Mole Dayとは?10月23日と6時02分に隠された数字の意味

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10月23日のカレンダーと「午前6時02分」。一見すると何の関係もなさそうな日付と時刻ですが、化学の世界では、この組み合わせに特別な意味があります。

米国を中心に親しまれている「Mole Day(モル・デー)」は、化学で使われる「mol(モル)」とアボガドロ定数にちなんだ日です。ポイントになる数字は、6.02 × 10²³。

なぜ「6.02」が時刻になり、「10²³」が10月23日になるのでしょうか。Mole Dayの由来をたどると、途方もなく大きな化学の数字を、日付や時刻に結び付けて覚えやすくする工夫が見えてきます。

目次

Mole Dayはなぜ10月23日の6時02分?

Mole Dayを理解する鍵になるのが、化学で使われるアボガドロ定数です。

現在のアボガドロ定数は、正確には

6.02214076 × 10²³ mol⁻¹

と定められています。

Mole Dayでは、これを簡略化した6.02 × 10²³という表記に注目します。この数字の「6.02」を6時02分、「10²³」を10月23日に対応させているのです。

そのため、National Mole Day Foundation(全米モル・デー財団)では、10月23日の午前6時02分から午後6時02分までをMole Dayとしています。

6.02 × 10²³ → 6:02・10/23

という数字の対応が、日付と時刻の由来になっています。

ここには、Mole Dayが広まった米国の日付表記も関係しています。米国では一般に10月23日を「10/23」のように月・日の順で表すため、「10²³」と「10/23」が視覚的にも対応します。

教科書の中では覚えにくく感じる「6.02 × 10²³」も、「10月23日の6時02分」と結び付けることで印象に残りやすくなります。

そもそもMole Dayの「mole」とは?

Mole Dayの「mole」は、化学で物質量を表すSI単位、mol(モル)を意味しています。

原子や分子は非常に小さいため、私たちが実際に扱える量の物質には膨大な数の粒子が含まれています。それらを「1個、2個、3個……」と一つずつ数えるのは現実的ではありません。

そこで化学では、非常に多くの粒子をまとめて扱うためにモルを使います。

現在の定義では、1 molは正確に6.02214076 × 10²³個の要素粒子を含む物質量です。ここでいう要素粒子とは、数える対象として指定した原子や分子、イオン、電子などを指します。

たとえば、

  • 水分子1 molなら、水分子が6.02214076 × 10²³個
  • 酸素分子1 molなら、酸素分子が6.02214076 × 10²³個
  • ナトリウムイオン1 molなら、ナトリウムイオンが6.02214076 × 10²³個

となります。

物質の種類が変わっても、1 molに含まれる要素粒子の数は同じです。ただし、それぞれの粒子の質量は異なるため、1 molあたりの質量まで同じになるわけではありません。

身近なものにたとえるなら、「12個=1ダース」とまとめて数える考え方に少し似ています。1ダースが12個なのに対して、1 molは約6,020垓個という途方もない数です。

これほど巨大なまとまりが必要なのは、それだけ原子や分子が小さいためです。モルを使えば、目には見えない原子や分子の数と、実験で実際に量ることのできる物質の量を結び付けて扱えます。

ちなみに「アボガドロ定数」という名前から、イタリアの科学者アメデオ・アボガドロ本人が「6.02 × 10²³」という数値を求めたように思えるかもしれません。しかし、アボガドロ本人が現在知られているアボガドロ定数の値を測定したわけではありません。

アボガドロは19世紀初頭、同じ温度・圧力のもとでは、同じ体積の気体には同じ数の分子が含まれるという考えを示したことで知られています。「アボガドロ定数」という名称は、アボガドロの功績をたたえて付けられたものです。

アボガドロ定数が「正確な値」になったのはなぜ?

現在のアボガドロ定数が6.02214076 × 10²³ mol⁻¹という正確な値になっている背景には、国際単位系(SI)の定義変更があります。

現在のモルの定義は2018年の国際度量衡総会で採択され、2019年5月20日に発効しました。

それ以前は、0.012 kg(12 g)の炭素12に含まれる原子と同じ数の要素粒子を含む物質量としてモルが定義されていました。

現在は特定の物質の質量を基準にするのではなく、アボガドロ定数の数値そのものを固定することでモルが定義されています。そのため、現在の6.02214076 × 10²³ mol⁻¹は測定するたびに変化する値ではなく、SIの定義によって固定された値です。

一方、Mole Dayでは日付や時刻との対応が伝わりやすい「6.02 × 10²³」が使われています。厳密な値とMole Dayで使われる数字には、このような違いがあります。

Mole Dayはどのように始まった?

Mole Dayの発想につながった出来事は、1980年代初頭までさかのぼります。

National Mole Day Foundationによると、当時、米国の科学教育誌「The Science Teacher(ザ・サイエンス・ティーチャー)」に、高校の化学教師がMole Dayを祝うアイデアと、その理由を紹介する記事が掲載されました。

その後、1991年5月15日にNational Mole Day Foundation(NMDF)が設立されます。財団を設立したのは、当時ウィスコンシン州プレーリー・デュ・シーンで化学を教えていたMaurice Oehlerです。

高校の化学教師などからMole Dayに関するアイデアが集められ、それらを共有する活動も行われるようになりました。1992年にはウィスコンシン州の非営利法人となり、教師や学生を中心にMole Dayが知られるようになっていきます。

現在につながるMole Dayは、こうした化学教育の現場から広がってきた取り組みです。

Mole Dayは化学を楽しみながら学ぶ日

National Mole Day Foundationが活動の目的として掲げていることの一つが、特に学生に化学への関心を持ってもらうことです。そのためMole Dayでは、モルや化学を題材として、学校や教師によるさまざまな教育活動が行われてきました。

「6.02 × 10²³」という巨大な数字も、教科書の中だけで見ると覚えにくいものです。しかし「10月23日の6時02分」という形に置き換えれば、数字を日付や時刻と関連付けて覚えられます。

「なぜ10月23日なのか」「なぜ6時02分なのか」という疑問が、アボガドロ定数を知る入口になり、そこからモルの意味にもつながります。記念日という身近な切り口から、普段は馴染みの薄い化学用語に触れられる仕組みになっています。

Mole Dayの活動は米国内だけに限られているわけではありません。National Mole Day Foundationの沿革では、米国外にも活動が広がり、カナダやオーストラリアなどでも祝われてきたことが紹介されています。

ただし、Mole Dayは国際機関が制定した「国際デー」や米国の公的な祝日ではありません。化学教育に携わる教師や学生などを中心に広がってきた取り組みです。

毎年テーマも設けられている

National Mole Day Foundationでは、Mole Dayを盛り上げるため、年ごとにテーマを設けています。

テーマには、モルを意味する「mole」を利用した言葉遊びなどが取り入れられることもあります。

化学というと「難しい計算」や「複雑な化学式」を思い浮かべる人もいるでしょう。Mole Dayでは教科書で学ぶだけでなく、記念日や言葉遊びなども化学に興味を持つ入口として使われてきました。

「mole」にはモグラという意味もある

Mole Dayには、英語ならではの言葉遊びもあります。

英語の「mole」には、化学のモルのほかに、動物のモグラという意味があります。そのためMole Dayでは、モグラをモチーフとして利用するなど、「mole」という単語の二重の意味を生かした表現も見られます。

Mole Dayの名称で中心になっているのは、物質量の単位であるモルです。一方で、専門用語だけでは堅くなりがちなテーマにモグラという親しみやすいモチーフを組み合わせることで、言葉と化学を関連付けて覚えることもできます。

「6.02 × 10²³」を日付や時刻に置き換えるだけでなく、「mole」という単語そのものにも遊びの要素があるのです。

日本の「化学の日」とMole Dayの関係は?

日本にも、Mole Dayと同じ10月23日に「化学の日」があります。

日本の化学の日も、アボガドロ定数の約「6.02 × 10²³」にちなんで10月23日とされています。ただし、日本の「化学の日」と米国で発展したMole Dayは、同じ名称・制度の記念日ではありません。

Mole Dayはその名のとおりモルを強く意識した化学教育のイベントで、「6.02」を6時02分、「10²³」を10月23日に対応させているところが特徴です。

一方、日本では2013年に日本化学会、日本化学工業協会、化学工学会、新化学技術推進協会の4団体によって10月23日が「化学の日」と制定されました。

さらに、10月23日を含む月曜日から日曜日までの1週間を「化学週間」として、化学や化学産業について広く知ってもらうための取り組みが行われています。

どちらにも共通しているのは、普段は意識することの少ない6.02 × 10²³という化学の数字を、10月23日という日付に結び付けていることです。

Mole Dayではモルや化学教育、日本の「化学の日」では化学や化学産業を広く知ってもらう取り組みが展開されており、同じ数字を由来としながら、それぞれの背景には違いがあります。

まとめ

Mole Day(モル・デー)は、アボガドロ定数にちなんで10月23日に行われる、化学に親しむための日です。

由来となる数字は、アボガドロ定数を簡略化した6.02 × 10²³です。

この数字の

6.02 → 6時02分
10²³ → 10月23日

という対応から、National Mole Day Foundationでは10月23日の午前6時02分から午後6時02分までをMole Dayとしています。米国では10月23日を「10/23」と表記するため、「10²³」と日付との対応も見て取れます。

Mole Dayにつながるアイデアは1980年代初頭に紹介され、1991年にはNational Mole Day Foundationが設立されました。Mole Dayは、モルやアボガドロ定数をきっかけに化学へ関心を持ってもらう教育活動として広がってきました。

現在の1 molは、正確に6.02214076 × 10²³個の要素粒子を含む物質量です。そしてアボガドロ定数は、6.02214076 × 10²³ mol⁻¹と正確に定められています。

10月23日になったら時計の「6時02分」と「6.02 × 10²³」を見比べてみると、Mole Dayという名前と日付の由来を思い出しやすいかもしれません。

参考情報

  • National Mole Day Foundation「What is Mole Day?」
  • National Mole Day Foundation「History of the Foundation」
  • BIPM(国際度量衡局)「SI base unit: mole」
  • IUPAC(国際純正・応用化学連合)Gold Book「Avogadro constant」
  • BIPM(国際度量衡局)「Resolution 1 of the 26th CGPM (2018)」
  • 一般社団法人 日本化学工業協会「化学の日、化学週間の制定」

この記事を書いた人

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