スマートフォンや電気自動車、風力発電機など、現代社会の多くの分野で、
現代社会の多くの分野で「レアアース(希土類元素)」は重要な役割を果たしています。
その供給において、中国が非常に大きなシェアを占めていることは広く知られています。
なぜ中国がここまで存在感を持つようになったのでしょうか。
その背景には、単なる資源量以上の構造があります。
レアアースは本当に“レア”なのか
レアアースは、
- スカンジウム
- イットリウム
- ランタノイド15元素
を含む17元素の総称です。
「希少」という名前でも、地殻中に極端に少ないわけではありません。むしろ、鉱石から経済的に取り出しやすい形でまとまって存在しにくく、元素どうしの性質も似ているため、扱いが難しい資源として知られています。
つまり、量そのものが極端に少ないわけではありません。
なぜ“レア”という名称が付いたのか
18〜19世紀、これらの元素はスウェーデンで発見されました。
当時は鉱石中から個別に分離することが極めて困難でした。
- 鉱石中に少量ずつ混在している
- 化学的性質が非常に似ている
- 分離に多段階の工程が必要
このため「珍しい土(rare earth)」と呼ばれるようになりました。
名称は当時の技術的困難さに由来しており、現在もそのまま使われています。
中国のシェアはどの程度か
近年の統計では、中国はレアアースの採掘で世界の6〜7割前後を占めています。
一方で、より重要なのは精製や磁石材料の工程で、中国依存は採掘よりさらに高い水準にあります。分野によっては、永久磁石向けレアアースの精製で中国への依存が非常に高いとされています。
埋蔵量と供給力は別の問題
埋蔵量や資源ポテンシャルは中国だけに集中しているわけではなく、オーストラリア、ブラジル、ロシア、インドなど他国にも分散しています。
しかし鉱石を採掘するだけでは十分ではありません。
高純度に分離・精製し、製品化までつなげる能力が重要です。
精製工程の難しさ
レアアースの分離には「溶媒抽出法」などが用いられます。
分離・精製には多段階の工程が必要になりやすく、薬品の扱いや副産物処理も含めて、高い技術力と設備投資が求められます。
- 強い酸を使用
- 有機溶剤を使用
- 副産物の処理が必要
高度な技術力と設備投資が求められます。
中国ではこうした精製インフラの整備が進められ、
産業集積が形成されました。
環境負荷と産業拡大
1990年代以降、中国では環境負荷の高い工程を国内に集約しつつ、生産規模を拡大しました。
一方で、アメリカやヨーロッパでは、環境対応コストや採算性の問題も重なり、レアアース産業の一部が縮小しました。
こうした経緯の中で、中国のシェアは拡大していきました。
重レアアースの重要性
ジスプロシウムやテルビウムなどの「重レアアース」は、高性能磁石に不可欠です。
電気自動車や風力発電機の性能向上に深く関わっており、
これらは分野によっては中国依存度が特に高いとされています。
2010年以降の動き
2010年前後の中国によるレアアース輸出制限をめぐる問題は、レアアースが戦略的資源として強く意識されるきっかけのひとつになりました。
その後、
- アメリカの鉱山再稼働
- オーストラリアの生産拡大
- EUの重要原材料政策
- リサイクル技術の研究
などが進められています。
なぜすぐに追いつけないのか
レアアース産業は、
- 採掘
- 精製
- 磁石化
- 部品加工
までが連動するサプライチェーン型産業です。
長年かけて形成された産業集積を短期間で再構築することは容易ではありません。
そのため、依存度低減の動きはあるものの、
短期的に急激な構図の変化が起こるとは考えにくい状況です。
まとめ
中国がレアアース分野で高いシェアを持つ背景には、
- 鉱床の存在
- 精製能力の集中
- 環境コストと採算性の問題
- 産業集積の形成
- 重レアアース分野での優位
といった複合要因があります。
レアアースは「極端に希少な元素」というよりも、
高度な分離・精製技術が求められる資源といえます。
資源量だけでなく、供給網と技術基盤の違いが、
現在の構図につながっています。
