「ファミコンはレトロゲーム。でもPlayStation 2は? WiiやPlayStation 3までレトロと呼ぶの?」
ゲーム好きの間では、ときどきこんな話題が出ます。
実は、レトロゲームには「発売から○年以上」といった業界共通の統一基準は一般に設けられていません。 辞書でも、過去に発売・流行したコンピューターゲーム機やそのソフトなどを指す言葉とされ、具体的な年数までは決められていません。
一方、『ゲームセンターCX』にはハード発売から20年という番組上の目安があり、RETRO GAME SUMMITでは1996年12月31日までという独自の区切りがあります。さらに「昔のゲーム」と感じるラインは、遊んだ人の世代によっても変わります。
レトロゲームは、発売年だけでは区切りにくい言葉なのです。
レトロゲームはどこから?統一された境界はない
レトロゲームを大まかに表せば、過去に発売・流行したゲーム機やゲームソフトを指す言葉です。
ただし、
ファミコン以前だけがレトロゲーム
という決まりも、
20年たてば必ずレトロゲーム
という共通ルールもありません。
実際には、テレビ番組、イベント、店舗、保存活動、プレイヤー同士の会話などで、それぞれの目的に合わせた範囲が使われています。
ゲームの保存活動でも、保存対象の年代と「レトロゲームの定義」は別です。ゲーム保存協会は1970年代から1990年代までの作品や関連資料を重点的な保存対象としていますが、これは「1990年代までがレトロゲーム」という境界を示すものではありません。
「発売から20年」はゲームセンターCXのルール
レトロゲームの境界として知られている数字の一つが、20年です。
『ゲームセンターCX』では、これまで「ハード発売から20年経過」を挑戦ソフト解禁の目安としてきました。2021年にはPlayStation 2、ニンテンドー ゲームキューブ、ゲームボーイアドバンス向けソフトなどが、このルールに沿って挑戦対象へ加わっています。
ここでの20年は、ゲーム業界全体の公式な定義ではありません。
あくまで番組内で、どの世代のハードを挑戦対象にするかを決めるための基準です。
また、この20年は基本的にハードの発売時期を基準にしています。
たとえばゲーム機本体が発売20年を迎えても、そのハード向けに数年後に発売されたソフトまで同時に発売20年になるわけではありません。
「20年前のハード向けソフト」と「発売から20年以上たったソフト」は、必ずしも同じ範囲ではないということです。
2026年、WiiとPS3も番組の挑戦対象へ
その変化が目立つのが、2006年発売のWiiとPlayStation 3です。
代表的なゲーム機を並べると、発売時期にはこれだけの差があります。
| ゲーム機 | 日本での発売 | 2026年から見た位置 |
|---|---|---|
| ファミリーコンピュータ | 1983年7月15日 | 発売から43年 |
| スーパーファミコン | 1990年11月21日 | 発売から約36年 |
| PlayStation 2 | 2000年3月4日 | 発売から約26年 |
| PlayStation 3 | 2006年11月11日 | 発売20周年を迎える年 |
| Wii | 2006年12月2日 | 発売20周年を迎える年 |
ファミリーコンピュータは1983年7月15日、スーパーファミコンは1990年11月21日に発売されました。PlayStation 2の日本発売日は2000年3月4日です。
PlayStation 3は2006年11月11日、Wiiは同年12月2日に日本で発売されています。そのため2026年8月時点では、両機ともまだ正確な発売20周年当日を迎えていません。
それでも「発売20周年を迎える年」であることから、『ゲームセンターCX』では2026年8月23日の生配信を経て、Wii・PS3向けソフトを今後の挑戦対象として解禁することが決まりました。
これは『ゲームセンターCX』での扱いです。ゲーム業界全体がWiiやPS3を一斉に「レトロゲーム」と定義したわけではありません。
かつての最新機種が、20年ほどたつと番組のレトロゲーム枠へ入る。時代が進むにつれて、対象となるゲーム機も少しずつ増えています。
1996年末を境界にするイベントもある
20年よりも古い年代に線を引く例もあります。
レトロゲームイベント「RETRO GAME SUMMIT」では、原則として1996年12月31日までに発売された家庭用・携帯型ゲーム機、アーケードゲーム、パソコンと、それらの機種向けゲームソフトを対象としています。
公式FAQでも、レトロゲームの定義にはさまざまな見解があるとしたうえで、この独自基準を示しています。
2026年から見ると、1996年末はおよそ30年前です。
現在の基準だけを比べると、
- 『ゲームセンターCX』:ハード発売から約20年
- RETRO GAME SUMMIT:1996年12月31日まで
という違いがあります。
ただし、RETRO GAME SUMMITを「30年ルール」と呼ぶのは正確ではありません。
『ゲームセンターCX』は経過年数によって対象が移っていくルールです。一方、RETRO GAME SUMMITが採用しているのは「1996年12月31日」という固定された区切りです。
同じ「レトロゲーム」を扱っていても、番組とイベントでは線引きが異なります。
世代によって「レトロ」と感じる境界も変わる
レトロゲームをどこから「昔」と感じるかは、ゲーム機の発売年だけでなく遊んだ人の世代によっても変わります。
たとえば1980年代にファミコンを現役で遊んでいた人にとって、2000年発売のPlayStation 2は「ファミコンよりずっと後に登場したゲーム機」という印象が残っているかもしれません。
一方、PS2の発売後に生まれた世代にとっては、生まれたときにはすでに存在していたゲーム機です。さらに後の世代なら、物心がつく前からあるゲーム機になります。
WiiやPS3でも同じことが起こります。
2000年代に子ども時代を過ごした人には思い出深いゲーム機でも、さらに若い世代では「昔のゲーム機」と感じる人もいます。
つまりレトロゲームには、
発売から何年たったかという時間的な古さと、
自分がそのゲームをどの時代に体験したかという感覚
の両方が重なっています。
「PS2がレトロなんて信じられない」という感覚と、「もう発売から四半世紀以上たっている」という事実は、同時に成立します。
「懐かしい」と「レトロ」は完全には同じではない
「懐かしい」と「レトロ」は、似ているようで基準が違います。
「懐かしい」は、自分の経験と結びついた感情です。
10年前のゲームでも、子どものころ夢中で遊んだ作品なら懐かしく感じるでしょう。反対に、40年前のゲームを初めて遊ぶ人には、その作品について個人的な思い出はありません。
一方、「レトロゲーム」は個人の思い出だけではなく、過去に発売されたゲームを示す一般的な分類としても使われます。
そのため、
懐かしいゲーム=必ずレトロゲーム
とは限りません。
実際の会話では、同じゲーム機を見ても「もうレトロ」と感じる人と「まだ新しい」と感じる人がいます。こうした世代差も、レトロゲームの境界について意見が分かれる理由の一つです。
「レトロゲーム」という言葉はどこから生まれた?
「レトロ」という言葉自体は、英語のretrospective(回顧的な)に由来します。日本語では、懐古的であることや昔を感じさせるものを表す言葉として使われています。
一方、「レトロゲーム」という複合語については、はっきりした命名者が知られているわけではありません。
辞書では、過去に発売・流行したコンピューターゲーム機やそのソフトなどを表す言葉として掲載されていますが、命名者や明確な初出年までは示されていません。
一般的な辞書や主要な資料では、「レトロゲーム」という呼び名の特定の命名者や明確な初出年は示されていません。
現時点では、特定の人物や雑誌を「レトロゲームの名付け親」とする定説もありません。
現在では、過去に発売・流行したゲーム機やソフトを指す一般的な呼び名として広く使われています。
「レトロゲーム」と「レトロ風ゲーム」は違う
昔らしい見た目だからといって、その作品自体が古いとは限りません。
現在発売されるゲームにも、
- ドット絵
- 少ない色数
- 昔のゲーム機を思わせる音色
- 1980〜1990年代風の画面表現
などを意図的に取り入れた作品があります。
こうしたゲームは「レトロ風」「レトロスタイル」などと呼ばれますが、新作なら作品そのものは昔のゲームではありません。
古い作品であることと、古いゲームの表現を再現していることは別です。
また、数十年前の作品が現在のゲーム機へ移植・復刻されることもあります。この場合も、遊んでいるハードは新しくても、元になった作品が生まれた時代は昔です。
レトロゲームを考えるときは、見た目だけでなく作品そのものがいつ登場したかも関係してきます。
レトロゲームの境界はこれからも動いていく
2003年に『ゲームセンターCX』が始まったころ、ファミコンは発売から20年を迎えたゲーム機でした。
そこからさらに20年以上がたち、PS2だけでなくWiiやPS3まで番組の挑戦対象へ入る時代になりました。
今は新しいと感じるゲーム機も、数十年後には同じ議論の対象になる可能性があります。
そのときも、「何年たったから自動的にレトロ」と決まるとは限りません。番組やイベントの基準が変わることもあり、プレイヤーの世代も入れ替わっていきます。
レトロゲームは、昭和や平成の特定年代だけを永久に指す言葉ではありません。時間の経過とともに、対象になり得るゲーム機や作品が増えていく呼び名でもあります。
まとめ
レトロゲームには、「発売から○年」という業界共通の統一基準は一般に設けられていません。
『ゲームセンターCX』ではハード発売から20年という番組上の目安が使われ、2026年にはWiiとPS3向けソフトも挑戦対象として解禁されました。一方、RETRO GAME SUMMITでは1996年12月31日までという固定された区切りが使われています。
前者は経過年数によって動く基準、後者は1996年末という固定基準なので、同じ仕組みではありません。
さらに、ファミコン、PS2、Wiiのどれを「昔」と感じるかは世代によって変わります。現役機として遊んだのか、生まれたときからすでに存在していたのかでも印象は違います。
レトロゲームの境界は、経過年数だけで決まるものではありません。使われる場面や時代、そして遊ぶ世代によって変わっていく言葉なのです。
参考情報
- デジタル大辞泉「レトロゲーム」
- フジテレビONE「ゲームセンターCX #325」
- RETRO GAME SUMMIT公式サイト「よくあるご質問」
- 特定非営利活動法人ゲーム保存協会「ゲーム保存方針」
