街中で今も見かける「有限会社」という名称。
しかし現在、新しく有限会社を設立することはできません。
では、有限会社とはどのような制度だったのか。
なぜ新設できなくなったのか。
そして、今も存在している有限会社はどのような扱いになっているのか。
会社制度の変遷という視点から整理していきます。
有限会社とは何だったのか
有限会社は、1940年(昭和15年)に制定された有限会社法によって設けられた会社形態です。
当時の株式会社は、
・最低資本金が高額
・設立手続きが複雑
・大規模事業向けの制度設計
という性格を持っていました。
そのため、小規模事業者にはハードルが高い制度でした。
そこで創設されたのが有限会社です。
有限会社の主な特徴
・出資者=経営者が基本
・株式を発行しない
・取締役会の設置が不要
・比較的シンプルな内部構造
中小企業や家族経営企業を想定した、実務重視の制度でした。
「有限責任」とは何を意味するのか
有限会社という名称にある「有限」とは、
出資者が負う責任の範囲が“出資額まで”に限られるという意味です。
たとえば会社が負債を抱えても、
原則として出資者個人が無制限に返済義務を負うわけではありません。
この「有限責任」という概念は、株式会社や合同会社にも共通しています。
つまり有限会社は、
“中小企業向けの有限責任会社”として設計された制度だったのです。
なぜ有限会社は新設できなくなったのか
転機は2006年の会社法全面改正です。
この改正により有限会社法は廃止され、
新たな有限会社の設立はできなくなりました。
背景には複数の要因があります。
① 株式会社の設立条件が緩和された
かつて株式会社には最低資本金1,000万円が必要でした。
しかし会社法改正により、
最低資本金制度が撤廃され、1円から設立可能になりました。
さらに、機関設計も柔軟化されました。
これにより、有限会社と株式会社の差は大きく縮まりました。
制度上、有限会社を別枠で維持する合理性が弱まったのです。
② 合同会社が導入された
同時に導入されたのが「合同会社」です。
合同会社はアメリカのLLC制度を参考に設計されました。
特徴は、
・出資者=経営者が原則
・内部ルールを柔軟に設計可能
・利益分配を自由に定められる
・上場を前提としない構造
さらに設立時の法定費用も抑えられています。
・登録免許税:最低6万円
・定款の公証人認証:不要
一方、株式会社は
・登録免許税:最低15万円
・定款認証が必要
という違いがあります。
かつて有限会社を選んでいた層にとって、合同会社は近い性格を持つ選択肢になりました。
③ 制度整理と国際基準への対応
会社法改正は、会社制度の一本化と国際的整合性を目的としていました。
複数の似た制度が並立するよりも、
整理された体系のほうが分かりやすくなります。
有限会社はその整理の中で役割を終えました。
既存の有限会社はどうなったのか
2006年以前に設立された有限会社は、
「特例有限会社」として現在も存続しています。
・新設は不可
・存続は可能
・株式会社へ変更することも可能
という扱いです。
法律上は会社法の適用を受ける「特例有限会社」として存続し、
名称や運営形態は従来のまま維持されています。
現在も有限会社は数多く存在しています。
制度は廃止されましたが、企業そのものが消えたわけではありません。
なぜ株式会社へ自動移行しなかったのか
制度廃止と同時に全社を株式会社へ統一する方法も考えられました。
しかしそれは採用されませんでした。
理由は主に二つです。
中小企業への負担回避
強制移行すれば、
・登記変更
・定款変更
・公告義務対応
・費用負担
が一斉に発生します。
全国の中小企業にとって大きな負担になります。
実務上の支障がなかった
既存の有限会社は長年安定して運営されていました。
制度整理は必要でも、
経営に混乱を生じさせる必要はないと判断されました。
その結果、
「新設不可・既存は存続」
という経過措置が取られました。
有限会社の代わりに合同会社が選ばれる理由
2006年以降、小規模法人を設立する場合、
有限会社という選択肢はなくなりました。
その代わりに広く使われるようになったのが合同会社です。
合同会社は、
・株式を発行しない
・出資者と経営者が一致しやすい
・利益配分を柔軟に定められる
という特徴があります。
規模の大小というより、
・外部株主を広く募らない
・上場を想定しない
・内部完結型経営を行う
といった企業に適しています。
実際、外資系企業の日本法人やグループ会社で採用される例もあります。
三つの会社形態を整理
| 項目 | 特例有限会社 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|---|
| 新設 | 不可 | 可能 | 可能 |
| 株式発行 | なし | なし | あり |
| 上場 | 不可 | 不可 | 可能 |
| 出資と経営の分離 | 原則なし | 原則なし | 可能 |
| 設立法定費用 | — | 約6万円〜 | 約15万円〜 |
歴史の流れで見ると、
1940年:有限会社創設
2006年:会社法改正・有限会社法廃止
現在:特例有限会社として存続
という整理になります。
まとめ
有限会社は、中小企業向けに設けられた会社制度でした。
2006年の会社法改正により、
・株式会社の設立条件が緩和され
・合同会社が導入され
・制度が一本化された
ことで、新設はできなくなりました。
しかし既存の有限会社は特例として存続しています。
有限会社という名称が残っているのは、
制度の歴史と経済構造の変化が重なった結果です。
会社形態の違いを知ることは、
日本の企業制度がどのように整理されてきたのかを知る手がかりにもなります。
