X(旧Twitter)で注目を集めている投稿を開くと、内容と関係のない短文や絵文字、似たような返信が大量に並んでいることがあります。表示回数を増やす目的で迷惑な投稿を繰り返すとみられるアカウントは、日本で「インプレゾンビ」と呼ばれています。
問題になるのは、返信欄の見づらさだけではありません。必要な情報や利用者同士の会話が埋もれるほか、他人の投稿が繰り返し使われ、古い情報や偽・誤情報が広がる原因にもなります。
一方、認証マークやプロフィールの印象、日本語の書き方だけで相手を断定するのは適切ではありません。実際にどのような投稿を繰り返しているかを見ることが大切です。
インプレゾンビとは表示回数を狙う迷惑投稿の俗称
インプレゾンビの「インプレ」は、インプレッションの略です。Xでは、投稿が利用者の画面に表示された回数を表します。
ただし、表示回数は投稿を見た人数そのものではありません。同じ利用者が複数回見た場合も、複数回として数えられることがあります。投稿者が自分の投稿を見た場合も含まれるため、表示回数が10万回でも、10万人が閲覧したとは限りません。
「インプレゾンビ」はXが定めた公式名称ではなく、利用者の間で使われる俗称です。注目されている投稿へ無関係な返信を付けたり、他人の文章や画像を繰り返し使ったりして、表示回数を増やそうとするアカウントや行動を指します。
「ゾンビ」という部分は、似た投稿やアカウントが次々と現れる様子を連想させる呼び方です。ただし、誰が最初に使い始めたのかは、はっきりしていません。
2024年には、三省堂の「今年の新語」で「インプレ」が3位に選ばれました。掲載された語釈や選評でもインプレゾンビが取り上げられ、表示回数が投稿内容の良し悪しや情報の真偽を裏付けるものではない点にも触れられています。
注目を集める投稿へ無関係な返信を付ける
よく見られるのは、多くの人が閲覧している投稿や、短時間で注目を集めている投稿へ、元の話題と関係の薄い返信を付ける方法です。
ニュースへの返信なのに短いあいさつだけを書く、絵文字を並べる、ほかの利用者の返信をコピーするといった形があります。すでに多くの人が見ている投稿へ返信すれば、自分の投稿も閲覧される可能性が高まるためです。
Xは、大量で一方的な返信、重複した投稿、元の話題と無関係な返信による宣伝などを禁止しています。注目度の高いハッシュタグを利用して会話を操作したり、同一または似た内容を繰り返し投稿したりする行為も禁止例に含まれます。
返信を中心に繰り返すアカウントは「リプライゾンビ」、他人の返信文をコピーする行為は「パクリプ」と呼ばれることもあります。いずれもXの公式用語ではなく、利用者の間で使われている呼び方です。
インプレゾンビは何が問題なのか
問題になるのは投稿数の多さだけではありません。必要な情報や利用者同士の会話が埋もれ、表示された数字から実際の反応を読み取りにくくなることです。
一つひとつは短い返信でも、似た内容が大量に並べば返信欄の使い勝手は下がります。災害や事故など、情報を急いで探したい場面では、目的の投稿を見つけるまでに時間がかかります。
本来の返信や補足情報が見つかりにくくなる
ニュースや話題の投稿に付く返信には、当事者による補足、詳しい人からの説明、元の投稿に含まれる誤りの指摘などが書かれることがあります。
内容と関係のない文章やコピーされた返信が増えると、情報のある投稿が多数の返信に紛れます。投稿者が訂正や追加情報を書いていても、大量の返信に埋もれて気づかれないかもしれません。
Xの返信欄は、常に投稿された順番で並ぶわけではありません。関連性や信頼度、安全性などをもとに順位付けされ、元の投稿者、閲覧者がフォローしているアカウント、X Premium利用者からの返信などが上位に表示される要素になります。
そのため、迷惑な返信が増える問題は、単純に古い返信が下へ流れるというだけではありません。表示順位や返信のまとまり方によっては、有用な補足情報へたどり着きにくくなることもあります。
本来は意見交換や情報共有に使われる返信欄が、表示機会を得るための場所へ変わってしまいます。会話の流れを追いにくくなり、投稿を読む側だけでなく、元の投稿者にも負担がかかります。
古い情報や不確かな情報が繰り返し広がる
表示回数を優先し、内容を十分に確かめないまま投稿するアカウントも見られます。
過去の災害写真を現在の被害として載せる、すでに解決した救助要請をコピーする、別の場所で撮影された映像に新しい説明を付けるといった形です。元の情報が正しくても、日時や場所が抜け落ちた状態で再投稿されれば、受け取られ方は変わります。
政府広報オンラインは、災害時に救助要請や被害情報とともに偽・誤情報も流通し、救命・救助活動を妨げるおそれがあると注意を促しています。表示回数や収入を目的としているとみられる投稿もあるため、情報源や発信日時を確かめ、ほかの媒体でも同じ内容が伝えられているかを見ることが重要です。
ただし、SNS上の偽情報がすべてインプレゾンビによるものとは限りません。人をだます目的で作られた情報のほか、勘違いや確認不足によって広まった誤情報、収益とは関係のない悪質な投稿も含まれます。
インプレゾンビという言葉だけで原因を一つにまとめるのではなく、情報の発信元や内容を個別に確かめる必要があります。
他人の文章や画像が繰り返し使われる
表示回数を得る目的で、注目を集めた投稿、写真、映像、返信文などをコピーする例もあります。
他人の体験談を自分の投稿のように載せれば、誰が最初に発信した情報なのかわかりにくくなります。元の投稿者や撮影場所がわからなくなり、内容を確かめる手がかりも失われます。
災害時には、すでに役目を終えた救助要請が、新しい投稿のように再び広がることもあります。古い要請が拡散され続ければ、現在助けを求めている人の情報が見つかりにくくなるおそれもあります。
スパムやなりすまし、個人情報の不適切な掲載など、Xの規則に反していると思われる投稿は、投稿やプロフィールのメニューから報告できます。
自分が権利を持つ文章、写真、映像などが無断で使われた場合は、著作権者本人または正当な代理人として、著作権に関する申告手続きを利用できます。
通常のスパム報告と著作権侵害の申告は異なる手続きです。また、無断で使われているように見えても、すべての利用が著作権侵害に当たるとは限りません。
数字だけでは実際の反応を判断しにくくなる
大量のアカウントが同じ話題へ機械的に参加すると、実際の意見とは関係なく返信数や表示回数が膨らみます。
返信が多いからといって、大勢の利用者が賛成や反対を表明しているとは限りません。内容と無関係な投稿が集まり、数字だけが大きくなっている可能性もあります。
表示回数も閲覧人数とは異なります。一人の利用者が同じ投稿を複数回見れば、複数回として数えられることがあるため、表示回数だけで話題の広がりや支持の大きさを正確に判断するのは困難です。
Xは、複数のアカウントや反応機能を利用し、いいね、返信、リポスト、再生数、フォローなどの数値を人為的に増やす行為を禁止しています。
インプレゾンビが目立つようになった背景
インプレゾンビという言葉が広がった背景の一つに、Xのクリエイター向け収益配分があります。
一定の条件を満たした利用者は、X上での活動から収益を受け取れます。そのため、自分で多くの人に読まれる投稿を作る代わりに、すでに注目を集めている投稿へ返信し、閲覧される機会を増やそうとする行動が問題視されました。
ただし、インプレゾンビと呼ばれるアカウントが、すべて収益を受け取っているとは限りません。収益化条件を満たすための数字集め、フォロワーの獲得、外部サイトへの誘導など、別の目的が含まれることも考えられます。
注目が集まる話題ほど狙われやすい
ニュース、災害、スポーツ、芸能など、短時間で多くの人が閲覧する投稿には返信も集まります。
元の投稿を十分に読まず、関連しているように見える短文を付けたり、ほかの利用者の返信をコピーしたりすれば、一つひとつ文章を考えるより多くの場所へ投稿できます。
内容が好意的に評価されているかどうかは関係ありません。炎上している投稿、事件や事故を扱う投稿、賛否が分かれている投稿も、多くの人が見ていれば対象になり得ます。
そのため、「人気の投稿」よりも「注目を集める投稿」と表現するほうが、インプレゾンビが返信を付ける対象を正確に表せます。
災害や事故の話題まで対象になると、返信欄の見づらさだけでは済みません。急いで情報を探している人が、古い投稿や無関係な返信を先に目にすることもあります。
表示回数だけで収益が決まるわけではない
Xのクリエイター収益配分は、投稿の表示回数だけで金額が決まる仕組みではありません。
2026年7月13日の確認時点では、参加するために有効な対象サブスクリプションを保有していること、過去3か月で500万回以上のオーガニックインプレッションを獲得していること、認証済みフォロワーが500人以上いること、対象国に所在していることなどの条件があります。
オーガニックインプレッションとは、有料広告やプロモーションによらず得られた表示回数です。Xの公式用語集でも、オーガニックは課金対象の手法を通じて得られたものではない表示や反応を指すと説明されています。
参加資格を満たした後、実際に収益を受け取るには、Stripeの入金アカウントを接続し、本人確認を終える必要があります。収益化するアカウントには、年齢、利用期間、プロフィール、メール認証、2要素認証などに関する共通の基準も設けられています。
収益は、いいねや返信など、投稿に対する確認済みの反応をもとに計算されます。記事、動画、スペース、ライブ放送などの投稿形式や、反応した利用者が加入しているプランなども考慮されます。すべての表示や返信が、同じ価値として計算されるわけではありません。
無関係な返信を付ければ、必ず収益が得られるわけではありません。それでも、表示回数や認証済みフォロワー数が参加条件に含まれていることは、数字を増やそうとする動機の一つになり得ます。
収益化へ参加しているアカウントにもXの規則が適用されます。契約プランにかかわらず、大量・重複・無関係な返信や、反応数を人為的に増やす行為は規則違反となる場合があります。
収益配分の参加条件や計算方法は今後変更される可能性があります。最新の条件はXの公式ヘルプで確認する必要があります。
認証マークや文体だけで断定しない
プロフィールや認証マークだけで、インプレゾンビかどうかを確実に判断するのは困難です。
元の話題と関係のない返信を繰り返す、同じ文章を短時間に大量投稿する、他人の返信をコピーするといった行動は手がかりになります。
ただし、一つ当てはまっただけで相手を断定すると、通常の利用者を誤って非難してしまうおそれがあります。
認証マークの有無だけでは判断できない
Xでは、対象となる有料プランへの加入など、所定の条件を満たしたアカウントに青い認証マークが表示されます。認証マークは、加入後に資格基準を満たしていることが確認されたアカウントへ付与される仕組みです。
認証マークが付いていること自体に問題はありません。また、マークがないアカウントでも、無関係な返信やスパム投稿を繰り返すことはあります。
判断材料になるのは、認証マークよりも実際の投稿内容です。元の話題と関係のない返信、他人の文章のコピー、短時間での大量投稿などが、行動を見る際の手がかりになります。
Xの返信欄では、X Premium利用者からの返信であることも表示順位を決める要素の一つです。そのため、上位に認証マーク付きのアカウントが多く見えることもありますが、上位に表示されたことや認証マークが付いていることだけでは、迷惑投稿を目的としたアカウントとは判断できません。
外国語や不自然な日本語だけを理由にしない
日本語が不自然だからといって、迷惑アカウントとは限りません。日本語を学んでいる人や、翻訳機能を利用して投稿している人もいます。
問題になるのは利用者の国籍や母語ではなく、無関係な返信を大量に送る、他人の投稿を繰り返しコピーする、誤解を招く情報を載せるといった行動です。
日本語の書き方だけでは、利用者の出身地や投稿目的までは判断できません。無関係な返信やコピー投稿など、実際に確認できる行動を見るほうが適切です。
すべてがボットとは限らない
似た返信が続くと、すべてボットによる自動投稿のように見えるかもしれません。ボットとは、設定された内容を自動で投稿するプログラムやアカウントを指す言葉です。
インプレゾンビと呼ばれるアカウントには、自動化されたものだけでなく、人が手作業で返信しているものも考えられます。外から見ただけで、投稿方法まで正確に見分けるのは困難です。
自動投稿か手作業かよりも、無関係な返信やコピー投稿を繰り返しているかを見ることが重要です。
Xも、規則に従わない自動化だけでなく、手動による大量・重複・無関係な投稿や返信を禁止しています。
インプレゾンビを見かけたときの対応
無関係な投稿が並んでいても、すべてに返信して注意する必要はありません。
大量に投稿しているアカウントでは、個別の注意が読まれないこともあります。また、問題を指摘する目的であっても、返信や引用投稿、リポストによって、元の投稿を知らなかった人へ存在が伝わることがあります。
その結果、表示機会を求めているとみられる相手の目的に沿う形になるかもしれません。
一方、一回反応するたびに相手の収益が増えるとは断定できません。収益は確認済みの反応、投稿形式、反応した利用者の契約プランなど複数の要素をもとに計算されており、個別の反応と支払額の関係を外部から正確に把握することはできないためです。
ミュート・ブロック・報告を使い分ける
自分のホーム画面に投稿を表示したくない場合は、ミュートを利用できます。ミュートは、相手をフォロー解除したりブロックしたりせず、そのアカウントの投稿をタイムラインに表示しないようにする機能です。相手へミュートしたことは通知されません。
フォロー中のアカウントをミュートした場合、その人からの返信や自分宛ての投稿が通知欄に表示されることがあります。会話を開くと、ミュートした相手の返信が見える場合もあります。
一方、フォローしていないアカウントをミュートした場合は、そのアカウントからの返信や自分宛ての投稿が通知欄に表示されなくなり、会話内でも返信が表示されません。
ブロックすると、相手からのフォロー、返信、いいね、リポスト、ダイレクトメッセージなどを制限できます。ブロックしたアカウントの投稿は、自分のタイムラインに表示されなくなります。
ただし、自分の投稿を公開している場合、ブロックした相手も投稿自体は閲覧できます。いいね、返信、リポストなどの反応はできません。投稿そのものを見せたくない場合は、アカウントの投稿を非公開にする必要があります。
スパムやなりすましなど、Xの規則に反していると思われる投稿は、投稿やプロフィールのメニューから報告できます。報告しても、必ず投稿の削除やアカウントの制限につながるわけではありません。送られた情報は、Xが規則違反の有無を調べる際の材料になります。
報告機能は、単なる意見の違いではなく、スパム、なりすまし、個人情報の不適切な掲載など、規則違反が疑われる投稿に利用します。
自分の投稿では返信できる範囲を変更できる
自分の投稿に無関係な返信が集まった場合は、返信できる利用者の範囲を変更できます。
Xでは投稿前だけでなく、投稿した後でも「全員」「フォローしているアカウント」「投稿内で指定したアカウント」「認証済みアカウント」などから、返信できる利用者を選べます。
返信を制限しても、許可されていない利用者が、いいねやリポスト、引用投稿などをできなくなるわけではありません。返信欄への参加を減らすための機能であり、投稿への反応をすべて止める機能ではない点には注意が必要です。
自分の投稿に付いた特定の返信を非表示にすることもできます。
ただし、非表示にした返信は完全に削除されるわけではありません。元の投稿に表示される専用のアイコンを通じて、ほかの利用者も非表示になった返信を確認できます。
災害や事件の投稿は拡散前に確かめる
災害や事件に関する投稿では、すぐにリポストせず、発信元、投稿日時、場所を確認します。
画像が過去のものではないか、元の投稿が残っているか、自治体、警察、消防、報道機関なども同じ内容を伝えているかを見ると、誤った情報を広げる危険を減らせます。
投稿の文章だけでなく、画像や映像の内容にも注意が必要です。実際に起きた災害の映像でも、撮影された日時や場所が異なれば、現在の被害を示す情報としては不正確になります。
政府広報オンラインも、情報がどこから、いつ発信されたのかを確認し、ほかの媒体でどのように伝えられているかを確かめるよう案内しています。
Q&A
まとめ
インプレゾンビは、表示回数を求めて無関係な返信やコピー投稿を繰り返すアカウントや行動を表す俗称です。
対象になるのは、好意的な意味で人気がある投稿だけではありません。ニュース、災害、炎上、スポーツなど、多くの人から注目を集めている投稿全般が狙われる可能性があります。
大量の投稿によって本来の返信や補足情報が埋もれ、古い画像や不確かな情報が広がる原因にもなります。表示回数は閲覧人数と同じではなく、返信数が多いからといって、多くの利用者が同じ意見を示しているとも限りません。
認証マーク、日本語の書き方、プロフィールの印象だけで断定せず、実際の投稿内容を確認することが大切です。必要に応じてミュート、ブロック、報告、返信範囲の変更を使い分けると、問題の投稿へ過度に反応せず対処できます。
参考資料
- Xヘルプ「表示回数について」
- Xヘルプ「信頼性」
- Xヘルプ「クリエイター収益配分」
- Xヘルプ「Xにおけるクリエイターの収益化に関する規定」
- Xヘルプ「Xプレミアムに関するよくある質問とサポート」
- Xヘルプ「Xでの会話について」
- Xヘルプ「返信と@ポストについて」
- Xヘルプ「Xでアカウントをミュートする方法」
- Xヘルプ「Xのブロック機能」
- Xヘルプ「Xルールと利用規約への違反を報告する方法」
- Xヘルプ「Xの著作権ポリシー」
- 政府広報オンライン「インターネット上の偽情報や誤情報にご注意!」
- 三省堂「辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2024』選考結果・選評」
