舗の広さ、買い物客の動きによって効果は変わります。
エンド棚の商品が必ず最安値とは限らない点にも注意が必要です。大きな値札や目立つ陳列によって、お得そうに見えることがあります。価格や容量を通常棚の商品と比べると、実際に割安かどうかを判断しやすくなります。
レジ前は予定外の商品を手に取りやすい
レジ前には、菓子、ガム、飲料、電池、小さな日用品などが置かれていることがあります。
会計を待つ場所は、多くの買い物客が通ります。手が届く範囲に小さく買いやすい商品があれば、「一つくらいなら」と手に取るきっかけが生まれます。
比較的低価格で、持ち帰る負担が少ない商品が多いことも特徴です。会計を待つ間に何度も視界へ入るため、予定していなかった商品を意識しやすくなります。
英国のスーパーを対象にした研究では、レジ周辺で菓子類などを減らす方針の導入後、対象となる小型商品の購入が減った関連が報告されています。
ただし、買い物客がどの棚から商品を取ったのかをすべて記録した研究ではありません。購入の変化が、レジ前の配置だけによるものとは断定されていません。
レジ前は、忘れていた日用品などを思い出せる便利な売り場でもあります。予定外の購入を促す面と、買い忘れを防ぐ面の両方があります。
商品の組み合わせも買い物の内容を変える
レイアウトは、一つの商品を目立たせるためだけに使われるものではありません。商品同士の位置関係によって、使い方や食事の場面を想像しやすくする役割もあります。
パスタの近くにソース、パンの近くにジャム、肉の近くに焼き肉のたれがあれば、必要な物をまとめて探せます。
関連商品が近いと使う場面を思い出しやすい
買い物中は、商品そのものだけを見て選んでいるわけではありません。
「今日の夕食に使える」「家にある食材と組み合わせられる」といった場面を思い浮かべながら、必要な物を考えています。
関連商品が近くにあると、献立や使い方を想像しやすくなります。最初は一つだけ買う予定でも、料理を完成させるために別の商品が必要だと気づくことがあります。
こうした配置は予定外の購入につながる一方、買い忘れを防ぎ、短時間で必要な商品をそろえやすくする利点もあります。
同じ商品でも周囲によって見え方が変わる
同じ商品でも、どの商品の近くに置かれるかによって印象が変わります。
クラッカーの近くにチーズがあれば、単品の商品ではなく、組み合わせて食べる物として意識されやすくなります。鍋料理の材料が同じ場所に集まっていれば、売り場全体が一つの献立案として見えてきます。
夏に飲料と氷を近づける、冬に鍋つゆと具材をまとめるなど、季節や使う場面に合わせた売り場もあります。商品を単独で見せるより、食べ方や使い道を想像しやすくなります。
家にある在庫や使い切れる量を考えれば、売り場で示された組み合わせの中から必要な物だけを選べます。
レイアウトだけで購入が決まるわけではない
売り場の配置は商品への気づきやすさを変えますが、買い物客の行動を完全に決めるものではありません。
実際の買い物では、価格、品質、好み、家族構成、予算、自宅の在庫、広告など、多くの要素が重なります。
買う物が決まっている人は寄り道が少なくなる
買う商品を細かく決めている人は、必要な売り場へ直接向かいやすくなります。
反対に、献立を決めずに店内を見ながら考える人は、目に入った商品から買う物を決める場面が増えます。同じ売り場を歩いても、全員が同じ商品を買うわけではありません。
売り場の配置は選択肢へ気づくきっかけを作ります。そこから購入へ進むかどうかは、買い物の目的や予算によって変わります。
店舗ごとに適した並び方は異なる
すべてのスーパーが、同じ順番で商品を置いているわけではありません。
店舗の広さ、入口とレジの位置、建物の形、地域でよく売れる商品、来店する人の年齢層、商品の補充方法などによって、適したレイアウトは変わります。
冷蔵や冷凍が必要な商品は、設備の位置にも左右されます。安全な通路幅、避難経路、店員の作業動線も考えなければなりません。
「必需品は必ず一番奥に置かれる」「買い物客は必ず決まった方向へ歩く」といった説明を、すべての店舗へ当てはめることはできません。
海外のスーパーを対象にした研究も多いため、日本のすべての店舗で同じ効果が表れるとは限りません。それでも、商品への気づき方や比較のしやすさを考える材料にはなります。
売り場の仕組みを買い物に生かす方法
レイアウトの特徴を知ると、必要な商品を探しやすくなり、予定外の買い物にも気づきやすくなります。
店へ入る前に買う物を書き出しておけば、必要な商品を優先できます。気になる商品を見つけたときは、値段だけでなく、使う予定や自宅の在庫も確認します。
エンド棚の商品は、通常棚の商品と価格や容量を比べます。レジ前の商品は、会計前に使う場面を思い浮かべると、勢いだけでカゴへ入れる機会を減らせます。
必要な物だけを短時間で買う日もあれば、売り場を見ながら献立を考えたい日もあります。買い物リストを使うか、店内を広く見るかを、その日の目的に応じて変えてもよいでしょう。
季節の売り場や関連商品の陳列から、普段とは違う料理を思いつくこともあります。売り場の特徴を知っておくと、買いすぎを抑えるためにも、新しい商品を探すためにも活用できます。
Q&A
まとめ
スーパーのレイアウトは、商品を収納するためだけに作られているわけではありません。
通路、棚の高さ、エンド棚、レジ前売り場などによって、目にする商品や比較のしやすさが変わります。関連商品が近くにあれば、忘れていた商品や使い方を思い出すこともあります。
配置だけで購入が決まるわけではなく、価格や好み、買い物の目的も影響します。売り場の特徴を知り、価格や必要性を確かめれば、買い物を楽しみながら予定外の出費も抑えやすくなります。
参考資料
- Robert P. Rooderkerk, Donald R. Lehmann「Incorporating Consumer Product Categorizations into Shelf Layout Design」Journal of Marketing Research
- Leanne Young, Magda Rosin, Yannan Jiang, Jacqui Grey, Stefanie Vandevijvere, Wilma Waterlander, Cliona Ni Mhurchu「The Effect of a Shelf Placement Intervention on Sales of Healthier and Less Healthy Breakfast Cereals in Supermarkets: A Co-designed Pilot Study」Social Science & Medicine
- Pei Jie Tan, Armando Corsi, Justin Cohen, Anne Sharp, Larry Lockshin, William Caruso, Svetlana Bogomolova「Assessing the Sales Effectiveness of Differently Located Endcaps in a Supermarket」Journal of Retailing and Consumer Services
- Katrine T. Ejlerskov, Stephen J. Sharp, Martine Stead, Ashley J. Adamson, Martin White, Jean Adams「Supermarket Policies on Less-Healthy Food at Checkouts: Natural Experimental Evaluation Using Interrupted Time Series Analyses of Purchases」PLOS Medicine
