ビジネスフレームワークはどう使い分ける?目的別の選び方

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SWOT、3C、PESTLE、5フォース、STP、4P――。

仕事について学び始めると、似たような図やアルファベットのフレームワークが次々と登場します。「結局、どれを使えばいいの?」と思う人もいるでしょう。

ビジネスフレームワークは、万能な一つを選ぶのではなく、「何を知りたいのか」に合わせて使い分ける道具です。

世の中の大きな変化を調べるならPESTLE、業界の競争構造なら5フォース、顧客・競合・自社の関係を比べるなら3C。集めた情報を内部と外部からまとめるならSWOT、狙う顧客と立ち位置を定めるならSTP、商品をどう市場へ届けるか具体化するなら4Pが向いています。

PDCAは少し性格が異なり、分析よりも実行後の改善に使われる考え方です。

名前を暗記するより、「何のために使うフレームワークなのか」を押さえたほうが選びやすくなります。

目次

ビジネスフレームワークは「何を知りたいか」で選ぶ

代表的なフレームワークは、同じビジネスについて考えるために使われていても、対象とする範囲や使う段階が違います。

まず目的を基準にすると、それぞれの違いが見えやすくなります。

知りたいこと向いているフレームワーク
社会や市場を取り巻く大きな変化PESTLE
業界の競争構造5フォース
顧客・競合・自社の関係3C
内部と外部の状況をまとめるSWOT
どの顧客を狙い、どう位置づけるかSTP
商品やサービスをどう市場へ届けるか4P
実行した施策を改善するPDCA

たとえば「新しい商品を発売したい」という一つのテーマでも、知りたいことによって選ぶ道具は変わります。

法律や景気、技術の変化が事業へどう影響するかを知りたいならPESTLE。業界内で利益を生み出しにくい理由を探るなら5フォースです。

顧客のニーズ、競合の動き、自社の特徴を比較するなら3C。狙う顧客を定める段階ではSTP、価格や販売場所、伝え方まで具体化するなら4Pへ進みます。

つまり、フレームワークを選ぶ前に「今、答えたい質問は何か」を決めることが大切です。

ビジネスで使われるフレームワークや思考法は、この7種類以外にもあります。

ロジックツリーのように問題を分解する手法や、MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)のように「漏れなく、重複なく」分類するための考え方もあります。

アンゾフの成長マトリクスは成長の方向を検討するとき、BCGマトリクスは複数事業の構成を比較するとき、バリューチェーンは企業活動のどこで価値が生まれているかを把握するときなど、それぞれ別の目的で使われます。

PESTLEからPDCAは、特に市場・経営戦略・マーケティング・施策改善という流れの中で違いを理解しやすい代表例です。

1. 状況を分析するならPESTLE・5フォース・3C・SWOT

事業について考えるとき、自社だけを詳しく調べても、市場全体で何が起きているのかまでは分かりません。

社会全体、業界、顧客や競合、自社というように視野の広さを変えていくと、それぞれのフレームワークが担当する範囲が見えてきます。

PESTLEは社会全体に近い「大きな変化」を調べる

PESTLE分析は、組織へ影響する外部要因を次の6分野から調べる方法です。

  • Political:政治
  • Economic:経済
  • Social:社会
  • Technological:技術
  • Legal:法律
  • Environmental:環境

たとえば飲食店なら、近隣の競合店だけを調べても、原材料価格の上昇、人口構成の変化、新しい決済技術、食品に関する制度変更などは十分に分かりません。

会社同士の競争よりさらに外側にある、社会・経済・制度・技術などの変化を把握するのがPESTLEです。

なお、「PESTEL」という表記を見かけることもあります。LegalとEnvironmentalの並びが入れ替わっていますが、基本的には同じ6分野を扱う呼び方です。

長期的な事業計画や新市場への参入など、自社では直接コントロールしにくい外部環境を調べたい場面で使われます。

5フォースは「その業界の競争構造」を読み解く

5フォース分析は、経営学者マイケル・E・ポーター(Michael E. Porter)が1979年に『Harvard Business Review』で示した競争分析の枠組みです。

既存企業同士の競争だけを調べるものではありません。

  • 既存企業間の競争
  • 新規参入者の脅威
  • 代替品・代替サービスの脅威
  • 買い手の交渉力
  • 供給者の交渉力

という5つの力から、業界の競争構造を読み解きます。

たとえば競合企業が少ない市場でも、顧客が簡単に別の商品へ乗り換えられるなら、企業側が価格を自由に決められるとは限りません。重要な原材料を限られた供給者からしか調達できなければ、供給者側の影響力も大きくなります。

5フォースは「競合会社を調べる方法」というより、業界で利益や競争に影響する力を把握するための枠組みです。

PESTLEが社会全体に近い外部環境を扱うのに対し、5フォースでは一段内側へ入り、特定の業界に焦点を当てます。

3Cは「顧客・競合・自社」の関係を比べる

3Cは、

  • Customer:顧客
  • Competitor:競合
  • Company:自社

という3つの視点から事業を検討するフレームワークです。顧客を分析する際には、その顧客が属する市場の特徴まで含めて扱うこともあります。

3Cは、マッキンゼー出身の経営コンサルタント大前研一が1982年の著書『The Mind of the Strategist』で示した代表的な戦略フレームワークとして知られています。

「顧客は何を求めているのか」「競合はどんな価値を提供しているのか」「自社には何ができるのか」という3者を並べて比較します。

たとえば、自社が高品質な商品を作れるとしても、顧客がそこまでの品質を求めていなかったり、競合が同程度の商品を大幅に安く提供していたりすれば、「品質が高い」という情報だけでは戦略を決められません。

自社の長所だけを取り出すのではなく、顧客と競合との関係の中で自社の立ち位置を把握するのが3Cです。

SWOTは内部と外部の情報を一つにまとめる

SWOT分析は、

  • Strengths:強み
  • Weaknesses:弱み
  • Opportunities:機会
  • Threats:脅威

の4つから状況を分析する方法です。

一般的には、強みと弱みを内部要因、機会と脅威を外部要因として扱います。

たとえば「ブランドの知名度が高い」は強み、「生産能力が限られている」は弱み。「市場が拡大している」は機会、「大手企業が新規参入した」は脅威というように分類できます。

SWOTの特徴は、自社側の事情と外部環境を一つの枠に並べられることです。

そのため、PESTLEで見つけた社会変化や5フォースで分かった業界構造、3Cで得た顧客・競合情報をSWOTへ持ち込む使い方もできます。

ただし、4つのマスを埋めただけでは次の行動は決まりません。

強みを使ってどの機会を生かすのか。脅威へ強みをどう利用するのか。弱みが機会を逃す原因になっているなら何を変えるのか。このように内部要因と外部要因を掛け合わせて戦略の方向を検討する方法は、日本では「クロスSWOT」と呼ばれることもあります。

SWOTは項目を分類して終わるより、集めた材料から次の選択肢や方針につなげるところまで進めると使いやすくなります。

2. 「誰にどう届けるか」を決めるならSTPと4P

市場、競合、自社の状況が分かっても、それだけでは「どんな商品を誰へ届けるのか」は決まりません。

分析した内容をマーケティング施策へつなげる段階で使いやすいのが、STPと4Pです。

STPでは狙う相手と立ち位置を定め、4Pではその方針を商品・価格・流通・伝え方へ具体化します。

STPは「誰を狙い、どう位置づけるか」を決める

STPは、

  • Segmentation:セグメンテーション(市場細分化)
  • Targeting:ターゲティング(標的市場の選定)
  • Positioning:ポジショニング(市場での位置づけ)

という3つの考え方を組み合わせたものです。

まず、市場をニーズや特徴などによって複数のグループへ分けます。そこから狙う顧客層を選び、その顧客から競合と比べてどのような商品・ブランドとして認識されたいのかを定めます。

たとえば同じ飲料市場でも、「価格を重視する人」「健康を意識して成分を見る人」「持ち運びやすさを重視する人」では、魅力を感じる商品が同じとは限りません。

市場全体へ同じ方法で売ろうとするのではなく、どんな人を対象にし、その人からどのように見られたいのかを決めるのがSTPです。

3Cで顧客や競合、自社について調べたあとにSTPを使えば、集めた情報から「誰を狙うのか」という方針へつなげやすくなります。

4Pは「市場へどう届けるか」を具体化する

ターゲットや市場での立ち位置が見えてきたら、実際の商品や販売方法へ落とし込みます。

4Pは次の4要素です。

  • Product:製品・サービス
  • Price:価格
  • Place:流通・販売場所
  • Promotion:販売促進・コミュニケーション

この4Pは、マーケティング学者E・ジェローム・マッカーシー(E. Jerome McCarthy)が1960年に示したマーケティング・ミックスとして広まりました。

たとえば「健康を意識する忙しい会社員」を狙うとしても、STPだけでは施策は完成しません。どのような商品にするのか、いくらで販売するのか、店舗や通販などどこで買えるようにするのか、広告やSNSなどで何を伝えるのかを具体化する必要があります。

さらに4Pでは、4項目を個別に決めるだけでなく、互いに矛盾していないか確かめることも重要です。

高級ブランドとして位置づけたいのに極端な値引きを繰り返せば、価格とブランドイメージがかみ合わないかもしれません。手軽さを魅力にした商品なのに購入できる場所が極端に少なければ、商品と流通方法にもずれが生じます。

3Cが顧客・競合・自社を把握する段階、STPが狙う顧客と立ち位置を定める段階、4Pが市場へ届ける施策を具体化する段階と考えると、それぞれの違いが分かりやすくなります。

3. フレームワークは1つだけ選ばなくてもいい

「SWOTと3Cならどちらを使うべき?」「PESTLEを使ったら5フォースはいらない?」と考えると、フレームワーク選びは難しくなります。

実際には役割が異なるため、一つの事業について複数を組み合わせることもできます。

新規事業や新商品を検討する場合なら、たとえば次のような使い方があります。

PESTLE

社会・経済・制度・技術など、大きな環境変化を把握する

5フォース

参入する業界の競争構造を読み解く

3C

顧客・競合・自社の関係を比較する

SWOT

内部と外部の情報をまとめ、選択肢を検討する

STP

狙う顧客と市場での立ち位置を定める

4P

商品・価格・流通・伝え方を具体化する

このように並べると、「社会環境を調べる方法」と「商品の価格や販売方法を具体化する方法」を同じ目的の道具として比較せずに済みます。

ただし、これがすべての企業に当てはまる固定手順というわけではありません。

すでに市場環境が十分に分かっていれば、PESTLEを改めて行わないこともあります。STPを検討している途中で顧客情報が足りないと分かり、3Cや市場調査へ戻ることもあるでしょう。

実務では、目的や手元の情報に合わせて必要なフレームワークを選ぶことができます。

PDCAは市場分析ではなく「実行後の改善」に使う

PDCAはほかのビジネスフレームワークと一緒に紹介されることがありますが、PESTLEや3Cとは役割が異なります。

PDCAは、

  • Plan:計画
  • Do:実行
  • Check:評価
  • Act:改善

の4段階を繰り返す考え方です。

市場や競争環境そのものを分析する方法ではありません。

たとえば4Pまで検討して施策を実行したあと、狙っていた結果が出たのかを評価し、次の改善へつなげる段階で使えます。

分析する → 方針を定める → 施策を決める → 実行する → 改善する

という流れで考えると、PDCAは実行後に近い部分を担当します。

フレームワークを使いすぎても答えは出ない

複数のフレームワークを組み合わせられるからといって、知っているものをすべて使えば答えが出るわけではありません。

PESTLEを書き、3Cを作り、SWOTを埋め、STPも作成したのに、「それで何をするのか」が決まらないこともあり得ます。

フレームワークは、正しい答えを自動的に出してくれる公式ではないからです。

フレームワークは、中に入れる情報の質にも左右されます。

たとえばSWOTの「強み」に、根拠なく「顧客満足度が高い」と書けば、その後の分析もその前提に引っ張られます。3Cでも顧客についての情報が古ければ、整った表が完成していても、現在の市場を適切に把握できているとは限りません。

フレームワークの見た目が完成していることと、分析の質が高いことは別です。

迷ったときは、

STEP
何を決めたいのか

STEP
その判断に足りない情報は何か

STEP
その情報を得るには何を調べるべきか

STEP
どのフレームワークなら考えやすいか

という順にたどると選びやすくなります。

有名な名前から選ぶのではなく、今の判断に足りない情報を明らかにしてから道具を選ぶほうが、実際の仕事へつなげやすくなります。

まとめ

ビジネスフレームワークは、どれか一つが万能なのではなく、扱う対象や使う段階によって役割が違います。

社会や制度など大きな外部環境を調べるならPESTLE、業界構造なら5フォース、顧客・競合・自社を比べるなら3C。内部と外部の情報をまとめるならSWOTがあります。

そこから狙う顧客や立ち位置を定めるならSTP、商品・価格・流通・伝え方へ具体化するなら4P。施策を実行したあとの改善にはPDCAを使えます。

これらをすべて使う必要はありません。

「有名なフレームワークは何か」ではなく、「今、何を知りたいのか」から逆算して選ぶことが使い分けの基本です。

どれほど有名な枠組みでも、中に入れる情報が不正確なら分析の精度は上がりません。目的と必要な情報が分かれば、「SWOTと3Cのどちらを使うべき?」ではなく、「今の疑問にはどちらが合う?」という視点で選べるようになります。

参考情報

  • CIPD(Chartered Institute of Personnel and Development)「PESTLE analysis」
  • Porter, Michael E. (1979). “How Competitive Forces Shape Strategy.” Harvard Business Review.
  • Bradley, Chris, Hirt, Martin, & Smit, Sven (2011). “Have You Tested Your Strategy Lately?” McKinsey Quarterly.
  • 経済産業省「令和4年度地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業 調査報告書」
  • 環境省「地方公共団体実行計画策定・実施マニュアルに係る研修資料」
  • American Marketing Association「The Past, Present, and Future of Marketing」
  • ASQ(American Society for Quality)「PDCA Cycle – What is the Plan-Do-Check-Act Cycle?」
  • McKinsey & Company「Barbara Minto: “MECE: I invented it, so I get to say how to pronounce it”」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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