目が乾いたときや疲れたとき、何気なく使うことが多い目薬。
その直後に、すぐ何度もまばたきをしたり、ぎゅっと強く目を閉じたりしていないでしょうか。
目薬は、目に入った瞬間から少しずつ涙の流れに乗って移動します。まばたきを繰り返すと、目薬が目頭側へ流れやすくなり、目の表面にとどまる時間が短くなることがあります。
そのため、目薬をさした後は、まばたきを繰り返すより、軽く目を閉じてしばらく待つ方法がよいとされています。これは感覚的な作法ではなく、目の構造や涙の流れと関係しています。
目薬はどのように目に広がるのか
目薬をさすと、液体は目の表面に広がります。
ただし、入った目薬がそのまま全部、目の中にとどまるわけではありません。人の目には、常に涙が分泌され、余分な水分を外へ流す仕組みがあります。
目の表面は、涙によってうるおいを保っています。涙は目の表面に広がったあと、目頭側へ流れ、そこから鼻のほうへ抜けていきます。
目薬もこの涙の流れに影響を受けます。つまり、目薬はさした瞬間から、目の表面に広がりながらも、少しずつ排出される方向へ動いているのです。
目頭にある「涙の出口」
目頭の近くには、涙点と呼ばれる小さな入口があります。
涙はこの涙点から涙の通り道へ入り、鼻涙管と呼ばれる管を通って鼻のほうへ流れていきます。泣いたときに鼻水が出やすくなるのも、涙が鼻のほうへ流れる仕組みと関係しています。
目薬も、涙と一緒にこの流れに乗ることがあります。何度もまばたきをすると、まぶたの動きによって液体が目頭側へ送られやすくなります。
そのため、目薬をさした直後は、できるだけ目の表面にとどめる工夫が役立ちます。
なぜまばたきをしないほうがよいのか
目薬をさした直後は、思わず何度もまばたきをしたくなることがあります。
しかし、まばたきには、目の表面の涙を広げるだけでなく、余分な涙を目頭側へ流す働きもあります。点眼直後にまばたきを繰り返すと、目薬が涙の流れに乗り、目の外や鼻のほうへ移動しやすくなります。
もちろん、一度まばたきしただけで意味がなくなるわけではありません。けれど、何度もぱちぱちとまばたきをすると、目薬を目の表面にとどめにくくなることがあります。
目薬の後に「軽く目を閉じる」とよいとされるのは、目の表面の動きを落ち着かせるためです。
軽く目を閉じると何が変わるのか
目を軽く閉じると、まぶたの動きが少なくなります。
目薬が入った直後に目を閉じることで、目の表面が落ち着いた状態になり、薬液が流れ出る動きを抑えやすくなります。まばたきを繰り返すより、目の表面に目薬がとどまりやすいと考えられています。
ここで大事なのは、強く閉じないことです。
ぎゅっと力を入れて目を閉じると、まぶたや目の周りの筋肉が動き、かえって目薬が押し出されることがあります。目を閉じるときは、眠る前のように自然にまぶたを下ろす程度で十分です。
どれくらい目を閉じればよいのか
目薬をさした後は、1分程度を目安に、静かに目を閉じる方法が紹介されることがあります。
ただし、目薬の種類や使う目的によって、医師や薬剤師から別の指示が出ている場合もあります。処方薬の場合は、説明された使い方を優先してください。
市販の目薬でも、添付文書やパッケージの説明を確認して使うことが大切です。目薬は身近なものですが、目に直接使う医薬品です。基本的な使い方を知っておくと、目薬をより適切に使いやすくなります。
目頭を軽く押さえる方法もある
目薬をさした後、軽く目を閉じたうえで、目頭をそっと押さえる方法もあります。
これは、涙点から目薬が鼻のほうへ流れるのを一時的に抑えるための工夫です。目頭を軽く押さえることで、目薬が目の表面にとどまりやすくなると考えられています。
ただし、強く押す必要はありません。目の周りはデリケートなので、軽く添える程度にします。
また、目の手術後や、医師から目の周囲に触れないよう指示されている場合は、目頭を押さえないほうがよいことがあります。その場合は、目を軽く閉じるだけにして、医師や薬剤師の説明に従ってください。
目薬はなぜ1滴で足りるのか
目薬は、多くさしたほうがよいように感じることがあります。
しかし、目にためられる液体の量には限りがあります。1滴でも、目の表面にとどまれる量を超える場合があり、余った分は外へあふれたり、涙の流れに乗って排出されたりします。
そのため、基本的には1回1滴で十分とされています。必要以上に何滴もさしても、その分だけ働きが増えるとは限りません。
むしろ、あふれた目薬がまぶたや頬に流れたり、別の目薬を使うときに流れやすくなったりすることがあります。医師や薬剤師から別の指示がない限り、指定された量を守って使うのが基本です。
目薬をさす前に気をつけたいこと
目薬を適切に使うには、さした後の目の閉じ方だけでなく、さす前の準備も関係します。
まず、目薬を使う前には手を洗います。手に汚れがついたまま目の近くを触ると、容器や目の周りに汚れが移ることがあります。
また、目薬の容器の先が、まぶた、まつ毛、目の表面に触れないようにします。容器の先が触れると、目薬の中に汚れが入る可能性があります。
目薬をさすときは、下まぶたを軽く引き、目に直接触れないように1滴落とします。あふれた液は、清潔なティッシュなどで軽くふき取るとよいでしょう。
コンタクトレンズを使っている場合は、装用したまま使える目薬と、外してから使う必要がある目薬があります。市販薬でも処方薬でも、添付文書や医師・薬剤師の説明を確認してください。
複数の目薬を使うときは間隔にも注意
2種類以上の目薬を使う場合、すぐ続けてさすと、先に入れた目薬が後から入れた目薬で流れやすくなることがあります。
間隔をどれくらい空けるかは、目薬の種類や医師・薬剤師の指示によって変わります。処方された目薬を複数使っている場合は、使う順番や間隔を確認しておくとよいでしょう。
市販薬と処方薬を併用している場合も、自己判断で使い方を変えず、必要に応じて薬剤師や医療機関に相談してください。
点眼後に強い痛み、腫れ、赤み、かゆみなどが出る場合も、使い続ける前に医師や薬剤師へ相談してください。
「目を閉じる方がよい」は迷信ではない
目薬をさした後に軽く目を閉じる方法は、目の構造や涙の流れを考えると理にかなっています。
目には、涙を外へ流す仕組みがあります。まばたきはその流れを助ける動きでもあります。だからこそ、点眼直後に何度もまばたきするより、しばらく軽く目を閉じるほうが、目薬を目の表面にとどめやすくなります。
ただし、これは「目を閉じれば必ず効き目が大きく変わる」という話ではありません。目薬の種類、症状、使う人の状態によっても異なります。
大切なのは、目薬を正しく入れ、まばたきを繰り返さず、軽く目を閉じるという基本を押さえることです。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
目薬をさした後に軽く目を閉じるとよいとされるのは、目薬を目の表面にとどめやすくするためです。
目には、涙を目頭側から鼻のほうへ流す仕組みがあります。点眼直後に何度もまばたきをすると、目薬がその流れに乗って外へ移動しやすくなります。
強く目を閉じる必要はありません。自然にまぶたを閉じ、1分程度を目安に静かに待つ方法が紹介されることがあります。必要に応じて目頭を軽く押さえる方法もありますが、手術後や医師から指示がある場合は、その指示を優先してください。
また、目薬は基本的に1回1滴で十分とされています。多くさしても目にとどまれる量には限りがあるため、指定された量を守って使うのが基本です。
コンタクトレンズを使っている場合や、複数の目薬を使っている場合は、使い方に注意が必要です。点眼後に強い痛み、腫れ、赤み、かゆみなどが出る場合や、症状が続く場合は、医師や薬剤師に相談してください。
※診断や治療を目的とした内容ではなく、目薬をさした後に軽く目を閉じる理由を、目の構造と涙の流れから一般的に紹介する内容です。
参考情報
- 慶應義塾大学病院 KOMPAS「点眼薬」
- 参天製薬「目薬(点眼液・眼軟膏)の使い方」
- 日本薬剤師会「目薬の使い方/点眼剤の適正使用ハンドブック」
- 愛知県薬剤師会「目薬のさし方」
- 日本眼科用剤協会「くすりと目」
