「畳の日」は、1年に1度だけではありません。4月29日と9月24日の年2回あり、どちらも全国畳産業振興会が設定しています。
春と秋の二つの日付には、それぞれ異なる意味があります。4月29日は、畳の代表的な原料であるイグサが緑に育つ季節にちなんだ日。9月24日は、冬の衣替えを前に畳を上げ、大掃除することに目を向けた日です。
さらに4月29日は、かつて「みどりの日」だった日でもあります。現在は「昭和の日」ですが、春の畳の日は今も4月29日のままです。
二つの日付の背景をたどると、畳が単なる床材ではなく、原料となる植物や季節ごとの暮らしと結びついてきたことが見えてきます。
畳の日は4月29日と9月24日の年2回
全国畳産業振興会は、春の4月29日と秋の9月24日を「畳の日」としています。同会は畳産業に関わる全国5団体で構成され、畳の特徴や魅力を伝える活動などを行っている業界団体です。
4月29日は国民の祝日「昭和の日」でもありますが、「畳の日」そのものは全国畳産業振興会が設定した記念日です。同じ日付であっても、昭和の日とは成り立ちが異なります。
二つの日付の意味を比べると、次のようになります。
| 日付 | 畳の日に込められた意味 |
|---|---|
| 4月29日 | 春になり、畳の原料となるイグサの緑が田園に広がる時期にちなんだ日 |
| 9月24日 | 冬の衣替えを前に、畳を上げて大掃除することに目を向けた日 |
春は畳の原料となるイグサ、秋は暮らしの中にある畳の手入れに関係しています。
室内に敷かれた畳だけを見ると、季節とのつながりを意識する機会は少ないかもしれません。しかし、原料となる植物の成長や昔からの住まいの手入れまで視野を広げると、春と秋の二つの日付に込められた意味も分かりやすくなります。
4月29日はイグサの緑にちなんだ春の畳の日
春の畳の日である4月29日は、イグサの緑が田園に広がる季節にちなんで設定されています。
伝統的な畳では、表面を覆う「畳表」にイグサが使われます。畳は、芯になる「畳床」の上に畳表を張り、端に畳縁を縫い付けた構造になっています。
普段目にする畳の色や手触りに大きく関わっているのが、この畳表です。
ただし、現在の畳表がすべてイグサで作られているわけではありません。機械すき和紙やポリプロピレンを使った工業畳表もあり、用途や住環境に合わせて使い分けられています。
素材の選択肢が増えた現在でも、イグサは日本の畳を長く支えてきた代表的な素材です。春の畳の日は、普段は完成した畳として目にしているものを、その原料である植物までさかのぼって考える機会にもなります。
4月29日は昔「みどりの日」だった
4月29日については、祝日の名前が変わった歴史もあります。
現在の4月29日は国民の祝日「昭和の日」ですが、1989年から2006年までは「みどりの日」でした。2007年から4月29日が「昭和の日」となり、「みどりの日」は5月4日に移っています。
ただし、祝日の変更に合わせて畳の日まで移動したわけではありません。
4月29日の祝日名が「昭和の日」に変わった後も、春の「畳の日」は4月29日のままです。 全国畳産業振興会も現在、春の畳の日を4月29日としています。
現在の「みどりの日」は5月4日なので、昔の祝日を覚えている人ほど日付を混同しやすいところです。4月29日は現在も「畳の日」であり、国民の祝日としては「昭和の日」にあたります。
9月24日は冬の衣替え前の大掃除を意識した畳の日
秋の畳の日は9月24日です。
全国畳産業振興会では、冬の衣替えを前に畳を上げ、大掃除することを勧める日として9月24日を設定しています。
現代の住宅では、畳を外したり干したりする光景を見る機会は少なくなりました。しかし、かつては畳を上げて掃除をしたり、畳を干したりしながら手入れする習慣もありました。
全国畳産業振興会が紹介する畳の歴史でも、江戸時代中期以降に畳が庶民へ広がり、畳干しをする家々の姿が見られるようになったとされています。
9月24日の背景には、畳を敷いて使うだけではなく、手を入れながら長く使ってきた暮らしも重なっています。
4月29日が原料となるイグサに目を向けた日なのに対し、9月24日は暮らしの中の畳そのものに目を向けた日です。年に二度あることで、畳を植物から住まいの中まで幅広く捉えられる記念日になっています。
畳は昔から部屋一面に敷かれていたわけではない
畳の日をきっかけに知っておきたいのが、畳そのものの長い歴史です。
「畳」という名前は、奈良時代に成立した『古事記』にも登場します。ただし、当時の畳は現在の和室にあるような床材とは姿が異なり、薦(こも)などの敷物を重ねて使うものだったと考えられています。
さらに奈良時代の畳については、文献だけでなく実物の一部も正倉院に伝わっています。
正倉院には「御床畳残欠(ごしょうのたたみざんけつ)」と呼ばれる畳の一部が残されています。「御床(ごしょう)」という寝台の上に据えられていたものです。
宮内庁正倉院事務所の調査では、表面には現在の畳表にあたるイグサの筵(むしろ)が使われています。芯には薦(こも)を編んだものが重ねられ、裏側には麻布が張られていました。
現在の畳とまったく同じ姿ではありませんが、奈良時代にもイグサを使った表面と厚みのある芯を組み合わせた畳が使われていたことが分かります。
平安時代になると、現在の畳に近い構造が発達していきます。それでも、まだ部屋全体に敷き詰めることが一般的だったわけではありません。
板敷きの部屋に必要な分だけ畳を置き、座る場所や寝る場所として使われていました。また、畳の厚さや縁の柄・色には、使う人の身分も表れていたとされています。
鎌倉時代から室町時代にかけて書院造が生まれると、部屋全体に畳を敷き詰める使い方が発達しました。その後、桃山時代から江戸時代にかけて町人の住まいにも少しずつ広がり、江戸時代中期以降には庶民も畳を使うようになります。
私たちが「和室」と聞いて思い浮かべる、床いっぱいに畳が並んだ部屋は、最初から畳の標準的な姿だったわけではありません。
畳は長い歴史の中で、重ねて使う敷物から座具や寝具へ、さらに部屋そのものを構成する床材へと役割を広げてきました。
まとめ
「畳の日」は、4月29日と9月24日の年2回あります。どちらも全国畳産業振興会が設定している記念日です。
4月29日は、畳の代表的な原料であるイグサが緑に育つ春の時期にちなんだ日。9月24日は、冬の衣替えを前に畳を上げ、大掃除することに目を向けた日です。
また、現在は「昭和の日」である4月29日は、1989年から2006年までは「みどりの日」でした。祝日の名称が変わった後も、春の畳の日は4月29日のままです。
畳には1000年以上にわたる歴史があり、正倉院には奈良時代の畳の一部も伝わっています。かつては必要な場所へ置いて使われ、時代が下るにつれて部屋一面に敷く床材へと発展してきました。
4月29日と9月24日には、それぞれ春のイグサと秋の暮らしに結びついた背景があります。 年に二度の畳の日を知ると、畳が原料となる植物から日本の住まい方まで、長い時間をかけて暮らしに関わってきた存在であることも見えてきます。
参考情報
- 全国畳産業振興会「全国畳産業振興会について」
- 全国畳産業振興会「畳の歴史」
- 全国畳産業振興会「畳のバリエーション」
- 内閣府「各『国民の祝日』について」
- 宮内庁正倉院事務所「正倉院宝物特別調査 筵調査報告」

