10月8日はタコ、10日はイカやコウイカ、11日になると伝説のクラーケンまで登場する――。10月には、頭足類を5日間にわたって違う角度から取り上げる少し変わった期間があります。
その名称がInternational Cephalopod Awareness Daysです。略してICADとも呼ばれ、毎年10月8日から12日まで続きます。タコ、オウムガイなどの現生頭足類、イカやコウイカ、伝説上の頭足類、絶滅した仲間へと日ごとにテーマが移ります。
現在の5日間は、最初からこの形で作られたわけではありません。2007年に頭足類の記念日を作ろうという提案がオンラインコミュニティで始まり、その後10月8日を起点とする形へ発展しました。2009年には10月8日から10日までの3日間として告知された記録もあり、後に11日と12日を含む現在の5日間になっています。
国連などの公的機関が制定した国際デーではなく、頭足類を愛する人たちのコミュニティから育っていった記念期間であることもICADの特徴です。
International Cephalopod Awareness Daysとは?
International Cephalopod Awareness Daysは、毎年10月8日から12日までの5日間、頭足類への関心を高めるために設けられた一連の日です。
日本語の正式名称が定められているわけではありません。英語名をそのまま使い、「頭足類について知るための5日間」と捉えると内容が分かりやすくなります。
そもそもcephalopod(頭足類)とは、軟体動物の一群です。現在生きている仲間にはタコ、イカ、コウイカ、オウムガイなどが含まれます。
Smithsonian Oceanでは、8本の腕を持つタコ、8本の腕と2本の触腕を持つイカやコウイカ、外側に殻を持つオウムガイなどが現生の頭足類として紹介されています。「cephalopod」という名称も、ギリシャ語の「頭」と「足」に由来します。
ICADはタコだけを取り上げるものではありません。姿も体のつくりも大きく異なる頭足類というグループ全体へ、数日かけて目を向ける取り組みです。
なぜ5日間になったの?
ICADの始まりをたどると、現在とは違う日付の案までさかのぼります。
頭足類専門のオンラインコミュニティTONMO(The Octopus News Magazine Online)には、2007年3月31日に「international ceph day」というスレッドが立てられた記録があります。最初の投稿で提案されていたのは現在の10月8日ではなく、4月4日でした。
最初は4月4日案だった
2007年の提案をきっかけにコミュニティ内で議論が続き、後に10月8日を起点とする形へ変わっていきました。
ノースカロライナ自然科学博物館が2012年にICADを紹介した記事では、10月8日について、8本の腕を持つタコと、8本の腕に2本の触腕を持つイカやコウイカを意識した「10月の8日」として選ばれたと説明されています。
さらに10月8日だけで終わらず、4日間が追加されて12日まで続くようになったとも説明されています。
「なぜ5日間なのか」という疑問には、10月8日を起点に、頭足類をさらに幅広く取り上げる日が追加されていったという経緯があるわけです。
ただし、現在の5日間が2007年の時点ですでに完成していたわけではありません。
2009年当時のCephalopod Awareness Daysの告知では、
- 10月8日:Octopus Day
- 10月9日:Nautilus Night
- 10月10日:Squid Day
という3日間のイベントとして案内されていました。
2012年の記録では11日のKraken Dayと12日のFossil Dayまで含む5日間になっているため、ICADはコミュニティの中で少しずつ現在の形へ広がっていったことがうかがえます。
TONMOもWorld Octopus Dayについて、自分たちが始めた取り組みだと説明しています。
10月8日から12日まで毎日テーマが変わる
ICADでは、一つの生き物を5日間続けて取り上げるわけではありません。
実在する頭足類だけでなく、伝説や文学に登場する存在、すでに絶滅した仲間まで日替わりで主役になります。
10月8日:Octopus Day
最初の10月8日はOctopus Day(オクトパス・デー)です。
CephsInActionでは、10月8日を8本の腕を持つ種類の日としています。日付の「8」とタコの8本の腕が対応しているため、5日間の中でも特に覚えやすい日です。
Octopus DayはWorld Octopus Dayという名称でも知られています。
ICAD全体の日付が10月8日から始まる背景については、タコの「8」だけでなく、イカやコウイカが持つ8本の腕と2本の触腕という「10」も意識されたと、ノースカロライナ自然科学博物館の紹介では説明されています。
10月9日:Nautilus Night
翌10月9日はNautilus Night(ノーチラス・ナイト)です。
名前にはnautilus(オウムガイ)が入っていますが、オウムガイだけを対象にした日ではありません。CephsInActionでは、比較的知られる機会の少ない現生の頭足類へ目を向ける日としています。
オウムガイはタコやイカとはかなり違った姿をしています。外側に大きな殻を持ち、90本を超える付属肢を備えるなど、同じ頭足類でも体のつくりは大きく異なります。
なお、9日という日付になった理由については、CephsInActionの案内では特に説明されていません。
10月10日:Squid Day / Cuttlefish Day
10月10日はSquid Day / Cuttlefish Day(イカ・コウイカの日)です。「Squittleday」という遊び心のある呼び名も使われています。
タコが8本の腕を持つのに対し、イカやコウイカには8本の腕に加えて、獲物を捕らえるための2本の長い触腕(tentacles)があります。
8本の腕と2本の触腕なので「10」という数字と結び付けたくなりますが、CephsInActionでは10月10日の由来を「合計10本だから」とは説明していません。
生き物の特徴と日付の数字が重なって見えるものの、10日になった直接の理由まで明示されているわけではありません。
10月11日:Kraken Day
10月11日は一転して、実在する生き物だけの話ではありません。
Kraken Day(クラーケン・デー)として、神話、伝説、映画、文学などに登場する空想上の頭足類がテーマになります。
クラーケンは巨大な海の怪物として語られてきた存在です。現実の大型イカ類と結び付けて語られることもありますが、Kraken Dayは生物学的な分類だけを対象にしていません。
人間が頭足類の姿から何を想像し、物語へ取り入れてきたのか。頭足類と文化のつながりまで含まれている点が、ほかの日とは異なります。
10月12日:Fossil Day
最後の10月12日はFossil Day(化石の日)です。
ここでは現在の海に生きる種類ではなく、すでに絶滅した頭足類へ目を向けます。アンモナイトなども、頭足類の長い歴史を知るうえで代表的な存在です。
頭足類の歴史は非常に古く、Smithsonian Oceanでは5億年以上前のカンブリア紀までさかのぼるグループとして説明されています。
初期の頭足類では外殻が大きな役割を持ち、その後の進化の中で外殻を失った仲間や、体内に殻の名残を持つ仲間も現れました。
現生種から始まったICADは、最終日には化石として残る絶滅した仲間まで対象を広げます。
頭足類ファンのオンラインコミュニティから始まった
ICADの成り立ちで特徴的なのは、政府や国際機関ではなく、頭足類を好む人たちのオンラインコミュニティから始まった点です。
ノースカロライナ自然科学博物館の研究ブログでは、ICADについて、公的機関が認定した行事ではなく、2007年にTONMOのメンバーによって始められた取り組みと説明しています。
TONMOは2000年から続く頭足類専門のオンラインコミュニティで、タコ、イカ、コウイカ、オウムガイ、化石など幅広い頭足類について情報交換が行われてきました。
科学だけでなく伝説や文化までテーマに含まれる
ICADにはOctopus DayやSquid Dayだけでなく、Kraken Dayまであります。
さらに最終日は、生きている動物ではなく化石になった頭足類がテーマです。
そのためICADでは、現在の生物だけを扱うのではなく、化石、神話、文学なども含めて頭足類を見ることができます。
生物学だけに限定されないテーマの幅広さは、5日間の内容にもはっきり表れています。
同じ頭足類でも体のつくりは大きく違う
タコ、イカ、コウイカ、オウムガイはすべて頭足類ですが、体のつくりはかなり異なります。
タコは8本の腕を持ち、多くの種類では外側の殻がありません。イカやコウイカには8本の腕と2本の触腕があります。
コウイカには甲(こう)と呼ばれる硬い構造があり、イカの多くにも体内に殻の名残があります。一方、オウムガイは現在も外側に大きな殻を持っています。
さらに過去へ目を向けると、アンモナイトをはじめ、現在は存在しない多様な頭足類が海に暮らしていました。
タコやイカだけを見ると似た仲間という印象を受けますが、外側に殻を持つ種類から殻をほとんど失った種類まで、同じ頭足類の中でも姿には大きな幅があります。
そしてICADにはKraken Dayもあるため、生物としての多様さだけでなく、人間の想像の中に現れた頭足類まで一緒にたどれます。
まとめ
International Cephalopod Awareness Days、略してICADは、毎年10月8日から12日まで続く、頭足類への関心を高めるための5日間です。
10月8日のOctopus Dayから始まり、9日のNautilus Night、10日のSquid Day / Cuttlefish Day、11日のKraken Day、12日のFossil Dayへとテーマが変わります。
始まりは現在の形とは異なり、2007年にTONMOで頭足類の記念日を作ろうという提案が行われた際には4月4日が候補でした。2009年には3日間だった記録もあり、その後、10月8日から12日までの5日間へ広がっていきました。
現在生きているタコやイカ、オウムガイだけでなく、絶滅した仲間や伝説上のクラーケンまで登場するのがICADならではの特徴です。
ICADの5日間をたどると、頭足類の生物としての多様さだけでなく、長い歴史や人間の文化とのつながりまで一度に見ることができます。
参考情報
- CephsInAction「International Cephalopod Awareness Days」
- TONMO(The Octopus News Magazine Online)「TONMO FAQ」
- TONMO(The Octopus News Magazine Online)「It’s World Octopus Day」および「international ceph day」関連記録
- North Carolina Museum of Natural Sciences Research & Collections「Cephalopod Awareness Days October 8-12th: Arm Yourself」
- Smithsonian Ocean「Cephalopods: Octopus, Squid, Cuttlefish, and Nautilus」
