宇宙飛行士の写真を見ると、ヘルメットの前面が金色に光って見えることがあります。白い宇宙服の中で、金色のバイザーは特に目立つ部分です。
あの金色は、飾りや高級感を出すためのものではありません。宇宙空間や月面のような環境では、太陽の光がとても強く、目や顔を守る工夫が必要になります。
宇宙服のヘルメットが金色に見えるのは、外側のサンバイザーに特殊な金のコーティングが使われているためです。金色のバイザーは、まぶしさを抑え、宇宙飛行士が作業しやすい視界を保つための大切な部品です。
金色に見えるのはヘルメット全体ではなくバイザー
宇宙服のヘルメット全体が金でできているわけではありません。金色に見えるのは、主にヘルメットの前に下ろす外側のバイザーです。
宇宙服のヘルメットには、透明な部分だけでなく、太陽光を抑えるためのバイザーや、横から入る光を減らす日よけのような部品があります。NASAは、サンバイザーには特別な金のコーティングがあり、宇宙飛行士のサングラスのように働くと説明しています。
地上でサングラスをかけると、まぶしさがやわらぎます。宇宙服の金色のバイザーも、それに近い役割を持っています。ただし、宇宙で使うものなので、ただ色を濃くしているだけではありません。
宇宙空間では、空気による光の散乱が少なく、太陽光が直接届きます。地球上の昼間のように空全体が明るく見えるのではなく、真っ黒な背景の中に強い光源があるような環境になります。その中で作業するには、視界を確保しながら強い光を抑える仕組みが必要です。
金は太陽の強い光をやわらげるために使われる
宇宙服のバイザーに金が使われる理由は、太陽光から目を守るためです。
金色のサンバイザーと日よけは、太陽の強い光から宇宙飛行士を守りながら、視界を確保するために使われています。金色のバイザーは「見えなくするため」ではなく、「強い光を抑えながら見えるようにするため」の部品です。
太陽光には、私たちが目で見える光だけでなく、目には見えない成分も含まれます。宇宙服のバイザーは、まぶしさを抑えながら、太陽から届く強い光の影響をやわらげるために作られています。
金色に見えるからといって、分厚い金の板が入っているわけではありません。使われているのは薄いコーティングです。薄い層でも、光の性質を調整する役割を持たせることができます。
宇宙ではまぶしさの逃げ場が少ない
地球では、空気や雲、建物、地面などが光を散らします。日なたと日陰の差はありますが、周囲にも光が回り込みます。
一方で宇宙空間では、太陽が当たる部分と影の部分の差が大きくなります。強い光がある一方で、周囲は暗く見えることがあります。月面でも、空は青くならず黒く見えます。
このような環境では、太陽の方向を見たときのまぶしさが作業の妨げになります。宇宙飛行士は、船外活動中に装置を確認したり、工具を扱ったり、足元や周囲を見たりしなければなりません。視界が悪いと、作業のしづらさにもつながります。
そのため、ヘルメットのバイザーには、光を減らす役割と、視界を保つ役割の両方が求められます。暗くしすぎれば見えにくくなり、明るさを通しすぎればまぶしくなります。宇宙服のバイザーは、その間を調整するために欠かせない部品のひとつです。
バイザーは目だけでなく作業を守る道具でもある
宇宙服のバイザーというと、目を守るものという印象が強いかもしれません。もちろんそれは大きな役割です。
ただ、宇宙飛行士にとって「よく見えること」は、作業そのものを守ることにもつながります。船外活動では、手元の部品、足場、ケーブル、機器の表示などを確認する必要があります。太陽光が強すぎたり、反射がまぶしすぎたりすると、細かい作業がしにくくなります。
可動式のサンバイザーやサンシェードは、光の向きや作業の状況に合わせて使われます。金色に見える部分が常に下りているわけではなく、透明な視界と光を抑える機能を使い分けることで、作業しやすい状態を作っています。
金色のバイザーは「目を守るシールド」であると同時に、「宇宙で作業するための視界を作る道具」でもあります。写真で見ると見た目の印象が強いですが、実際には作業を支える実用的な部品です。
宇宙機器にも金色の素材が使われることがある
金は、アクセサリーや装飾品のイメージが強い金属です。そのため、宇宙服のバイザーが金色に見えると、特別な演出のように感じるかもしれません。
けれど、宇宙服で金が使われる理由は、見た目よりも光や熱への性質にあります。宇宙機器にも、金色に見える断熱材やコーティングが使われることがあります。人工衛星や探査機の写真で、金色のフィルムのような素材を見たことがある人もいるでしょう。
金は安定した性質を持つ金属として知られていますが、ここでは主に光を扱うための薄いコーティングとして使われています。宇宙服のバイザーでも、必要な場所に薄く使い、太陽光から目を守るための機能を持たせています。
「金色だから高価そう」という印象だけで見ると、少し不思議に感じるかもしれません。実際には、宇宙の厳しい光を扱うために選ばれた素材です。
アポロ時代のバイザーにも金色の部品があった
金色の宇宙服バイザーと聞くと、月面に立つアポロ宇宙飛行士の写真を思い浮かべる人も多いでしょう。
アポロ計画で使われた月面用のバイザーにも、金色の光学コーティングが使われていました。アポロの月面船外活動用バイザーは、熱を調整するための部品や、金の光学コーティングを持つ部品などで構成されていました。
アポロの写真でバイザーが金色に見えるのは、月面の強い太陽光に対応するための実用的な装備だったからです。月には地球のような厚い大気がなく、昼間の太陽光は強く届きます。
また、アポロの宇宙服では、横からの光を抑えるためのサンシェードも使われていました。金色の正面バイザーだけでなく、ヘルメットまわり全体で光を調整していたと見ると、宇宙服のデザインが機能を優先して作られていたことが分かります。
透明なままではだめなのか
ヘルメットが透明なら、視界は広くなります。では、なぜ透明なヘルメットだけではなく、金色のバイザーが必要なのでしょうか。
理由は、透明なだけでは太陽光を十分に抑えられないからです。宇宙では、太陽光を直接受ける場面があります。透明な窓だけでは、まぶしさや強い光への対策が足りないことがあります。
また、宇宙飛行士は常に同じ方向を見ているわけではありません。作業中に姿勢が変わったり、太陽の方向が視界に入ったり、機器の反射を見たりすることもあります。状況に応じて、バイザーや日よけを使い分ける必要があります。
透明な視界と、太陽光を抑える機能。その両方を成立させるために、宇宙服のヘルメットには複数の保護部品が組み合わされています。
金色のバイザーは「宇宙のサングラス」
宇宙服の金色のバイザーは、「宇宙のサングラス」に近い役割を持っています。
地上のサングラスは、まぶしさを抑えて目を守ります。宇宙服のバイザーも、太陽の強い光をやわらげ、宇宙飛行士の目と視界を守ります。
ただし、宇宙用のバイザーは、普通のサングラスよりもずっと厳しい環境で使われます。真空、強い太陽光、温度差、反射、船外活動中の作業性など、考えなければならない条件が多いからです。
写真で見る金色の輝きは、見た目のかっこよさだけではありません。宇宙飛行士が外で作業するために必要な、光を調整する仕組みの表れです。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
宇宙服のヘルメットが金色に見えるのは、ヘルメット全体が金でできているからではありません。外側のサンバイザーに、薄い金のコーティングが使われているためです。
この金色のバイザーは、宇宙飛行士の目を太陽の強い光から守り、まぶしさを抑えながら作業に必要な視界を確保する役割を持っています。透明な視界だけでは足りない場面があるため、宇宙服のヘルメットにはバイザーや日よけが組み合わされています。
写真では未来的でかっこよく見える金色のヘルメットですが、その正体は宇宙で安全に見るための工夫です。宇宙服のバイザーは、見た目以上に、過酷な環境で作業するための大切な装備なのです。
参考情報
- NASA「Spacewalk Spacesuit Basics」
- NASA Spinoff「Gold Coating」
- Smithsonian National Air and Space Museum「Gold Visor, Apollo, Extravehicular」
- Smithsonian National Air and Space Museum「Visor, Extravehicular, Apollo, A7-L, Apollo 11, Armstrong Flown」
