3DゲームやVR映像、立体映画を見ていると、乗り物に乗っていないのに気分が悪くなることがあります。画面の中では大きく動いているのに、自分の体は椅子に座ったまま。その違和感が、めまい、吐き気、頭の重さ、目の疲れにつながることがあります。
このような不快感は、一般に「3D酔い」「ゲーム酔い」「VR酔い」などと呼ばれます。英語圏では、画面や仮想空間で起こる酔いをcybersickness(サイバー酔い)、映像によって起こる酔いをvisually induced motion sickness(視覚誘発性の乗り物酔い)と呼ぶこともあります。
3D酔いは、気合いや慣れだけの問題ではありません。目で見ている動きと、体が感じている動きがずれることで、脳が受け取る情報に食い違いが出やすくなります。
そもそも酔いはなぜ起きるのか
酔いは、体が受け取る感覚の情報がうまく合わないときに起こりやすいと考えられています。
人は、目で見える景色だけで自分の動きを判断しているわけではありません。耳の奥にある平衡感覚、筋肉や関節から伝わる体の感覚、目で見える動きなどを合わせて、「今、自分は動いているのか」「止まっているのか」を判断しています。
代表的なのが乗り物酔いです。車や船に乗っていると、体は揺れや加速を感じています。けれど、車内の座席や本、スマホ画面を見ていると、目には大きな動きが入りにくいことがあります。
このように、体は動いていると感じているのに、目はあまり動いていないと受け取ることで、気分の悪さにつながることがあります。
ただし、目を閉じれば必ず酔わないわけではありません。乗り物酔いには、視覚だけでなく、耳の奥の平衡感覚が受け取る揺れや加速も関係します。目を閉じると楽に感じる人もいますが、体が揺れを感じ続けていれば、気分の悪さが残ることもあります。
3D酔いでは画面の動きと体の感覚がずれる
3D酔いは、乗り物酔いと似た仕組みで説明されることがあります。ただし、ズレの向きは少し違います。
乗り物酔いでは、体は揺れや加速を感じているのに、目は車内や手元の画面を見ていて大きな動きを感じにくいことがあります。一方で3D酔いでは、画面の中では大きく動いているのに、体は実際には動いていません。
3DゲームやVRでは、画面の中で前へ進んだり、急に振り向いたり、高い場所から落ちたりします。目は「自分が動いているようだ」と受け取ります。けれど、実際の体は椅子に座ったままで、足も動いていません。
耳の奥の平衡感覚や、筋肉・関節から伝わる体の感覚は「動いていない」と伝えます。そこに、画面からの「動いている」という情報が重なるため、脳が受け取る情報に食い違いが出ます。
このズレが目立つほど、気分の悪さや目の疲れにつながりやすくなります。特に一人称視点で走ったり、急に振り向いたり、落下したりする場面では、画面の動きと体の感覚の差が目立ちやすくなります。
一人称視点やカメラ操作で酔いやすくなる
3Dゲームで酔いやすい場面には、いくつか共通点があります。
一人称視点で細い通路を進む。カメラを素早く回す。上下の揺れが大きい。視野が狭い。画面のブレや揺れが強い。こうした場面では、画面の動きが体感と合わず、気分が悪くなりやすくなります。
特に一人称視点では、画面全体が自分の視界のように動きます。プレイヤーの意識も「自分が動いている」感覚に近づきやすくなります。そのため、視覚からの情報が強くなり、体が止まっている感覚とのズレが目立ちます。
また、キャラクターが歩くたびに視点が上下に揺れる表現や、攻撃・爆発・着地の衝撃で画面全体が揺れる演出も、酔いやすさに関係することがあります。
さらに、画面そのものは大きく揺れていなくても、キャラクターや乗り物、照準、背景の一部が上下に揺れ続けることで、目で追う動きが増え、不快感につながる場合もあります。
ゲーム内では臨場感を出すための演出ですが、細かい揺れが続くと、目が動きを追い続けることになります。特に、一人称視点で頭の動きを再現するような上下揺れが強い場合や、三人称視点でキャラクターの体やカメラが小刻みに動き続ける場合は、実際の体は動いていないのに、視覚だけが揺れを受け取り続ける状態になります。
酔いやすい人は、設定で「画面揺れ」「手ブレ」「ヘッドボブ」「モーションブラー」などを下げたり、切ったりすると楽に感じる場合があります。ヘッドボブとは、歩行に合わせて視点が上下する表現のことです。
VRでは没入感が高いぶんズレも強く感じやすい
VRで酔いやすい理由は、視界の多くが仮想空間で覆われるからです。画面の中に入り込んだように見えるぶん、視覚から受け取る動きが強くなります。
VR空間で前へ進んでいる映像を見ると、目は「自分が移動している」と受け取ります。けれど、足は動いておらず、体も加速していません。このズレが目立つと、気持ち悪さにつながることがあります。
VR酔いには、映像の内容だけでなく、機器の表示性能や視野、フレームレート、遅延、移動方法なども関わるとされています。
そのため、同じ人でも、ゆっくり景色を見るVRでは平気なのに、ジェットコースター風のVRやスティック移動のVRゲームでは酔いやすいことがあります。
VRでは、移動の見せ方によって酔いやすさが変わることもあります。自分で歩いて移動する場合と、コントローラーのスティックで滑るように移動する場合では、体が受け取る感覚が違います。映像では前に進んでいるのに、足や体は動いていない。この差が目立つほど、酔いやすい人には負担に感じられることがあります。
立体映像では目の使い方でも疲れやすくなる
3D映画や立体表示では、乗り物のような酔いだけでなく、目の疲れも関係します。
立体映像では、左右の目に少し違う映像を見せることで奥行きを感じさせます。脳はその差をもとに、手前や奥に物があるように感じます。
ただ、実際に目のピントを合わせている場所はスクリーンや画面です。一方で、立体的には画面より手前や奥に見えることがあります。目を向ける距離と、ピントを合わせる距離がずれやすくなるため、目が疲れたり、不快感が出たりすることがあります。
このようなズレはvergence-accommodation conflict(輻輳調節矛盾/ふくそうちょうせつむじゅん)と呼ばれます。専門的な言葉ですが、「立体として見えている距離」と「実際に目がピントを合わせている距離」が合いにくい状態を指します。
3D酔いには「体が動いていないのに景色が動く」というズレだけでなく、「立体に見える距離と目のピントの距離が合いにくい」という目の負担も関わることがあります。
ゲーム配信を見るだけでも酔うことがある
3D酔いは、自分でゲームを操作しているときだけに起こるとは限りません。ゲーム配信や実況動画を見ているだけでも、画面の動きで気分が悪くなることがあります。
配信では、自分が操作していないため、画面の動きが予測しづらいことがあります。配信者が急に振り向いたり、カメラを大きく動かしたり、敵の攻撃で画面が揺れたりすると、見ている側は動きを受け身で追うことになります。
特に、キャラクターの歩行に合わせて画面が上下したり、画面内のキャラクターや乗り物が揺れ続けたりする配信では、視線が揺れを追い続けることがあります。自分で操作していないぶん、動きのタイミングを予測しにくく、酔いやすい人には負担になる場合があります。
配信者が視聴者にも配慮したい場合は、画面上に動きの少ない固定表示や小さな印を置き、酔いやすい人には画面全体を追いすぎない見方を案内する方法もあります。
顔出し配信やVTuber配信では、動きの少ない配信者表示や固定UIが視線を置く場所になることもあります。ただし、配信者の表示自体が大きく動く場合は、目印として使いにくいこともあります。固定されたUIや小さなマークなど、動きの少ない場所を視線の逃げ場にするほうが見やすい場合があります。
酔いやすさには個人差がある
3D酔いは、誰にでも同じように起こるわけではありません。まったく平気な人もいれば、短時間でも気分が悪くなる人もいます。
個人差には、乗り物酔いのしやすさ、体調、睡眠不足、空腹や満腹、疲れ、画面との距離、部屋の明るさ、ゲームの動き方などが関係します。特に疲れているときや、目を酷使しているときは、普段より酔いやすく感じることがあります。
また、同じゲームでも、設定によって酔いやすさが変わることがあります。カメラ速度が速い、視野角が合わない、画面揺れが強い、暗い場所で画面を近くで見ているなど、複数の条件が重なると不快感が出やすくなる場合があります。
「自分だけ弱い」と考えすぎる必要はありません。3D酔いは、画面が作る動きと体の感覚が合わないことで起こりやすい現象なので、感じ方に差があるのは珍しいことではありません。
3D酔いを減らすには設定や見方も大切
3D酔いを感じたときは、無理に続けず、いったん画面から離れるほうがよいでしょう。少し気持ち悪い、頭が重い、目が疲れる、冷や汗が出るといったサインがあれば、休憩を入れる目安になります。
対策としては、カメラ感度を下げる、画面の揺れを減らす設定にする、視野角を調整する、明るい部屋で遊ぶ、画面から少し離れる、短い時間から慣らす、といった方法があります。ゲームによっては、手ブレ表現やモーションブラー、画面揺れを切れる設定もあります。
VRでは、スティックで滑るように移動する方式より、瞬間移動のような移動方法のほうが楽に感じる人もいます。視界の端を少し暗くする設定や、酔いやすさに配慮したモードが用意されていることもあります。
ゲーム配信を見る場合は、画面全体を追い続けず、動きの少ない固定表示やUIに視線を置くと、少し楽に感じる場合があります。配信者側が固定の目印や動きの少ない表示を用意していると、酔いやすい視聴者にとって見方を選びやすくなります。
症状が強いときや、画面から離れても気分の悪さが長く続くときは、無理に遊び続けないほうがよいです。頻繁に強いめまいや吐き気が出る場合は、ほかの要因が関係していることもあるため、必要に応じて医療機関へ相談する選択もあります。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
3D酔いは、画面の中では動いているのに、実際の体は動いていないことで起こりやすい現象です。目は「動いている」と受け取り、耳の奥の平衡感覚や体の感覚は「動いていない」と伝えるため、脳が受け取る情報に食い違いが出ます。
乗り物酔いも感覚のズレに関係しますが、3D酔いとはズレの向きが少し違います。乗り物酔いでは体が揺れを感じるのに、目の情報が合わないことがあります。3D酔いでは、目は大きな動きを見ているのに、体は止まっています。
一人称視点のゲーム、急なカメラ操作、歩行時の上下揺れ、衝撃による画面揺れ、VRの移動表現、立体映像の目の負担などが重なると、気分の悪さや目の疲れにつながることがあります。
3D酔いは、気持ちだけで片づけられるものではありません。画面の動きと体の感覚のズレによって起こりやすいものです。酔いやすい人は、設定を調整したり、短時間で休憩したりして、自分に合う見方や遊び方を探すことが大切です。
参考情報
- CDC Yellow Book「Motion Sickness」
- Saredakis et al.「Factors Associated With Virtual Reality Sickness in Head-Mounted Displays」
- Oh et al.「Cybersickness and Its Severity Arising from Virtual Reality Content」
- Kim et al.「Visual Discomfort and the Temporal Properties of the Vergence-Accommodation Conflict」
