不倫や浮気の話題を目にすると、「意外と多いのでは」と感じる人は少なくありません。ニュースや週刊誌、インターネットでは、不倫に関する割合や調査結果が取り上げられることがあり、その印象をさらに強めます。
ただし、不倫率という数字は、そのまま社会全体の実態を表しているとは限りません。そもそも「不倫」として何を数えるのか、誰に聞いたのか、過去の経験なのか現在進行形なのかによって、数字の意味は大きく変わります。
ここでは、具体的な統計表や割合を並べるのではなく、不倫が「多い」と感じられやすい理由や、不倫率という数字を見るときの注意点を見ていきます。
そもそも「不倫率」とは何を指すのか
不倫率と一口に言っても、その意味は一つではありません。
日常会話では「不倫」「浮気」が近い意味で使われることがあります。しかし、法律上は「不倫」という言葉そのものより、民法770条にある「配偶者に不貞な行為があったとき」という表現が重要になります。これは裁判上の離婚原因の一つとして定められているものです。
一方、アンケート調査では「浮気経験があるか」「配偶者以外と関係を持ったことがあるか」「心の浮気も含めるか」など、設問の言葉が調査ごとに異なります。
つまり、ある調査では肉体関係を中心に見ていても、別の調査では感情的な関係やオンライン上のやり取りまで含めていることがあります。研究上も、infidelity(不貞・不倫にあたる行動)の定義は一様ではなく、研究・カウンセリングの文脈によって扱いが変わることが示されています。
このため、不倫率という数字を見るときは、まず「その調査では何を不倫として数えているのか」を確認する必要があります。
不倫率は公的に一つの基準で出る数字ではない
不倫率は、失業率や出生率のように、公的機関が一つの基準で継続的に発表している数字ではありません。
多くの場合、民間調査、研究、アンケート記事、メディア企画などで使われる便宜的な表現です。そのため、調査ごとに対象者も質問文も違います。
たとえば、次のような違いがあります。
- 既婚者だけに聞いたのか
- 未婚の交際関係も含めたのか
- 過去に一度でも経験があるかを聞いたのか
- 現在進行形の関係だけを聞いたのか
- 肉体関係だけか、感情的な関係も含めるのか
この条件が一つ変わるだけでも、数字は大きく変わります。
そのため、「不倫率は何%」という見出しだけを見て、すぐに社会全体の実態だと受け取るのは危うい見方です。
記事や調査で見かける割合は、「不倫の実数」ではなく、「その調査条件で得られた回答結果」として読む必要があります。
自己申告調査では答えにくさが数字に影響する
不倫率の多くは、アンケートによる自己申告をもとにしています。
しかし、不倫や浮気はかなり答えにくい話題です。たとえ匿名調査であっても、「正直に答えると悪く見られるのでは」と感じる人はいます。
調査では、実際の行動よりも「無難に見える答え」を選びやすくなることがあります。こうした回答の偏りは、社会調査でも知られています。
そのため、不倫率の数字は実態より少なく出る可能性があります。
一方で、匿名性が高く、質問の仕方が広い場合には、回答しやすくなったり、範囲が広がったりして数字が大きく出ることもあります。
つまり、自己申告の数字は「事実そのもの」ではなく、「その条件で回答された数字」として見る必要があります。
男女差や年代差はそのまま比べにくい
不倫率の話では、男女差や年代差が話題になることがあります。
一部の調査では、男性のほうが不倫や浮気の経験があると回答する割合が高く出ることがあります。ただし、それがそのまま行動の差だけを示しているとは限りません。
たとえば、男性のほうが浮気経験を語りやすい、女性のほうが答えにくいと感じやすい、といった社会的な意識が回答に影響する可能性があります。反対に、設問の言葉や調査対象によっては、別の傾向が出ることもあります。
年代差も同じです。若年層では既婚者そのものが少ないため、「不倫」という条件に当てはまる人が限られます。一方、中高年層では結婚期間が長くなるため、「これまでに一度でも経験があるか」と聞けば、数字が高く見えやすくなります。
このように、男女や年代の数字を比べるときは、回答しやすさ、婚姻状況、結婚期間の長さを考えないと誤解が生まれやすくなります。
「経験がある人」と「現在進行形の人」は別の数字
不倫率を見るときに特に注意したいのが、「一度でも経験がある人」と「現在進行形の人」の違いです。
「これまでに不倫や浮気をしたことがありますか」と聞けば、過去の出来事も含まれます。若い頃の一度きりの経験も、長期間続いた関係も、同じ「経験あり」に含まれる場合があります。
一方、「現在、不倫関係がありますか」と聞けば、今も続いている関係だけが対象になります。
どちらも不倫に関する数字ではありますが、読者が受ける印象はかなり違います。「一度でも経験がある人」の割合を見て、「今、多くの人が不倫している」と受け取ると、実態以上に多く感じてしまいます。
不倫の数字が大きく見えやすい理由
不倫は、数字そのもの以上に「多い」と感じられやすい話題です。
理由の一つは、メディアで目立ちやすいことです。芸能人や著名人の不倫報道は注目を集めやすく、週刊誌やニュース、SNSでも広がりやすい話題です。
人は、よく目にする出来事ほど「多く起きている」と感じやすい傾向があります。不倫のニュースを何度も見ると、実際には一部の事例であっても、社会全体で頻繁に起きているように感じられることがあります。
また、不倫は身近な人間関係と非日常的な裏切りが重なる話題です。自分や知人の生活に引き寄せて想像しやすいため、数字が出ると強く印象に残ります。
日本と海外を単純に比べにくい理由
海外でも不倫率に関する調査はありますが、日本と数字だけを並べて比べるのは難しいです。
国によって、結婚観、宗教観、性的な話題への答えやすさ、調査への参加意識が異なります。さらに、何を不倫とみなすかも調査によって変わります。肉体関係だけを指す場合もあれば、感情的な関係やオンライン上のやり取りまで含める場合もあります。
そのため、「日本は多い」「海外は少ない」と単純に言うより、どのような調査条件で出た数字なのかを見るほうが大切です。
日本が特別に多いかどうかを、数字だけで判断するのは難しいでしょう。国際比較では、定義や調査方法の違いが数字に大きく影響します。
なぜ不倫の話題は関心を集めやすいのか
不倫の話題が関心を集めるのは、単に刺激的だからだけではありません。
不倫は、夫婦関係、恋愛、信頼、裏切り、家庭、社会的評価など、多くの人が関心を持ちやすい要素を含んでいます。自分には関係ないと思っていても、ニュースや知人の話として聞くと、つい気になってしまう話題です。
また、不倫率のような数字には、人の不安や安心を動かす力があります。
「思ったより多い」と感じれば不安になります。
「意外と少ない」と感じれば安心する人もいます。
「自分の周囲だけではないのか」と確認したくなる人もいます。
数字は客観的に見えますが、どのように切り取られるかで印象は大きく変わります。
不倫率を見るときの注意点
不倫率の数字を見るときは、数字の大きさだけで判断しないほうがよいでしょう。
まず、その調査が何を不倫として数えているのかを見る必要があります。次に、誰を対象にした調査なのかを確認します。既婚者だけなのか、交際中の人も含むのか、年齢層はどこなのかによって意味が変わります。
さらに、「過去に一度でも」なのか「現在進行形」なのかも重要です。
この前提を見ずに数字だけを読むと、実際より多く見えたり、逆に少なく見えたりします。不倫率という数字は、単独で実態を語るものではなく、調査条件と一緒に読むことで意味が分かる数字です。
Q&A(よくある質問)
まとめ
不倫率に関する数字は、定義や調査方法によって大きく姿を変えます。
日常会話の「不倫」「浮気」と、法律上の「不貞な行為」は同じものとして扱えない場合があります。また、調査では肉体関係だけを含むのか、感情的な関係まで含むのかによって結果が変わります。
「一度でも経験がある人」と「現在進行形の人」を混同すると、不倫が実際以上に多いように感じられることもあります。さらに、ニュースやSNSで目立つ話題であるため、印象が強まりやすい面もあります。
不倫率という数字を見るときは、割合そのものよりも、どのような条件で作られた数字なのかを確認することが大切です。数字の前提を知ると、「多い」「少ない」という印象に振り回されにくくなります。
参考情報
- e-Gov法令検索「民法」
- PubMed「Defining infidelity in research and couple counseling」
- PMC「Love and Infidelity: Causes and Consequences」
- 日本社会学会「調査票調査における『社会的望ましさ』バイアスの検証」
