スポーツドリンクを見ていると、「アイソトニック」「ハイポトニック」という言葉を目にすることがあります。
どちらも水分や電解質を含む飲料に使われる言葉ですが、大きな違いは体液と比べたときの浸透圧の位置関係です。
スポーツ飲料では、アイソトニック(isotonic:等張)は体液に近い側、ハイポトニック(hypotonic:低張)は体液より低い側として説明されます。さらに、体液より高い側にはハイパートニック(hypertonic:高張)があります。
ただし、ハイポトニックだから常に水分吸収が速いとは限りません。糖質や電解質の量・種類、飲む量なども関係します。
アイソトニックとハイポトニックは何が違う?
スポーツ飲料で使われる3つの言葉を並べると、違いが分かりやすくなります。
| 種類 | 体液との関係 | 飲料の傾向 |
|---|---|---|
| ハイポトニック | 体液より低い側 | 糖質を比較的抑えたスポーツ飲料など |
| アイソトニック | 体液に近い側 | 糖質や電解質を含む一般的なスポーツ飲料など |
| ハイパートニック | 体液より高い側 | 糖質など溶けている成分が多い飲料にみられる |
「アイソトニック」の「iso-」には「同じ」という意味があります。
「ハイポトニック」の「hypo-」は「下」「低い」といった意味です。一方、「ハイパートニック」の「hyper-」は高い側を表します。
3つは、体液を基準に低い・近い・高いという関係にあります。
そもそも浸透圧とは?
水に糖や塩類などが溶けると、その粒子の量によって水の移動のしやすさが変わります。
濃さの異なる液体が半透膜(はんとうまく)を隔てて存在する場合、水は一般に、溶けている物質の濃度が低い側から高い側へ移動します。半透膜とは、水は通しやすくても溶けている物質は通しにくい膜のことです。
この「浸透」と関係する圧力が浸透圧です。
スポーツドリンクには、水のほかに糖質やナトリウムなどが溶けています。そのため、何がどれだけ含まれているかによって飲料の浸透圧も変わります。
分類には糖質だけでなく、ナトリウムなど溶けている成分全体が関わります。甘さだけではアイソトニックかハイポトニックかを判別できません。
トニシティと浸透圧は厳密には同じではない
「アイソトニック」「ハイポトニック」の語源になっているトニシティ(tonicity:張度)と、浸透圧に関する指標は、生理学では厳密には別の概念です。
浸透圧濃度は、液体に溶けている粒子全体の量と関係します。
一方のトニシティは、細胞膜を通りにくい物質が細胞の水分移動へどのような影響を与えるかを見る概念です。同じ浸透圧濃度でも、トニシティまで必ず同じになるとは限りません。
ただし、スポーツ飲料の研究や商品説明では、飲料の浸透圧をもとに「ハイポトニック」「アイソトニック」と分類する説明が広く使われています。
スポーツ飲料ではどんな特徴がある?
アイソトニックとハイポトニックは、どちらか一方が常に優れているという分類ではありません。
糖質や電解質の量、浸透圧などの組み合わせが異なり、商品ごとに配合も変わります。
ハイポトニック飲料の特徴
スポーツ飲料で「ハイポトニック」と呼ばれるものは、体液より低い側の浸透圧に調整されています。
運動中には汗によって水分や電解質が失われます。そのため、市販のハイポトニック飲料には、水分補給を意識して糖質量などを調整した商品があります。
2022年のメタ解析では、一定の運動条件下で、ハイポトニック飲料が水分状態の維持に有利だったとする結果が報告されています。
ただし、これはどの場面でもハイポトニック飲料が優れているという意味ではありません。
水分の移動や吸収には、
- 糖質の量と種類
- ナトリウムなど電解質の濃度
- 飲料全体の成分構成
- 一度に飲む量
- 運動時間や発汗量
など複数の条件が関係します。
アイソトニック飲料の特徴
アイソトニック飲料は、体液に近い側の浸透圧になるよう調整されたスポーツ飲料です。
糖質と電解質を含むものが多く、水分と一緒に糖質を摂取できる点も特徴です。
ただし、「アイソトニック」という名称に世界共通の一つの数値基準があるわけではありません。
例えば2022年のメタ解析では、
- ハイポトニック:275mOsm/kg未満
- アイソトニック:275~300mOsm/kg
- ハイパートニック:300mOsm/kg超
として研究結果を分類しています。
これはその研究で用いられた区分です。商品や研究によって使われる範囲には違いがあります。
また、アイソトニックは「人間の体液と成分までまったく同じ」という意味ではありません。表しているのは、体液との浸透圧の関係です。
「アイソトニックは運動前、ハイポトニックは運動中」と紹介されることもありますが、実際の目的は運動時間や発汗量、糖質をどの程度補いたいかなどによって変わります。
アイソトニックを水で薄めればハイポトニックになる?
アイソトニック飲料へ水を加えると、飲料に溶けている成分の濃度が下がるため、浸透圧も低くなる方向へ変化します。
そのため、希釈の程度によってはハイポトニック側になる可能性があります。
ただし、水で薄めただけで、市販のハイポトニック飲料と同じ配合になるとは限りません。
水を加えると糖質だけでなく、ナトリウムなどの電解質も一緒に薄くなります。
最初からハイポトニック飲料として作られている商品では、糖質、ナトリウム、そのほかの成分を含めて全体の配合が調整されています。
つまり、浸透圧を下げることと、市販のハイポトニック飲料と同じ成分にすることは別です。
「ハイポトニック=水より低い」ではない
「ハイポトニック」という言葉で間違えやすいのが、何と比較して「低い」のかという点です。
ハイポトニックは、水より浸透圧が低いという意味ではありません。
スポーツ飲料では、基準となる体液より低い側にあることを示します。
水そのものには糖質や電解質がほとんど含まれていないため、一般的なスポーツドリンクより浸透圧は低くなります。
「ハイポ」が示すのは、基準となる体液より低いという関係です。同じように「アイソ」も、体液に近いという比較関係を表します。
アイソトニック、ハイポトニック、ハイパートニックは、飲み物の絶対的な濃さを表す言葉ではなく、比較対象との関係を示す言葉です。
経口補水液とハイポトニック飲料は同じもの?
経口補水液も水分と電解質を含みますが、スポーツ向けのハイポトニック飲料とは目的が異なります。
日本で特別用途食品として許可される経口補水液は、脱水時の水分・電解質補給を目的とした病者用食品です。一般的なスポーツドリンクとは、制度上の位置づけや想定される用途が異なります。
経口補水液も浸透圧を考慮した配合ですが、浸透圧が低いという一点だけで、ハイポトニックスポーツドリンクと同じ飲料とはいえません。
まとめ
アイソトニックとハイポトニックの大きな違いは、スポーツ飲料では体液と比べた浸透圧の位置関係として説明されます。
ハイポトニックは体液より低い側、アイソトニックは体液に近い側です。さらに高い側にはハイパートニックがあります。
ただし、生理学ではトニシティと浸透圧濃度は厳密には別の概念です。また、水分の吸収も浸透圧だけで決まるものではなく、糖質や電解質の種類・濃度、飲む量などが関係します。
アイソトニック飲料を水で薄めれば浸透圧は低くなりますが、市販のハイポトニック飲料と同じ配合になるとは限りません。経口補水液も、スポーツ向けハイポトニック飲料とは目的が異なります。
「ハイポ=体液より低い側」「アイソ=体液に近い側」「ハイパー=体液より高い側」と覚えておくと、スポーツドリンクで見かける言葉の違いを理解しやすくなります。
参考情報
- Rowlands DS, Kopetschny BH, Badenhorst CE.「The Hydrating Effects of Hypertonic, Isotonic and Hypotonic Sports Drinks and Waters on Central Hydration During Continuous Exercise: A Systematic Meta-Analysis and Perspective」Sports Medicine, 2022.
- Kuang C, et al.「Unravelling tonicity: Causes of confusion and pathways to clarity」2025.
- 「Misunderstandings about Tonicity and Osmolality Can Lead to Patient Harm」
- 消費者庁「経口補水液(けいこうほすいえき)について」
- 消費者庁「特別用途食品について」
