「10月10日」という日付を横向きにして眺めると、二つの「10」が人の目と眉のように見えてきます。この形にちなんで知られているのが、10月10日の目の愛護デーです。
現在は目や見え方について関心を持つ日として定着していますが、その歴史をたどると、最初から「目の愛護デー」という名称だったわけではありません。
1930年代には「視力保存デー」、その後は「眼の記念日」と呼ばれた時期があり、戦後になって現在の「目の愛護デー」へつながりました。
「1010が目に見える」という覚えやすい由来だけでなく、戦前から形や名称を変えながら続いてきた歴史を持つ記念日です。
目の愛護デーはなぜ10月10日?
10月10日の日付は、「10 10」を横向きにすると眉と目のように見えることにちなんでいます。
「10」を横向きにすると、「1」が眉、「0」が目のように見えます。二つの「10」を並べた10月10日は、左右の目と眉を連想させる形です。
自治体による目の愛護デーの案内でも、「1010」を横に倒すと眉と目に見えることが10月10日の由来として紹介されています。
語呂合わせではなく、数字を回転させたときの形を利用した日付というところが特徴です。
紙に「10 10」と書いて横向きにしてみると、なぜこの日が目と結び付けられたのかを直感的に理解できます。
始まりは1931年の「視力保存デー」
目の愛護デーにつながる取り組みは、戦前までさかのぼります。
1931年には、中央盲人福祉協会が10月10日を「視力保存デー」としたことが、複数の医療関係資料に記されています。視力保存や失明予防について広く知らせるための活動が行われ、現在の目の愛護デーにつながる起点の一つとされています。
同じ1931年10月には、中央盲人福祉協会から『視力保存に就て』が刊行された記録もCiNii Researchに残っています。
現在の「目の愛護デー」という名称とは異なり、当初は視力を守ることを前面に出した「視力保存デー」と呼ばれていました。
その後は9月18日の「眼の記念日」に変わった
目の愛護デーの歴史には、10月10日ではなかった時期があります。
日本眼科医会の公式沿革では、1939年9月に9月18日を「眼の記念日」と制定したと記録されています。
なぜ9月18日だったのでしょうか。
その背景は明治時代までさかのぼります。
新潟大学眼科の沿革によると、1878年(明治11年)9月18日、明治天皇が新潟を訪れた際、当地の眼疾患の治療や予防のために御手元金を下賜したとされています。
この出来事を記念し、後に9月18日が「眼の記念日」とされました。
目の愛護デーにつながる歴史を日付順に見ると、
10月10日の視力保存デー
→ 9月18日の眼の記念日
→ 再び10月10日の目の愛護デー
という変化をたどっています。
戦後の1947年に「目の愛護デー」へ
戦後の1947年になると、再び10月10日が「目の愛護デー」とされるようになります。
JICAがまとめた日本の公衆衛生史資料にも、1947年以降、毎年10月10日を「目の愛護デー」とし、厚生省や都道府県、関係団体が協力して、当時大きな課題だったトラホームの予防や衛生知識の普及に取り組んだことが記録されています。
トラホームは感染によって起こる眼の病気で、当時の日本では公衆衛生上の重要な課題の一つでした。目の愛護デーは、こうした時代背景の中で目に関する衛生知識を広める機会としても位置付けられていました。
ここで、現在まで続く「目の愛護デー」という名称が登場しました。
日本眼科医会の沿革では、1969年に厚生省主催・文部省後援の「目の愛護デー」行事へ協力団体として参加し、1979年には厚生省や都道府県などとともに主催団体となったことが記録されています。
その後も10月10日に合わせた啓発活動は続き、現在も各地で関連行事が行われています。
「目」と「眼」はどう違う?
記念日の歴史を追うと、「視力保存デー」「眼の記念日」「目の愛護デー」と表記が変わっています。
「目」と「眼」はどちらも「め」と読み、完全に別の意味を持つ漢字ではありません。
「目」は「目を閉じる」「目を見る」のように、日常的な文章で幅広く使われています。
一方の「眼」は、「眼科」「眼球」「眼疾患」など、医学や専門分野の言葉にも多く登場します。
旧称の「眼の記念日」では「眼」が使われ、現在の「目の愛護デー」では日常的にもなじみのある「目」が使われています。
ただし、「目は日常語、眼は医学用語」と厳密に分けられるわけではありません。どちらか一方だけが正しいという関係でもなく、言葉や名称によって使い分けられています。
現在の目の愛護デーはどんな日?
現在の目の愛護デーは、普段あまり意識することのない「見る」という働きや、目の健康について関心を持つ機会となっています。
日本眼科医会では、各都道府県の眼科医会などが行う一般向けイベントを目の愛護デーに合わせて案内しています。
地域によって内容は異なりますが、講演や啓発活動などが行われています。開催内容は年によって変わり、最新の予定は日本眼科医会や各地域の眼科医会などで案内されています。
まとめ
目の愛護デーは毎年10月10日です。
日付の由来として知られているのは、「10 10」を横向きにすると、それぞれの「10」が眉と目のように見えることです。
1931年には10月10日の「視力保存デー」が設けられたとされ、その後は1878年9月18日の新潟での出来事に由来する「眼の記念日」の時期を経ました。戦後の1947年には、再び10月10日が「目の愛護デー」とされるようになります。
1010という数字の見た目だけでなく、日付や名称を変えながら続いてきた歴史まで知ると、現在の目の愛護デーがどのように形づくられたのかが見えてきます。
参考情報
- 公益社団法人 日本眼科医会「目の愛護デー」
- 公益社団法人 日本眼科医会「会の歩み」
- 新潟大学眼科「沿革」
- CiNii Research「視力保存に就て」
- 国際協力機構(JICA)『日本の保健医療の経験―途上国の保健医療改善を考える―』
- 横須賀市「10月10日は目の愛護デーです」
