商品を見ていると、「メーカー希望小売価格」「希望小売価格」「参考価格」「オープン価格」など、いろいろな価格表示を見かけます。なかでも希望小売価格は、割引表示と一緒に出てくることが多く、「この価格より安いならお得なのかな」と感じやすい言葉です。
希望小売価格とは、メーカーや製造業者などが、小売店の価格設定の参考として示す価格です。名前の通り「希望」の価格であり、小売店が必ずその価格で売らなければならないという意味ではありません。
ただし、買い物の場面では少し注意も必要です。希望小売価格があるからといって、実際に多くの店でその価格で売られているとは限りません。割引率だけを見るとお得に見えても、実売価格を比べるとそこまで安くない場合もあります。
希望小売価格とはメーカーなどが示す目安の価格
希望小売価格とは、メーカーや製造業者などが、小売店の価格設定の参考として示す価格です。店頭や通販サイトでは「メーカー希望小売価格」と書かれることもあります。
たとえば、ある商品に「メーカー希望小売価格10,000円」と表示されていても、実際に店で9,000円で売られることもあれば、8,000円で売られることもあります。状況によっては、希望小売価格より高い価格で販売される場合もあります。
大事なのは、希望小売価格は「実際の販売価格」ではなく、メーカー側が示す価格の目安だという点です。小売店が実際にいくらで売るかは、仕入れ価格、在庫状況、競合店の価格、セール時期などによって変わります。
また、メーカーが小売店に指定価格を守らせる行為は、再販売価格の拘束として問題になる場合があります。公正取引委員会は、メーカーが指定価格で販売しない小売業者に対し、卸価格を高くしたり出荷を止めたりして指定価格を守らせることを「再販売価格の拘束」と説明しています。これは不公正な取引方法として禁止されており、書籍、雑誌、新聞、音楽CDなどの著作物には例外があるとされています。
つまり、希望小売価格は「店が必ず守る価格」ではなく、「価格の目安として示されるもの」と考えるとわかりやすいです。
定価と希望小売価格は同じではない
希望小売価格と混同されやすい言葉に「定価」があります。どちらも商品にあらかじめ付けられた価格のように見えますが、意味合いは少し違います。
定価は、一般的には「あらかじめ定められた価格」という意味で使われます。書籍や雑誌などでは「定価○○円」と表示されることが多く、価格が固定されている印象を持つ人も多いでしょう。
一方、希望小売価格は、あくまでメーカーなどが示す希望価格です。小売店が実際にいくらで販売するかとは別です。そのため、「希望小売価格10,000円の商品が7,980円で売られている」といっても、必ずしもその店だけが特別に安いとは限りません。
ただ、日常会話では「定価」と「希望小売価格」がゆるく使われることもあります。ネットショップなどで「定価」と書かれていても、実際にはメーカー希望小売価格や参考価格に近い意味で使われている場合があります。
買い物では、表示された言葉だけでなく、その価格が何を指しているのかを見ると判断しやすくなります。
オープン価格とは希望小売価格を示さない方式
家電や電子機器などでよく見るのが「オープン価格」です。これは、メーカーが一般向けに希望小売価格を示さない価格表示のことです。
オープン価格の商品では、メーカー側が「希望小売価格○○円」と一般向けに明示しません。そのため、実際の販売価格は販売店が仕入れ価格や在庫状況、競合店の価格などを見ながら設定します。購入する側は、割引率ではなく、販売店ごとの実売価格そのものを比べることが大切です。
オープン価格が使われる背景には、希望小売価格からの割引率だけが目立ちすぎると、実際以上に安く見える場合があることも関係しています。たとえば、ほとんどの店で同じような価格で売られているのに、「希望小売価格から大幅値引き」と表示されると、その店だけが特別に安いように見えてしまうことがあります。
消費者庁は、二重価格表示について、比較対照価格に用いる価格が実際と異なる場合や、あいまいな表示を行う場合は、不当表示に該当するおそれがあると説明しています。希望小売価格を比較対照価格に使う場合も、その価格が製造業者などによって設定され、あらかじめ公表されているものかどうかが重要になります。
そのため、オープン価格の商品では「何%オフ」よりも、複数の販売店の実売価格を比べるほうが判断しやすくなります。
参考価格は何を根拠にしているかを見る
通販サイトなどでは「参考価格」という表示を見かけることもあります。参考価格は便利な言葉ですが、何を根拠にした価格なのかは表示によって異なります。
メーカー希望小売価格を参考価格としている場合もあれば、過去の販売価格、市場価格、販売サイト側が参考として示す価格などが使われる場合もあります。名前が似ていても、「メーカーが設定した希望小売価格」と「販売サイトが参考として表示している価格」は同じとは限りません。
その参考価格が何を根拠にしているのかを見ると、判断しやすくなります。比較対象の価格が実際と異なっていたり、内容があいまいだったりすると、販売価格が実際より安いと誤認されるおそれがあります。消費者庁の価格表示に関する考え方でも、比較対照価格の内容が不適正な場合、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与えるおそれがあるとされています。
「参考価格より安い」と表示されていても、その参考価格が今の市場でどれくらい意味を持つのかは別の話です。購入前には、現在の実売価格を複数の店で比べるほうが判断しやすくなります。
「希望小売価格より安い」は本当にお得なのか
希望小売価格より安く売られている商品を見ると、お得に感じます。もちろん、実際に安く買える場合もあります。ただし、希望小売価格との差だけで判断するのは避けたほうが無難です。
たとえば、希望小売価格が10,000円の商品が7,000円で売られていたとします。表示だけ見ると「3,000円引き」でお得に見えます。しかし、ほかの店でも普段から7,000円前後で売られているなら、その価格は特別な安売りではなく、実売価格として普通の水準かもしれません。
また、希望小売価格が現在も有効なのか、メーカーが本当に設定している価格なのかも見るポイントになります。設定されていない価格を希望小売価格のように表示したり、実際と異なる価格を比較対象にしたりすると、不当表示に該当するおそれがあります。消費者庁も、比較対照価格の内容が不適正な場合、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与えるおそれがあると説明しています。
買う側としては、「希望小売価格より何%安いか」だけでなく、「今その商品が他店でいくらで売られているか」「型落ちではないか」「送料やポイント還元を含めた実質価格はどうか」まで見ると、失敗しにくくなります。
希望小売価格があると便利な場面もある
希望小売価格には、注意点がある一方で、便利な面もあります。商品の価格帯を知る目安になるからです。
たとえば、まったく知らない商品を見たとき、希望小売価格があると「もともとはどのくらいの価格帯の商品なのか」をつかみやすくなります。高級ラインの商品なのか、手頃な商品なのかを判断する材料になります。
また、贈り物を選ぶときにも、希望小売価格は参考になります。実売価格だけを見ると、セールやポイント還元で大きく変わるため、商品の位置づけがわかりにくい場合があります。希望小売価格を見ることで、メーカーが想定している価格帯をある程度つかめます。
ただし、希望小売価格はあくまで目安です。品質や使いやすさ、保証、口コミ、販売店の信頼性などは別に確認する必要があります。高い希望小売価格があるからといって、必ず自分に合う商品とは限りません。
価格表示を見るときのコツ
希望小売価格を見るときは、まず「メーカーなどが示した目安」であり、「今その商品が普通に売られている価格」とは限らないと考えるとわかりやすくなります。割引率が大きく見えても、実売価格としては平均的な場合があります。
次に、比較対象の価格が何なのかを確認します。「メーカー希望小売価格」「当店通常価格」「参考価格」「過去価格」など、似たような表示でも意味は違います。消費者庁は、過去の販売価格を比較対照価格とする場合でも、その価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえない場合、内容を正確に表示しない限り不当表示に該当するおそれがあると説明しています。
さらに、最終的に大切なのは支払う総額です。本体価格が安くても、送料が高い、保証が短い、ポイント還元の条件が複雑、といった場合があります。希望小売価格との差ではなく、自分が実際に払う金額と条件を見比べることが大切です。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
希望小売価格とは、メーカーなどが示す販売価格の目安です。実際の売価を決めるのは小売店であり、希望小売価格より安く売られることも高く売られることもあります。
この価格は、商品の価格帯を知るうえで便利です。一方で、「希望小売価格から何%オフ」という表示だけを見ると、実際以上にお得だと感じてしまう場合があります。
買い物で見るべきなのは、希望小売価格との差だけではありません。ほかの店の実売価格、送料、保証、ポイント還元、販売店の信頼性を合わせて見ることで、本当に納得できる価格か判断しやすくなります。
参考情報
- 消費者庁「二重価格表示」
- 消費者庁「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」
- 公正取引委員会「不公正な取引方法(再販売価格の拘束)」
- 公正取引委員会「1 メーカーによる小売業者への販売価格の指示」
- 公正取引委員会「第2 消費者取引の適正化」
