超高純度とは?なぜわずかな不純物まで減らす必要があるのか

当ページのリンクには広告が含まれています。

「超高純度」と聞くと、限りなく100%に近い、とても純粋な物質を思い浮かべるかもしれません。実際、半導体や研究用の材料では99.999%、99.9999%といった、9がいくつも並ぶ純度が登場します。

ただ、「何%以上なら必ず超高純度」という共通の境界線があるわけではありません。同じ純度の数字でも、何が不純物として含まれているかによって意味が変わることもあります。

では、なぜ100万分の1、場合によっては10億分の1という微量成分まで管理するのでしょうか。超高純度の意味と5N・6Nという表し方、半導体などでごく少量の不純物が気にされる理由を見ていきます。

目次

超高純度とは「不純物が極めて少ない状態」

超高純度とは、目的とする物質以外の成分を極めて少なくした状態を表す言葉です。ただし、何%以上を超高純度と呼ぶかは一律には決まっていません。

英語では「Ultra High Purity(超高純度)」と表され、頭文字を取ってUHPと呼ばれることがあります。

実際の製品を見ると、基準が一つではないことが分かります。材料メーカーのGoodfellowでは、99.999%(5N)の銀を「Ultra-high purity」としています。Air Liquideの工業ガスでも、地域や製品によってUHPとして示される純度に違いがあり、99.999%、99.9995%、99.9999%といった例があります。

「超高純度」という名前だけを見て具体的な純度を決めつけるのではなく、製品ごとの純度や不純物の規格を見る必要があるということです。

5N・6Nとは何を表している?

高純度材料では、「5N」「6N」のような表記も使われます。たとえば99.999%は5N、99.9999%は6Nと表されることがあります。Goodfellowでも5Nを99.999%、6Nを99.9999%として使用しています。

表記純度の目安純度表示の残りを単純計算した割合
3N99.9%約1,000 ppm
4N99.99%約100 ppm
5N99.999%約10 ppm
6N99.9999%約1 ppm
7N99.99999%約0.1 ppm

ppmは「100万分のいくつ」を示す単位です。6Nの99.9999%なら、表示された純度の残りを単純計算すると約1 ppm、つまり約100万分の1になります。

99.9%と99.9999%は、どちらも数字だけを見ると100%にかなり近く感じられます。しかし残りの割合は約1,000 ppmと約1 ppmです。わずかに9が増えただけのように見えても、不純物に相当する割合には約1,000倍もの差があります。

また、5Nから6Nのように9が一つ増えると、純度表示の残りは10分の1になります。高純度材料で「9の数」が注目されるのは、こうした違いがあるためです。

同じ99.9999%でも不純物の中身まで同じとは限らない

純度の数字だけでは分からないこともあります。

99.9999%なら、表示値の残りは単純計算で約1 ppmです。しかし、その中に水分が多いのか、酸素や二酸化炭素などが含まれているのかまでは、この数字だけでは判断できません。

Air Liquideの分析用ガス「ALPHAGAZ 2」では、99.9999%(N60)という純度だけでなく、水分や酸素、二酸化炭素などについて個別の上限値が示されています。精密な分析では、全体の純度とともに、用途に関係する不純物がどれほど含まれるかも確認されている例です。

化学材料には別の表示方法もあります。Thermo Fisher Scientificには「99.999%(trace metal basis=微量金属基準)」と表示された製品があり、微量金属を基準とした純度であることが明記されています。

そのため、異なる材料の「99.999%」を数字だけで比べて、まったく同じ状態だと考えることはできません。純度を見るときには、何を対象として測定・保証しているのかも関係してきます。

なぜわずかな不純物まで減らす必要がある?

日常生活では、100万分の1ほどしかない成分を意識する機会はほとんどないでしょう。それでも半導体や精密分析では、ppmよりさらに小さいppb単位の成分が測定対象になることがあります。

ppbは10億分の1です。扱う材料や測定対象によっては、普段なら気にならないほどの量でも無視できない場合があります。

半導体では10 ppbの水分を測る技術も求められる

半導体製造では、高純度の材料やガスが使われています。

産業技術総合研究所(産総研)は2025年、半導体分野で求められる性能として、材料ガス中の水分を10 ppbまで測定できる微量水分計を紹介しています。10 ppbは1億分の1に相当します。

シリコンウェーハの原料でも微量成分は細かく管理されています。SUMCOが公開している製造工程では、金属不純物が数ppb以下になるまで精製された多結晶シリコンを使用しています。また、ウェーハの製造工程は高い清浄度を保ったクリーンルームで行われています。

このような精密製造では、「ほとんど含まれていない」とするだけでなく、どの程度の濃度なのかを測りながら管理する場合があるのです。

不純物を減らしたあと、あえて元素を加えることもある

半導体では、不純物を減らすだけではありません。特定の元素を意図的に加える工程もあります。

SUMCOのシリコン製造では、金属不純物を数ppb以下まで減らした多結晶シリコンに、ホウ素やリンを微量に加える工程があります。これらは最終的な半導体の電気抵抗などを調整するために加えられています。

このように物質の電気的な性質などを変えるため、特定の不純物を加えることを「ドーピング(不純物添加)」といい、加える物質は「ドーパント」と呼ばれます。Applied Materialsも、ドーパントを材料の抵抗率などの性質を変えるため、制御された量で加える不純物と説明しています。

つまり、不純物なら何でも少ないほどよいとは限りません。望まない成分は抑えながら、必要な元素は目的に応じて加える場合があります。

高純度な原料を使うことで、もともと含まれていた不純物の影響を抑えつつ、添加する元素を細かく管理しやすくなるのです。

精密分析では不純物が測定の邪魔になることもある

高純度ガスは研究や分析にも使われています。

ごく微量の物質を調べようとしているとき、測定に使うガス自体に別の成分が含まれていれば、その成分が測定に影響する場合があります。小さな音を聞き分けたいときに周囲の雑音を減らすのと似ています。

Air Liquideでは、ppmからppb領域の分析を想定したALPHAGAZ 2について、99.9999%という純度とともに、水分や酸素など複数の不純物の上限値を設定しています。

超高純度が使われる理由の一つは、単に数字を100%へ近づけることではなく、測定したいもの以外の影響をできるだけ小さくすることにあります。

超高純度は「作ったあと」の扱いも大切

高い純度を得るには、目的物質から不要な成分を取り除く精製が必要です。しかし純度が高くなるほど、精製したあとに別の物質を混入させない扱い方も関わってきます。

たとえば6Nの99.9999%では、表示値の残りを単純計算すると約1 ppmしかありません。非常に少ない不純物を扱う段階では、製造設備や周囲の環境から入る微量成分も無視できない場合があります。

半導体ウェーハのような精密製造では、原料の純度だけでなく加工環境も管理されています。SUMCOではシリコンウェーハの製造をクリーンルームで行い、加工後には洗浄や検査の工程も設けています。

高純度の材料は、精製した時点で完成というわけではありません。求められる純度や清浄度を保ちながら加工・使用することも、その性能を生かすうえで関係してきます。

超高純度なら100%に近いほどよい?

99.9999%という数字を見ると、さらに9を増やして100%へ近づけたほうがよさそうに感じるかもしれません。

しかし、必要になる純度は用途によって異なります。実際、Goodfellowでは5Nの99.999%を超高純度とする材料があり、Air LiquideのガスでもUHPとして扱われる純度は製品や地域によって異なります。

さらに、精密用途では全体の純度だけを見るのではなく、水分や酸素など、問題になりやすい成分へ個別の上限を設ける製品もあります。化学材料には微量金属を基準として99.999%と表示する例もあります。

同じ「高純度」でも、求められる条件は用途ごとに違います。9の数だけを比べるより、何をどこまで減らす必要があるのかを見ることが、超高純度を理解するポイントです。

Q&A

超高純度は99.9999%以上という意味ですか?

一律には決まっていません。99.999%を超高純度とする材料がある一方、工業ガスでは99.9995%や99.9999%をUHPとする製品例もあります。名称だけでは具体的な純度を判断できないため、製品ごとの仕様を見る必要があります。

5Nや6Nとは何ですか?

高純度材料などで使われる表記で、5Nは99.999%、6Nは99.9999%を示します。純度表示の残りを単純計算すると、5Nでは約10 ppm、6Nでは約1 ppmです。

不純物は少ないほどよいのでしょうか?

用途によります。望まない不純物は抑える一方、半導体では電気的な性質を調整するため、ホウ素やリンなどを意図的に加える場合があります。必要な元素までなくせばよいわけではなく、目的に合わせて成分を管理します。

同じ99.9999%なら不純物の状態も同じですか?

同じとは限りません。純度の数字が同じでも、不純物の種類や個別の上限値、純度を示す際の基準が異なる場合があります。そのため、精密な用途では純度だけでなく、不純物ごとの仕様も確認されます。

まとめ

超高純度とは、目的とする物質以外の成分を極めて少なくした状態を表す言葉です。ただし、「何%以上」という共通の境界があるわけではなく、5Nや6Nなどさまざまな純度の材料や製品があります。

半導体や精密分析では、ppmやppbほどの微量成分まで測定・管理される例があります。その一方で、半導体のドーピングのように、目的に応じて特定の元素をあえて加える工程もあります。

超高純度を見るときは、99.999%といった数字だけでなく、どの不純物を、どの程度まで管理しているのかにも注目すると、その意味がより分かりやすくなります。

【参考情報】

  • 産業技術総合研究所「小型ガス中微量水分計」
  • SUMCO「Production Processes(シリコンウェーハの製造工程)」
  • Applied Materials「Technical Glossary」
  • Air Liquide「ALPHAGAZ 2 ヘリウム」
  • Goodfellow「6N Copper Foils (99.9999%) for Precision Research」
  • Thermo Fisher Scientific「Cesium chloride, 99.999%, (trace metal basis)」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

目次