火星のオリンポス山はなぜ巨大?太陽系最大級火山の理由

当ページのリンクには広告が含まれています。

火山と聞くと、富士山やハワイの火山のような地球の山を思い浮かべる人が多いかもしれません。けれど、太陽系で最大級の火山として知られる山は、地球ではなく火星にあります。

その名はオリンポス山(Olympus Mons)。火星の西半球にある巨大な火山で、太陽系最大級の火山としてよく知られています。高さは基準の取り方によって約21〜25km前後とされ、エベレストの約2.5〜3倍にもなります。ESAは、オリンポス山が周囲の平原から約22kmそびえる巨大火山だと紹介しています。

ここまで大きくなった背景には、火星ならではの条件があります。地球とは違う重力、地殻の動き、そして長い時間をかけて積み重なった溶岩が、オリンポス山を特別な巨大火山にしました。


目次

オリンポス山はどれくらい大きいのか

オリンポス山は、高さだけでなく横幅も桁外れです。直径は約600km級とされ、山というより、広い大地がゆるやかに盛り上がった巨大な火山地形に近い姿をしています。

写真で見ると、富士山のように鋭くそびえる山には見えません。オリンポス山は楯状火山(たてじょうかざん)と呼ばれるタイプで、粘り気の少ない溶岩が広く流れ、ゆるやかな斜面を作ります。地球でいうと、ハワイの火山に近い形です。

オリンポス山は「高く尖った山」というより、広い範囲がゆっくり盛り上がった巨大火山です。山頂には大きなカルデラがあり、全体像を地上から眺めるより、宇宙探査機の画像で見たほうが規模をつかみやすい地形といえます。


エベレストの約3倍といわれる理由

オリンポス山は「エベレストの約3倍」と紹介されることがあります。エベレストの高さは、2020年に中国とネパールが共同で発表した8,848.86mが広く受け入れられています。

一方、オリンポス山の高さは、基準の取り方によって表記が変わります。地球の山の高さは、ふつう海面を基準にした標高で表されます。けれど火星には海がないため、地球の海抜と同じようには測れません。火星では、重力や地形から決めた基準面を使って高さを表します。

資料によって約21km、約22km、約25km前後といった表記が見られるのは、この基準の違いも関係しています。約22kmならエベレストの約2.5倍、約25km級の表記なら約3倍に近くなります。

「エベレストの約3倍」という表現は、大まかな比較としては使えます。ただし、高さの基準には違いがあるため、約2.5〜3倍ほどの巨大火山と見ると無理がありません。


火星ではなぜ巨大火山が育ちやすかったのか

オリンポス山がここまで大きくなった理由の一つは、火星の地殻の動きにあります。

地球では、プレートが少しずつ動いています。火山の下にマグマの供給源があっても、地表のプレートが移動していくため、同じ場所に溶岩が積み重なり続けるとは限りません。ハワイ諸島のように、火山が列になって並ぶこともあります。

一方、火星では地球のように表面の大きなプレートが動き続けるしくみは見られないと考えられています。そのため、同じ場所に長くマグマが供給され、溶岩が何度も積み重なりやすかったのです。Arizona State UniversityのMars Educationでも、火星にはプレートテクトニクスがなく、オリンポス山は長く続く火山活動の中心で成長したと説明されています。

オリンポス山は、ひとつの噴火で一気にできた山ではありません。長い時間をかけて溶岩が流れ、何層にも重なり、少しずつ巨大化していった火山です。


火星の重力も巨大化を助けた

火星の重力が地球より小さいことも、巨大な山ができやすい理由の一つです。

地球の重力は大きいため、高く積み上がった山や火山には大きな負荷がかかります。斜面が崩れたり、地殻が沈み込んだりしやすくなります。地球上の火山がどこまでも高くならないのは、噴火の規模だけでなく、重力や地殻の強さとも関係しています。

火星は地球より小さく、重力も弱いため、巨大な火山体が比較的保たれやすい環境でした。もちろん、重力だけでオリンポス山ができたわけではありません。地殻の動きが少ないこと、溶岩が広く流れること、長い時間があったことなどが重なって、あの規模になったと考えられます。


オリンポス山は富士山のような形ではない

「火山」と聞くと、円すい形にそびえる富士山のような姿を思い浮かべる人も多いでしょう。けれど、オリンポス山はそのイメージとはかなり違います。

オリンポス山は、傾斜がとてもゆるやかな火山です。遠くから見れば巨大な盛り上がりですが、もし斜面の一部に立ったとしても、山を登っている感覚は薄いかもしれません。あまりにも大きく広いため、地上から全体像をつかむのが難しい火山です。

この特徴は、溶岩の性質と関係します。粘り気の少ない溶岩が長く広く流れると、急な山ではなく、盾を伏せたようななだらかな形になります。だから楯状火山と呼ばれます。

地球にも楯状火山はありますが、オリンポス山はその規模が飛び抜けています。地球の火山をそのまま大きくしたというより、火星ならではの条件がそろったことで生まれた巨大地形です。


タルシス地域には巨大火山が集まっている

火星で巨大なのは、オリンポス山だけではありません。火星にはタルシス地域と呼ばれる巨大な火山地帯があります。オリンポス山は、その近くにある代表的な巨大火山です。

この地域には、アルシア山、パヴォニス山、アスクレウス山といった大きな火山も並んでいます。いずれも火星の火山活動の大きさを感じさせる地形です。

地球では、水の侵食、プレート運動、風化、雨、氷河などによって地形が削られたり変わったりします。火星にも風や氷、過去の水の影響はありますが、地球ほど激しく地形が作り替えられてきたわけではありません。

そのため、古い巨大地形が比較的残りやすかったことも、オリンポス山が今も大きな姿で見える理由の一つです。火星の表面には、惑星の昔の活動を感じさせる地形が多く残っています。


「太陽系最大級」と表現されることが多い理由

オリンポス山は、よく「太陽系最大の火山」と紹介されます。NASAの火星探査画像でも、オリンポス山は太陽系最大の火山として紹介されています。

一方で、「最大」という言葉には、高さ、広さ、体積など、いくつかの見方があります。オリンポス山は高さでも規模でも非常に大きい火山ですが、数字の出し方は資料によって少しずつ異なります。

そのため、「太陽系最大級の火山」と表現すると、高さや直径などの見方の違いにも対応しやすくなります。いずれにしても、オリンポス山が太陽系を代表する巨大火山であることに変わりはありません。


Q&A(よくある疑問)

オリンポス山は本当に太陽系最大の火山ですか?

オリンポス山は、太陽系最大級の火山として広く知られています。NASAもオリンポス山を太陽系最大の火山として紹介しています。ただし、「最大」は高さ、広さ、体積などの見方によって表現が変わるため、最大級の火山として見ると安定します。

オリンポス山はエベレストの何倍ですか?

測り方によって変わりますが、オリンポス山の高さは約21〜25km前後で紹介されます。エベレストは約8.85kmなので、約2.5〜3倍にあたります。「約3倍」は大まかな比較として使えますが、高さの基準が地球と火星で違うため、数値には少し幅があります。

なぜ火星の火山は地球より大きくなれたのですか?

火星では、地球のような活発なプレート運動がほとんどなく、同じ場所に溶岩が積み重なりやすかったと考えられます。また、火星は地球より重力が小さいため、巨大な火山体を保ちやすい環境でした。長い時間をかけて溶岩が重なったことも大きな理由です。

オリンポス山は今も噴火していますか?

現在、オリンポス山で噴火が続いているとは確認されていません。NASAの資料でも、オリンポス山は活動中の火山ではないと説明されています。地球の活火山のように噴煙を上げる姿が観測されているわけではなく、巨大な火山活動が残した地形として見るのが無理のない表現です。


まとめ

火星のオリンポス山は、太陽系最大級の火山として知られる巨大な楯状火山です。高さは基準の取り方によって約21〜25km前後とされ、エベレストの約2.5〜3倍にもなります。

ここまで巨大化した背景には、火星でプレート運動がほとんど起きなかったこと、同じ場所に溶岩が積み重なりやすかったこと、地球より重力が小さいことが関係しています。

オリンポス山は、ただ高いだけの山ではありません。火星という惑星の歴史、火山活動、地球との違いをまとめて感じられる、太陽系でも特に印象的な地形です。


参考情報

  • NASA Science「Olympus Mons Flows」
  • ESA「At the foot of the Red Planet’s giant volcano」
  • USGS「Topography of the shield volcano, Olympus Mons on Mars」
  • Arizona State University Mars Education「Plate tectonics」
  • Arizona State University Mars Education「Volcanoes」
  • Encyclopaedia Britannica「Mount Everest」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

目次