人口はどれくらい変化しているのか、物価は上がっているのか、どんな働き方が増えているのか。私たちは普段、さまざまな統計を通して社会の姿を知っています。
そんな統計の役割や大切さについて考えるために設けられているのが、「統計の日」です。
毎年10月18日ですが、日付の由来は現代のデータ社会ではなく、明治時代までさかのぼります。きっかけとなったのは、1870年に政府が作成を命じた「府県物産表」でした。
統計の日は何のための日?
統計の日は、統計への関心と理解を深め、統計調査への協力を広げることを目的とした日本の記念日です。
1973年(昭和48年)7月3日の閣議了解によって、毎年10月18日を統計の日とすることが決まりました。国民の祝日ではありませんが、総務省をはじめ各府省や地方公共団体などが、統計の普及や啓発に取り組む機会になっています。
統計というと、数字が大量に並んだ表やグラフを思い浮かべるかもしれません。しかし、統計は数字を集めること自体が目的ではありません。
人口、雇用、物価、家計、産業、暮らし方などを一定の方法で調べることで、「社会で何が起きているのか」を数字から捉えやすくします。その結果は、国や地方自治体の政策だけでなく、企業の判断や研究などにも利用されています。
一方、正確な統計を作るには、調査対象となった人や事業所から回答を得る必要があります。そのため統計の日には、統計を利用する側だけでなく、統計調査への理解や協力も重要なテーマになっています。
もちろん、回答を集める側にも情報を適切に扱う責任があります。国の統計調査では、統計法に基づいて調査関係者に守秘義務が課され、回答内容が法律で認められた目的以外に利用されないよう仕組みが設けられています。
統計の日は、数字の便利さを知るだけでなく、信頼できる統計が多くの人の回答によって支えられていることにも目を向ける日といえます。
2026年度の標語は「今をデータに、未来をカタチに。」
総務省では、統計の日を広く知ってもらうため、毎年度ポスターなどに使用する標語を募集しています。
2026年度は13,173作品の応募があり、特選として選ばれた標語は、
「今をデータに、未来をカタチに。」
でした。
特選作品は統計の日のポスターをはじめ、統計の普及や啓発に関する広報に活用されます。
明治時代には各地の生産状況を知るために作られた統計が、現在では人口、消費、雇用、物価、生活時間など幅広い分野を知るために使われています。
「今をデータに、未来をカタチに。」という言葉からも、現在の状況をデータで捉え、その情報をこれからに生かすという統計の役割が伝わります。
なぜ統計の日は10月18日なの?
10月18日という日付の由来は、明治3年(1870年)9月24日に出された太政官布告にあります。
当時の政府は、各地でどのようなものが、どのくらい生産されているのかを把握するため、各府県に「府県物産表」の作成を命じました。
この布告が公布された明治3年9月24日は、当時使われていた暦の日付です。現在の太陽暦へ換算すると10月18日に当たることから、後に統計の日の日付として選ばれました。
由来になった「府県物産表」とは?
府県物産表は、各府県の農産物や海産物、林産物、鉱業生産物などについて、その生産状況を調べた統計です。
総務省統計局では、日本で最初の近代的な生産統計ともいわれるものとして紹介されています。
明治政府にとって、国内でどのような産業が行われ、何がどれだけ作られているのかを把握することは、近代国家を築いていくうえで重要でした。
現在の感覚では、人口を詳しく調べる国勢調査が「統計の日」の由来のようにも思えます。しかし実際には、明治初期の生産統計に関する布告の日付が由来です。
また、1870年に「統計の日」が始まったわけではありません。1870年は10月18日という日付の由来になった年で、全国的な記念日として統計の日が設けられたのは約100年後の1973年でした。
統計の日が制定されたのは1973年
統計の日制定の動きが具体化したのは、1970年代に入ってからです。
総務省統計局の資料によると、1972年に福島県で開かれた第23回全国統計大会で、統計の日を設けることを求める決議が行われました。その後、当時の統計審議会からの建議や関係機関との調整を経て、1973年7月3日の閣議了解につながります。
時系列で見ると、
1870年:府県物産表の作成を命じる太政官布告
→1972年:全国統計大会で「統計の日」の制定を求める動き
→1973年:閣議了解で10月18日を「統計の日」に制定
という流れです。
ただし、「統計の日」という呼び名そのものが1973年に初めて登場したわけではありません。
総務省統計局によると、戦前には和歌山県が1935年以降、三重県統計協会が1937年以降、5月10日を「統計の日」としていた時期がありました。
こちらの5月10日は、1916年に大隈重信内閣の「統計の進歩改善に関する件」という内閣訓令が出された日に由来します。
現在の10月18日とは別の由来を持つ先行例です。統計の普及を目的とした記念日を設けようとする考えは、全国共通の統計の日が制定される以前にも存在していました。
身近な暮らしにも統計は使われている
統計の日は行政関係者だけのための日ではありません。公的統計は、普段目にするニュースや社会の仕組みにも深く関係しています。
たとえば、日本の人口や世帯の状況を詳しく調べる国勢調査、就業者や失業者の状況を調べる労働力調査、家庭の支出を調べる家計調査、物価の動きを示す消費者物価指数などがあります。
「人口が減った」「物価が上がった」「完全失業率が○%だった」といったニュースの背景にも、公的な統計調査があります。
2026年には、仕事や家事、余暇などにどれくらい時間を使っているかを調べる社会生活基本調査も実施されます。
この調査は1976年から5年ごとに行われており、2026年で開始50周年、第11回を迎えます。
こうした数字を長期間にわたって比べると、「人口構成がどう変わったのか」「働き方や暮らし方がどのように変化したのか」といった社会の変化も見えてきます。
統計の数字を見るときは、その数値だけでなく、誰を対象に、いつ、どのような方法で調べたのかも手がかりになります。同じ「平均」や「割合」でも、調査対象や期間が異なれば、示している内容も変わることがあるためです。
こうした背景まで見ることで、ニュースなどに登場する数字が、どのような社会の姿を表しているのかも理解しやすくなります。
統計の日は、統計を作る仕組みだけでなく、私たちが数字をどのように読み取るかについても考えるきっかけになります。
「世界統計の日」は10月18日ではない
名前がよく似た記念日に、国連の世界統計の日(World Statistics Day)があります。
日本の「統計の日」は毎年10月18日ですが、世界統計の日は10月20日です。
第1回の世界統計の日は2010年10月20日に実施されました。その後、国連総会は2015年の決議で、5年ごとの10月20日に世界統計の日を実施することを決めています。
2015年、2020年、2025年と続いており、次回は2030年10月20日の予定です。
つまり、
日本の統計の日:毎年10月18日
世界統計の日:5年ごとの10月20日
で、名前は似ていますが別の記念日です。
日本の統計の日は1973年に制定されているため、国連の世界統計の日よりも長い歴史があります。
まとめ
統計の日は、統計への関心と理解を深め、統計調査への協力を広げるために設けられた日本の記念日です。
10月18日という日付は、1870年に「府県物産表」の作成を命じる太政官布告が出された日を、現在の太陽暦へ換算した日に由来します。
全国的な記念日として制定されたのは1973年ですが、それ以前にも和歌山県や三重県統計協会が別の日付を「統計の日」としていた時期がありました。
人口や物価、雇用、家計、生活時間など、現代の社会を知るうえで統計はさまざまな場面に使われています。正確な統計には調査への協力が必要である一方、回答情報を守るための仕組みも設けられています。
また、日本の統計の日は毎年10月18日ですが、国連の「世界統計の日」は5年ごとの10月20日に行われます。
普段ニュースで何気なく目にする数字の背景には、調査に回答する人や、データを集めて公表する仕組みがあります。10月18日は、統計がどのように作られ、社会を見るためにどう使われているのかへ目を向ける日でもあります。
参考情報
- 総務省統計局「統計Today No.13 皆さんは『統計の日』を御存知ですか?」
- 総務省統計局「統計百五十年史 上巻」
- 総務省統計局「統計調査ニュース No.476(2026年7月)」
- 総務省統計局「令和8年社会生活基本調査の概要」
- 総務省統計局「令和7年国勢調査に関するQ&A 個人情報の保護」
- 国際連合「World Statistics Day」
