日本のカレーは「とろみ」が特徴ですが、これは世界では少し珍しいスタイルです。本場インドのカレーはさらりとしたスープ状で、小麦粉を使う文化はありません。では、なぜ日本のカレーにはとろみがあるのでしょうか? その背景には、明治時代にイギリス経由で伝わった欧風カレー、日本人のご飯文化、家庭料理としての扱いやすさ、そして海軍による普及など複数の要因があります。本記事では、日本式カレーにとろみが生まれた経緯を歴史・文化・調理の側面からわかりやすく解説します。
日本のカレーが“とろみ”を持つ理由とは?
日本に伝わったのは「インド」ではなく「イギリスのカレー」
明治時代、日本に伝わったカレーは本場インド式ではなく イギリスで再構築された欧風カレー でした。
19世紀のイギリスでは、インドのスパイス料理を家庭用に改良する中で、
- 小麦粉+油脂を炒めた roux(ルー/ルウ) を使う
- スープではなくシチュー風のとろみをつける
- パンやライスに合わせやすくする
という文化が生まれていました。
つまり──
日本に伝わった段階ですでに「とろみ」がついていた。
これが“とろみカレーの出発点”です。
日本人のご飯文化に驚くほど相性が良かった
インド式のさらさらカレーは、明治期の日本人にとって扱いにくいものでした。
- ご飯が水っぽくなる
- 味が薄く感じやすい
- 皿で混ぜると一体感が出ない
しかし小麦粉のとろみがある欧風カレーは、
- ご飯に絡みやすい
- 味がまとまりやすい
- 食べやすく、日本人の嗜好に合う
こうして「とろみカレー」は急速に受け入れられます。
海軍で“とろみがより強調され、全国に普及した”
有名な「海軍がとろみをつけた説」。
実は正確には以下の通りです:
✔ 正しい内容
- 船が揺れても食べやすいよう とろみを強めた
- 週一のカレーが海軍で定着
- 退役兵が飲食店で広め、全国普及に貢献
✔ よくある誤解
- 海軍が「とろみ文化を発明した」わけではない
→ とろみは英国式カレーの時点で存在していた
つまり──
海軍は“とろみ文化の発明者”ではなく“最大の普及者”。
インドカレーと日本式カレーの違い
インドのカレーは“とろみ素材”が根本的に違う
インドでは小麦粉を使わず、次の食材で自然なとろみを作ります。
- 玉ねぎのペースト
- トマト
- ヨーグルト
- ナッツ
- ココナッツミルク
「小麦粉で粘度をつける文化」は存在しません。
日本の“カレールー文化”は日本で完成した
読者が混乱しやすいポイントを明確化します。
イギリス
- roux(ルー/ルウ)=技法 は存在
- しかし 固形のカレールー商品 は存在しない
日本
- 固形カレールーを開発
- 家庭料理として爆発的に普及
- “ルー文化”が日本で確立した
「技法としてのルーはヨーロッパ」「商品化されたカレールーは日本」が正確。
とろみは学校給食でも広まり、世代を超えて定着
学校給食のカレーはとろみがしっかりしており、
- 安定して大量調理ができる
- 冷めにくい
- 味が均一に保てる
という理由で採用されました。
これにより 日本式カレーが“世代共通の味”として完全に定着 します。
なぜ小麦粉はカレーに最適なのか?
乳化ととろみでスパイスがまとまる
小麦粉のデンプンが加熱されると、
- 油と水が乳化
- スパイスが全体に均一に広がる
- 辛味がまろやかに
- コクが出る
まさに日本人が好む味に寄せやすい構造です。
家庭料理として扱いやすい
とろみのあるカレーは、
- 分離しにくい
- 作り置きに向く
- 味が安定する
昭和の家庭料理のニーズと完全に合致しました。
現代は“とろみなし”文化も増えている
- グルテンフリー
- スパイスカレーブーム
- 小麦粉不使用の市販ルーの増加
ただし、日本式とろみカレーは依然として“国民食”の座にあります。
今日から話せる!カレー雑学まとめ
- 日本に来た段階でカレーはすでに“とろみ付き”だった
- とろみの理由はシチュー文化+roux(ルー)の技法
- 海軍はとろみ文化を発明したのではなく「普及させた」
- 固形ルー文化は日本が独自に発展させた
- とろみカレーはご飯文化との相性が完璧
Q&A(よくある質問)
まとめ
日本式カレーに小麦粉でとろみがついているのは、インド由来ではなくイギリス式のカレーが明治時代に伝わったことが大きな理由です。ご飯と合わせやすく、家庭で作りやすかったことから、日本の食文化に自然に溶け込みました。今では市販のルウ文化が定着し、日本独自の“カレーライス”が国民食として親しまれています。小麦粉のとろみは味をまとめ、まろやかにする効果があり、日本人の好みに合った進化を遂げたと言えます。
食文化の雑学が気になった方へ
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