レッサーパンダはパンダの仲間?名前の由来と体の意外な特徴

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赤褐色の毛とふさふさした長いしっぽ、竹を食べる姿で知られるレッサーパンダ。「パンダ」という名前から、ジャイアントパンダを小さくしたような動物を想像するかもしれません。

ところが両者は、現在の分類では別の科に属しています。しかも、西洋の動物学で先に「パンダ」と呼ばれたのはレッサーパンダのほうでした。それなのに、なぜ「小さいほう」を意味する「lesser」が名前に付いたのでしょうか。

名前の歴史から竹をつかむ前足、木登りに適した体、二本足で立つ行動まで見ていくと、レッサーパンダならではの特徴が見えてきます。

目次

レッサーパンダはジャイアントパンダの仲間なの?

レッサーパンダとジャイアントパンダは、どちらも食肉目に属し、竹をよく食べます。しかし、レッサーパンダはレッサーパンダ科、ジャイアントパンダはクマ科です。同じ「パンダ」という名前を持っていても、分類上は別のグループに属しています。

レッサーパンダの分類は長く議論されてきました。かつては体の特徴などからアライグマやクマとの関係も検討されましたが、現在は独立したレッサーパンダ科に置かれています。現生のレッサーパンダ科では、レッサーパンダ属(Ailurus)だけが残っています。

ただ、この属を1種と見るか2種に分けるかについては議論があります。2020年のゲノム研究では、ヒマラヤ系と中国系を二つの種に分けることが提案され、2種を採用している分類データベースもあります。

一方、2025年には分布域の中間地域の標本も含めた研究から、Ailurus fulgens を一つの種として扱うことを支持する報告も発表されました。現在は1種とする見方と2種に分ける見方があり、分類について研究が続いています。

実はレッサーパンダのほうが先に「パンダ」だった

レッサーパンダは1825年、フランスの動物学者フレデリック・キュヴィエによって科学的に記載され、Ailurus fulgens という学名が付けられました。ジャイアントパンダが西洋の科学界で知られるようになったのは、その後の19世紀後半です。

つまり、西洋の動物学で先に「パンダ」と呼ばれていたのはレッサーパンダでした。

では、先にパンダだったのに、なぜ英語では lesser panda(小さいほうのパンダ) とも呼ばれるのでしょうか。

ジャイアントパンダが知られるようになると、竹を食べることなどレッサーパンダとの共通点から、こちらにも「panda」という名前が使われるようになりました。そして大型の giant panda(大型のパンダ) と区別するため、小型のレッサーパンダを lesser panda と呼ぶようになりました。

ここでの「lesser」は、発見された順番を示す言葉ではありません。動物としての価値や優劣を表すものでもなく、ジャイアントパンダと比べて体の小さいほうを区別する呼び方です。

現在の英語では red panda(赤いパンダ) が一般的な呼び名で、赤褐色の毛色を表しています。lesser panda は、ジャイアントパンダとの大きさを区別するために使われてきた別名です。

現在では白黒のジャイアントパンダを単に「パンダ」と呼ぶ場面が多いため、この順番を知ると名前の印象が逆転するかもしれません。

「パンダ」という言葉はどこから来た?

「panda」という言葉そのものの語源は、現在もはっきり確定していません。

英語ではフランス語を経由し、さらにヒマラヤ周辺の言葉に由来した可能性があるとされています。ネパール周辺で使われていた古い呼び名との関係も紹介されていますが、元になった語の形や意味まで一つに定まっているわけではありません。

「竹を食べるもの」や「竹の足」に関係する言葉だったとする説明もあります。ヒマラヤ周辺の言葉とのつながりは広く紹介されているものの、現在の「panda」へ至った詳しい語源までは分かっていません。

竹が主食なのにレッサーパンダは食肉目

レッサーパンダは食肉目に属していますが、食生活は植物に大きく偏っています。竹が食事の大部分を占め、葉や柔らかな芽を選んで食べます。果実や草、昆虫などを利用し、小さな動物を口にすることもあります。

「食肉目」という名前だけを見ると、肉を中心に食べる動物のように感じます。しかし、食肉目は生物の分類名です。そこに属するすべての動物が肉を主食にしているわけではありません。

レッサーパンダには、草食動物に見られるような複雑な胃ではなく、比較的単純な食肉目型の胃があります。それでも竹を主な食物として利用しており、柔らかな葉や芽を選びながら多くの時間を採食に使います。

竹から得られるエネルギーは限られるため、休息する時間も長くなります。竹を食べる姿だけでなく、よく休んでいることもレッサーパンダの食生活とつながっています。

竹をつかむ「偽の親指」がある

レッサーパンダが竹を食べていると、前足で器用につかんでいるように見えます。

その動きを助けるのが、偽の親指(pseudo-thumb/擬似親指)です。本物の6本目の指ではなく、手首の骨の一部が発達した構造で、竹を押さえるときに使われます。ジャイアントパンダにも、よく似た偽の親指があります。

両者は近い仲間ではありません。それでも竹を多く利用する生活の中で、似た働きを持つ構造を備えています。系統の異なる生物が似た環境や生活へ適応し、似た特徴を持つことは収斂進化(しゅうれんしんか)の例として研究されています。

さらに、絶滅したレッサーパンダ科の仲間 Simocyon batalleri の化石からも、偽の親指に相当する構造が知られています。

化石研究からは、レッサーパンダの系統にこの特徴が竹食より前からあった可能性も示されています。もともとは樹上での移動などに役立ち、現在のレッサーパンダでは竹を押さえる働きにも使われていると考えられています。

長いしっぽや足にも木の上で暮らす工夫がある

レッサーパンダは地上だけで暮らす動物ではなく、木の上を巧みに移動します。長くふさふさしたしっぽは枝の上でバランスを取る助けになり、寒いときには体を丸めて、しっぽで顔や体を覆う姿も見られます。

足の裏まで毛で覆われ、鋭い爪も木登りに役立ちます。樹上は休息する場所になるほか、危険から逃れる際にも利用されます。

木から下りる方法にも特徴があります。レッサーパンダは足首を大きく動かすことができ、後ろ足で幹を捉えながら、頭を下に向けたまま木を下りられます。

動物園で木の上にいるレッサーパンダを見る機会があれば、顔やしっぽだけでなく、幹を移動するときの後ろ足にも注目すると独特な体の使い方に気付けます。

二本足で立つのは何のため?

レッサーパンダが後ろ足で立ち上がり、前足を広げる姿はよく知られています。

この行動は防御と関係することがあります。危険を感じたときには後ろ足で立ち、体を大きく見せながら前足の爪を使える姿勢を取ります。人間から見ると愛らしい立ち姿でも、その場面ではレッサーパンダが警戒している可能性があります。

もっとも、立っている姿がすべて防御行動というわけではありません。飼育下では健康管理などのため、飼育員の合図に応じて立つようトレーニングされる場合もあります。

そのため、「レッサーパンダが立っている=必ず威嚇している」と考えることはできません。どのような場面で立ったのかによって行動の意味も変わります。

野生のレッサーパンダはどこで暮らしている?

レッサーパンダはヒマラヤ周辺から中国南西部にかけての山地に分布し、竹が生える森林を利用しています。木の上で過ごす時間が長く、繁殖期などを除けば単独で行動することが多い動物です。

活動する時間は季節や環境でも変わりますが、明け方や夕方に活発になる傾向があります。

赤褐色の毛も、生息地の中では単純に目立つ色とは限りません。森林では木の幹に赤茶色のコケや白っぽい地衣類が付着することがあり、レッサーパンダの毛色は周囲に溶け込む助けになると考えられています。

においでも情報を伝えている

レッサーパンダは、声だけでなくにおいも使ってほかの個体と情報をやり取りします。

尿や臭腺から出るにおいを使って自分の存在を示し、足裏にもにおいを残すための腺があります。単独で生活する時間が長いレッサーパンダにとって、直接出会わなくても周囲の個体へ情報を残せる方法の一つです。

外見からは分かりにくい足の裏にも、森林で暮らすレッサーパンダの生活を支える特徴があります。

野生のレッサーパンダは絶滅の危機にある

レッサーパンダは絶滅の危機に直面している動物です。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、Ailurus fulgensEndangered(絶滅危惧)に分類されています。

一方、レッサーパンダを2種に分ける分類では、中国系を別種として扱う場合があります。分類研究と保全評価は必ずしも同時に更新されるわけではないため、種の分け方とレッドリスト上の扱いには違いが見られます。

生息地となる森林の減少や劣化、分断、人間活動などは野生のレッサーパンダにとって大きな脅威です。竹への依存度も高いため、動物そのものだけでなく、竹が育つ森林環境が残ることも生存に関わります。

竹をつかむ前足、木を移動する足、バランスを取るしっぽ。特徴的な体のつくりは、山地の森林での暮らしとつながっています。

Q&A

レッサーパンダはクマの仲間ですか?

レッサーパンダはレッサーパンダ科、ジャイアントパンダはクマ科に分類されています。同じ「パンダ」という名前を持っていますが、分類上は別のグループです。

レッサーパンダはアライグマの仲間ですか?

現在はアライグマ科には分類されていません。過去には分類上の位置をめぐる議論がありましたが、現在は独立したレッサーパンダ科に置かれています。

なぜ先にパンダだったのに「レッサー」と呼ばれるのですか?

後から知られたジャイアントパンダと区別する際、体の大きさが呼び分けに使われたためです。大型のものが「giant panda」、小型のレッサーパンダが「lesser panda」と呼ばれるようになりました。ここでの「lesser」は優劣ではなく、体の大きさを区別する表現です。

「red panda」と「lesser panda」は別の動物ですか?

どちらもレッサーパンダを表す英語名です。red panda は赤褐色の毛色に由来する呼び方で、lesser panda はジャイアントパンダとの大きさを区別するために使われてきた呼び方です。

レッサーパンダが立つのは威嚇しているからですか?

危険を感じたとき、防御のために後ろ足で立つことがあります。ただし、飼育下ではトレーニングによって立つこともあるため、立ち姿だけで警戒や威嚇だと決めることはできません。

まとめ

レッサーパンダはジャイアントパンダの小型版ではなく、レッサーパンダ科に属する動物です。そして、西洋の動物学で「パンダ」と呼ばれた歴史はレッサーパンダのほうが先でした。

後からジャイアントパンダにも「パンダ」の名が使われ、体の大きさを区別するために「giant」と「lesser」という呼び分けが生まれました。現在の英語では、赤褐色の毛色を表す red panda が一般的な呼び名です。

竹を主に食べながら食肉目に属し、偽の親指で竹を押さえ、柔軟な足首を使って木を頭から下向きに降りることもできます。名前だけでなく前足、後ろ足、しっぽまで見ると、レッサーパンダの姿が山地の森林での暮らしと深く結びついていることが分かります。

参考情報

  • Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute「Red panda」
  • San Diego Zoo Wildlife Alliance「Red Panda」
  • American Society of Mammalogists, Mammal Diversity Database「Ailuridae」
  • Hu, Y. et al.(2020)“Genomic evidence for two phylogenetic species and long-term population bottlenecks in red pandas”, Science Advances
  • Dueck, L. A. et al.(2025)“Bridging the gap: midrange samples link the mitochondrial phylogeography and conservation of endangered red pandas as one species, Ailurus fulgens”, Mammalian Biology
  • Salesa, M. J. et al.(2006)“Evidence of a false thumb in a fossil carnivore clarifies the evolution of pandas”, Proceedings of the National Academy of Sciences
  • IUCN Red List of Threatened Species「Red Panda(Ailurus fulgens)」
  • Merriam-Webster Dictionary「panda」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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