カレンダーで「世界動物の日」という名前を見かけると、国連が定めた国際デーの一つを思い浮かべるかもしれません。実際には国連の国際デーとは別に発展してきた記念日で、毎年10月4日に世界各地で動物について考える機会となっています。
対象になるのは野生動物だけでも、犬や猫などのペットだけでもありません。家畜、働く動物、海に暮らす動物などを含め、あらゆる動物の福祉や人間との関わりに目を向ける日です。
その歴史をたどると、最初の催しは10月4日ではなく、1925年3月24日に開かれていました。現在の日付になるまでには、ハインリヒ・ツィンマーマンという人物の活動と、アッシジの聖フランチェスコの祝日が関係しています。
世界動物の日はすべての動物について考える日
世界動物の日(World Animal Day)は、動物の置かれている状況への関心を高め、福祉の向上につなげるために世界各地で行われている活動です。
公式サイトでは、動物の地位向上と世界各地の福祉水準の改善を目指すことを使命として掲げています。対象は特定の種類に限らず、野生動物、犬や猫など人と暮らす動物(伴侶動物)、農場で飼育される動物、働く動物など幅広く含まれます。
現在はイギリスの動物福祉慈善団体Naturewatch Foundation(ネイチャーウォッチ・ファウンデーション)が、世界動物の日の国際的な運営や普及を担っています。2003年にはWorld Animal Dayのウェブサイトを開設し、2007年には各国で活動を広げるアンバサダー制度を始めました。
現在は世界各地にアンバサダーのネットワークが広がっています。1925年にベルリンで始まった催しは、各地の動物福祉活動を結ぶ機会へと発展してきました。
なぜ世界動物の日は10月4日なの?
10月4日という日付は、アッシジの聖フランチェスコの祝日と結び付いています。
聖フランチェスコは13世紀のキリスト教の聖人で、動物や自然を含む被造物へのまなざしで広く知られています。
世界動物の日を提唱したハインリヒ・ツィンマーマン(Heinrich Zimmermann)は、もともと聖フランチェスコの祝日に合わせて10月4日に催しを開こうと考えていました。
ところが、第1回は予定していた日には開催できませんでした。
1. 最初の世界動物の日は1925年3月24日だった
ツィンマーマンはジャーナリスト、編集者、作家として活動しながら、動物保護にも取り組んでいた人物です。
動物福祉を扱う雑誌『Mensch und Hund(人間と犬)』を発行し、一般の人々へ動物保護について伝えていました。
World Animal Dayが公開している歴史資料によると、最初の世界動物の日が開かれたのは1925年3月24日のベルリンです。
会場となったベルリンのスポーツ宮殿には、5,000人を超える人々が集まったとされています。
ツィンマーマンたちは本来、同年10月4日に開催する予定でした。しかし、大勢を収容できるスポーツ宮殿をその日に確保できなかったため、3月24日に変更されました。
つまり、現在は毎年10月4日に行われている世界動物の日も、最初からこの日付で始まったわけではありません。
2. 10月4日に開催されたのは1929年から
第1回の後もしばらく3月の開催が続きましたが、1929年に初めて当初予定していた10月4日に世界動物の日が開かれました。
10月4日という日付が1931年になって新たに決められたわけではありません。
ツィンマーマンは第1回の段階から聖フランチェスコの祝日に合わせた10月4日の開催を望んでおり、それが数年後に実現したことになります。
3. 1931年5月8日のフィレンツェが国際的な節目になった
さらに大きな節目となったのが1931年です。
World Animal Dayの公式歴史資料では、1931年5月8日、イタリアのフィレンツェで開かれた国際的な動物保護会議で、10月4日を世界動物の日として広く祝うというツィンマーマンの提案が満場一致で受け入れられたとされています。
このため、「世界動物の日は1931年に始まった」と紹介されることもあります。
一方で、同じ歴史資料では最初の開催を1925年のベルリンとしています。
時系列で見ると、
- 1925年……ベルリンで最初の世界動物の日を開催
- 1929年……初めて10月4日に開催
- 1931年……フィレンツェの会議で10月4日の世界動物の日を広く祝う提案が採択
という流れです。
1931年は最初の開催年ではなく、10月4日の世界動物の日が国際的に広がるうえで大きな節目になった年と捉えるのが適切です。
現在の世界動物の日には何をする?
世界動物の日には、全世界で同じ式典を行うわけではありません。
学校で動物福祉について学んだり、保護団体が啓発イベントを開いたり、募金や保護活動への支援につなげたりと、地域や団体によって内容は異なります。
公式サイトでも、学校、地域団体、企業、動物福祉団体、個人など幅広い参加が想定されています。
そのため、「動物をお祝いする日」というだけでは、この日の意味を十分には表せません。
身近な動物との接し方を振り返ることもあれば、飼育環境、野生動物の保護、働く動物の扱いなどについて知ることもあります。地域ごとに動物をめぐる課題が異なるため、行われる活動も一つには限られていません。
世界各地で同じことをする日というより、それぞれの地域で動物との関わりを見直し、福祉について知るきっかけをつくる日と考えると、この記念日の特徴がつかみやすくなります。
2026年のテーマは「動物たちの目を通して世界を見る」
2026年の世界動物の日には、「See the World Through Their Eyes(動物たちの目を通して世界を見る)」というテーマが掲げられています。
2026年3月に発表されたテーマで、人間の視点だけから環境や社会を見るのではなく、動物の立場から人間の活動や暮らしを考えてみることが呼びかけられています。
気候変動や生息環境の変化、人間による土地利用などは、人間だけでなく多くの動物にも影響します。
「同じ環境を動物の側から見たらどう映るのか」という視点を持つことが、2026年のテーマの中心です。
2025年には、1925年の最初の開催から100年を迎えました。1世紀を超えて続く活動ですが、その時代の動物福祉や環境をめぐる課題に応じて、取り上げられるテーマも変化しています。
世界動物の日と世界野生生物の日は別の記念日
名前が似ているため混同しやすいのが、世界野生生物の日(World Wildlife Day)です。
世界動物の日は10月4日で、動物全般の福祉について考える民間発祥の世界的な活動です。国連の公式な「国際デーと週間」の一覧には、世界動物の日は掲載されていません。
一方、世界野生生物の日は3月3日です。
2013年12月に国連総会が制定した国際デーで、世界の野生動植物への理解を深め、その価値や保全について考えることを目的としています。
3月3日が選ばれたのは、1973年3月3日にCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称ワシントン条約)が採択されたことに由来します。
両者の違いは、世界動物の日が「あらゆる動物の福祉」に広く目を向ける10月4日の活動であるのに対し、世界野生生物の日は「野生の動植物」に焦点を当てた3月3日の国連国際デーである点です。
名前は似ていますが、成り立ちも対象も同じではありません。
まとめ
世界動物の日は毎年10月4日に行われ、動物の福祉や人間との関わりについて考える機会となっています。
始まりは1931年ではなく、World Animal Dayの公式歴史資料では、ハインリヒ・ツィンマーマンが1925年3月24日にベルリンで開催した催しが最初とされています。本来は聖フランチェスコの祝日である10月4日に開く予定でしたが、会場の都合から最初は3月になりました。
1929年に初めて10月4日に開催され、1931年5月8日のフィレンツェでの会議を経て国際的な広がりにつながります。
その後も活動は続き、2025年には最初の開催から100年を迎えました。2026年には「See the World Through Their Eyes(動物たちの目を通して世界を見る)」というテーマが掲げられています。
毎年同じ10月4日でも、その背景には「最初は3月だった」という意外な始まりと、100年以上にわたって動物福祉への関心を広げてきた歴史があります。
参考情報
- World Animal Day「About Us」
- World Animal Day / Naturewatch Foundation「The Origin of World Animal Day」
- World Animal Day「Announcing the World Animal Day 2026 Theme」
- World Animal Day「100 Years of World Animal Day: A Global Celebration」
- United Nations「List of International Days and Weeks」
- United Nations「World Wildlife Day | Background」
- Holy See Press Office「Feast of Saint Francis in the Vatican Gardens」
