近年、男性の育児休暇は世界的に注目されるテーマになっています。
日本でも制度改正が進み、父親向けの制度は以前より使いやすくなってきました。実際、男性の育児休業取得率は近年上昇しています。
ただ、その一方で、女性との差や取得期間の短さを見ると、まだ十分に定着したとは言いにくい面もあります。
なぜ日本では制度が整いつつあるのに、父親の育休が一気に当たり前になったとは言いにくいのでしょうか。
この記事では、男性の育児休暇取得をめぐる日本と海外の違いを、制度だけでなく、職場文化や社会の受け止め方という視点からわかりやすく整理します。
男性の育児休暇とはどのような制度か
育児休暇の基本的な考え方
育児休暇とは、子どもの誕生や養育のために、一定期間仕事を休むことができる制度です。
多くの国で親の育児参加を支える制度が整えられていますが、父親向けの扱い方や使いやすさは国によって異なります。OECDによると、2024年4月時点で38か国中35か国のOECD加盟国に、父親が利用できる有給の休業制度があります。
本来、育児は家族全体で担うものという考え方が前提にあり、育児休暇も「特別な休み」ではなく、生活を支える制度のひとつとして位置づけられています。
日本における男性育休の位置づけ
日本でも男性が育児休業を取得する制度は以前からあり、近年は見直しも進んでいます。
2022年10月には「産後パパ育休(出生時育児休業)」が始まり、子の出生後8週間以内に、最大4週間まで分割して取得できるようになりました。加えて、企業には制度の個別周知や意向確認も求められるようになっています。
ただし、制度があることと、現場で使いやすいことは別です。
日本では取得率は上がっているものの、職場や業界によって差が大きく、取得期間も短いケースが少なくありません。
日本で男性の育休取得が広がりにくい理由
職場の空気と評価への不安
日本では、長く働くことや、休まず現場を支えることが評価と結びつきやすい職場が今もあります。
そのため、長期間職場を離れることに心理的なハードルを感じる男性は少なくありません。
表向きには「周囲に迷惑がかかるから」と語られることもありますが、実際には、休むことで評価が下がるのではないか、今後の働き方に影響するのではないかという不安が背景にある場合もあります。こうした要因は制度の有無だけでは解消しにくく、職場文化の問題とも重なります。
「休むこと」自体へのハードルが高い
日本では、有給休暇であっても取りにくさを感じる職場が珍しくありません。
数日休むことにも気を遣う環境では、数週間から数か月に及ぶ育児休業に強い心理的ハードルが生まれるのは自然です。
育休が進まない背景には、制度そのもの以前に、「休むこと」への職場文化が影響している面があります。
「母親が取るもの」という意識が残りやすい
育児は主に母親が担うもの、という考え方は変わりつつありますが、完全に消えたわけではありません。
そのため、父親が育休を取ることが「積極的な選択」ではなく、「特別なこと」と見られやすい場面も残っています。
海外では男性の育児休暇はどう扱われているのか
父親の取得が比較的定着している国もある
国によって差はありますが、一部の国では、男性が育児休暇を取ること自体が特別なことではなく、働き方の一部として受け止められています。
OECDによると、父親向け有給休業の長さや設計は国ごとに異なりますが、父親専用枠や父親向け休業が明確に用意されている国も多くあります。平均的な有給の父親休業は約2.4週間で、スペインでは16週間の制度があります。
日本との違いは制度だけではない
海外との違いを制度だけで説明するのは難しいところがあります。
日本でも制度面の見直しは進んでいますが、父親が育休を取ることを特別視しない職場文化や、取得を前提に受け止める空気があるかどうかで、実際の使いやすさは大きく変わります。
つまり、日本との違いは制度だけではなく、文化や職場での受け止め方にもあると見るほうが自然です。OECDも、日本は父親向け制度の長さ自体は手厚い一方で、取得の定着にはなお課題があると整理しています。
日本はまだ「過渡期」にある
取得率は上がっているが、差はまだ大きい
日本の男性育休取得率は、ここ数年でかなり上がっています。
厚労省の令和6年度調査では40.5%で、前年度の30.1%から上昇しました。
ただし、女性の86.6%と比べると差は大きく、取得期間も男性は短い傾向があります。
つまり、日本は「まったく進んでいない」というより、広がりつつあるが、まだ当たり前になりきっていない過渡期と見るほうが実態に近いと言えます。
変化は制度だけではなく、空気からも進む
男性育休がさらに広がるかどうかは、制度改正だけでなく、
「休んでも評価が下がらない」
「父親が育休を取ることを特別視しない」
という職場の空気づくりにも左右されます。
日本と海外の違いは、制度の有無だけでなく、こうした文化的な土台の差にも表れています。
まとめ
男性の育児休暇取得率をめぐる日本と海外の違いは、制度だけではなく、職場文化や社会の受け止め方にも大きく左右されています。
日本では制度改正が進み、男性の取得率も上昇していますが、女性との差や取得期間の短さを見ると、まだ十分に定着したとは言いにくい状況です。
一部の国では、父親が育児休暇を取ることが特別ではなく、働き方の一部として受け止められています。
日本でも前進は見られるものの、今後は制度の整備だけでなく、「休むこと」や「父親が育児に関わること」を自然に受け止める空気が広がるかどうかが、大きな鍵になりそうです。
