世界的な研究成果を出せば、自動的にノーベル賞の候補になるのでしょうか。
実際のノーベル賞には、「○歳以上」「博士号が必要」といった一律の受賞条件があるわけではありません。候補になるには、推薦資格を持つ人から正式に推薦される必要があります。その後、各部門の選考機関が候補者の功績を審査します。自分から応募することはできません。
さらに、国籍は選考で考慮しない、個人による共同受賞は最大3人まで、死後の新たな授与は原則行わないなど、独特のルールがあります。
では、ノーベル賞の受賞条件や候補者になるための決まりは、どのようになっているのでしょうか。
ノーベル賞とは?
ノーベル賞は、スウェーデンの発明家・実業家アルフレッド・ノーベルの遺言をもとに設けられた賞です。ノーベルは自身の財産を基金として残し、その収益から、人類に大きな利益をもたらした人々へ賞を贈ることを望みました。
遺言で設けられたのは、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和の5部門です。ノーベル賞は1901年から授与されています。
現在は経済学の賞もノーベル賞と並んで扱われていますが、こちらはノーベル本人の遺言で設けられたものではありません。
こうしたノーベル賞には、年齢や学歴などを一律に定めた受賞条件があるわけではありません。
ノーベル賞に一律の受賞条件があるわけではない
ノーベル賞には、資格試験のような「この条件をすべて満たせば受賞資格が得られる」という共通の一覧はありません。
ノーベル財団の規程では、賞の対象となる功績や推薦、選考、共同受賞などについて決まりが設けられています。一方、全賞共通の最低年齢や博士号取得といった条件はありません。
年齢や博士号などの共通条件はない
「○歳以上でなければならない」「博士号を取得していること」「大学教授であること」といった全賞共通の受賞条件はありません。
分かりやすい例が、2014年のノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイです。受賞時は17歳で、ノーベル賞史上最年少の受賞者となりました。
「教授でなければ受賞できない」「博士号がなければ候補になれない」といった共通資格が設定されているわけではありません。
その年に賞が授与されないこともある
ノーベル賞は、毎年必ず誰かを選ばなければならない賞でもありません。
ノーベル財団の規程では、検討された功績の中にノーベルの遺言が想定するほど重要なものがない場合、その年の賞金を翌年まで留保できます。それでも授与されなければ、賞金は財団の基金へ戻されます。
実際に、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞には授与されなかった年があります。特に第一次世界大戦や第二次世界大戦の時期には、未授与となった例が多くありました。
候補者がいれば必ずその年に授与される仕組みではありません。
受賞候補になるには正式な「推薦」が必要
どれほど有名な研究者や作家でも、本人が「ノーベル賞を受賞したい」と申し込むことはできません。
ノーベル財団の規程では、推薦資格を持つ人から推薦される必要があり、自薦は審査対象になりません。 誰が推薦できるのかは賞によって異なります。
たとえば物理学賞では、スウェーデン王立科学アカデミーの会員、過去のノーベル物理学賞受賞者、一定の大学や研究機関の教授などが推薦資格者に含まれます。
平和賞では推薦者の範囲が異なり、主権国家の国会議員、政府の閣僚、現職国家元首、一定分野の大学教授、過去のノーベル平和賞受賞者など、定められた資格を持つ人が推薦できます。平和賞の場合、推薦資格があればノルウェー・ノーベル委員会から招待を受けていなくても推薦できます。
「ノーベル賞にノミネートされた」だけでは有力候補とは限らない
「ノーベル賞にノミネートされた」と聞くと、選考機関から高く評価された人物のように感じるかもしれません。
しかし、推薦されたこと自体は、選考機関から高い評価を受けたことを意味しません。
候補者や推薦者、選考に関する調査や意見などの情報は、少なくとも50年間は非公開とされています。その年の選考中に、誰がどの段階まで検討されたのかを公式資料から確かめることはできません。
推薦資格を持つ人が名前を挙げたことと、選考機関が受賞にふさわしいと評価することは別です。
国籍は関係ない?人数や死後受賞にも決まりがある
ノーベル賞には、功績の内容だけでなく、誰にどのように賞を授与するかについても決まりがあります。
国籍は選考条件にしない
アルフレッド・ノーベルは遺言の中で、受賞者を選ぶ際に国籍を考慮しないよう求めました。
特定の国の国籍を持っていることや、スウェーデンと関係があることが受賞条件になっているわけではありません。ノーベルの遺言では、スカンディナビア人であるかどうかにかかわらず、ふさわしい人物へ賞を贈るという考えが示されています。
個人による共同受賞は最大3人まで
現代の科学研究では、数百人、数千人が参加する大規模な共同研究もあります。それでもノーベル財団の規程では、一つの賞金を3人を超える個人へ分けることはできません。
一つの功績を2人または3人で成し遂げた場合は共同受賞できますが、4人以上の個人へ一つの賞を分ける仕組みにはなっていません。
平和賞では個人だけでなく団体も受賞できます。国際赤十字委員会や国連難民高等弁務官事務所なども受賞しており、「最大3人」というルールを単純に「どんな場合でも受賞者は3人まで」と捉えると正確ではありません。
原則として死後には受賞できない
現在の規程では、受賞者として発表される前に亡くなった人物へ、新たにノーベル賞を授与することは原則としてできません。 一方、受賞者として発表された後に亡くなった場合は、賞を授与できます。
1974年に現在につながる規程が導入される以前には、1931年文学賞のエリク・アクセル・カールフェルトと、1961年平和賞のダグ・ハマーショルドが死後に受賞しました。
2011年には、死後受賞のルールに関わる珍しいケースもありました。生理学・医学賞の受賞者の一人ラルフ・スタインマンは、発表の3日前に亡くなっていました。しかし、選考側はその事実を知らないまま受賞者として決定していました。
ノーベル財団が規程との関係を検討した結果、この決定は取り消されず、スタインマンの受賞は維持されました。
以前の成果でもノーベル賞の対象になり得る
アルフレッド・ノーベルの遺言には、「その前年」に人類へ大きな利益をもたらした人へ賞を贈るという趣旨の記述があります。文字通り受け取れば、直近の成果だけが対象のようにも見えます。
しかしノーベル財団の規程では、以前の成果でも、その重要性が最近になって明らかになった場合には対象になり得るとされています。
特に科学分野では、新しい発見が本当に正しいのか、どれほど重要なのかが分かるまで長い時間がかかる場合があります。ほかの研究者による検証が進み、その成果をもとに新たな研究や技術が生まれてから、最初の発見の価値がはっきりすることもあります。
そのため、成果を発表してから長い年月を経てノーベル賞を受賞する例もあります。
「発見した翌年に受賞できなければ、それ以降は対象にならない」という制度ではありません。
経済学賞はノーベルの遺言にはなかった
現在は「ノーベル経済学賞」という呼び方が広く知られていますが、アルフレッド・ノーベルが遺言で設けた5部門に経済学は含まれていません。
正式には「アルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞」と呼ばれ、スウェーデンの中央銀行であるスウェーデン国立銀行が1968年に創設しました。最初の授与は1969年です。
選考は物理学賞や化学賞と同じく、スウェーデン王立科学アカデミーが担当します。
一般には「ノーベル経済学賞」と呼ばれ、ノーベル賞と並んで紹介されています。ただし、ノーベル本人の遺言によって設けられたノーベル賞そのものではありません。
名称や選考の仕組みがノーベル賞と深く結び付いている一方で、物理学賞や文学賞などとは成立の経緯が異なります。
まとめ
ノーベル賞には、「博士号を持っている」「一定の年齢に達している」といった全賞共通の受賞条件があるわけではありません。
候補になるには、推薦資格を持つ人から正式に推薦され、その後、それぞれの選考機関によって功績の内容が審査されます。
自薦はできず、国籍は選考条件になりません。個人による共同受賞は最大3人までで、受賞発表前に亡くなった人物への新たな授与も原則として行われません。
以前の成果でも、その重要性が後になって明らかになれば対象になり得ます。また、候補者がいても、その年に必ず賞が授与されるわけではありません。
ノーベル賞には一律の「受賞資格」があるのではなく、推薦と選考を経て、各分野で重要と評価された功績へ賞が贈られます。
参考情報
- NobelPrize.org「Statutes of the Nobel Foundation(ノーベル財団規程)」
- NobelPrize.org「Full text of Alfred Nobel’s will(アルフレッド・ノーベルの遺言全文)」
- NobelPrize.org「Nomination and selection of physics laureates」
- NobelPrize.org「Nomination and selection of Nobel Peace Prize laureates」
- NobelPrize.org「Nobel Prize facts」
- NobelPrize.org「Nomination and selection of economic sciences laureates」

