電子タバコを発明したのは誰?現代型は2003年に中国で誕生

電子タバコの発明者として、いちばんよく名前が挙がるのは、中国の薬剤師 韓力(Hon Lik) です。ブリタニカは、現在一般に知られる電子タバコを 2003年に韓力が発明した と説明しており、米国科学・医学・工学アカデミーの報告書を収録した NCBI Bookshelf でも、2003年に韓力が現代型の装置を開発した と整理しています。つまり、「電子タバコは2003年に中国の薬剤師が発明した」という説明は、現代型の電子タバコを指すなら大筋で正しいと言えます。

ただ、この話には前史があります。電子タバコは2003年に突然ゼロから生まれたというより、もっと前にあった着想を、現代的な形へまとめ直した発明 と見るほうがわかりやすいテーマです。そのため、発明史をきれいに追うなら、原型の発想現代型としての誕生 を分けて考えるのが大切です。


目次

なぜ韓力が「発明者」として知られているのか

韓力が発明者として広く知られるのは、今の電子タバコにつながる基本構造を、実用品に近い形で示したからです。ブリタニカによると、電子タバコは電池式で、霧化する部分と液体を含む部分から成る装置として説明されており、現在の製品の基本像とも重なります。 NCBI Bookshelf でも、韓力の特許出願は electronic atomizing cigarette と表現されていて、現在の電子タバコの直接の出発点として位置づけられています。

「2003年」という年が強く語られるのは、韓力の関連特許がこの年に出願されているからです。Google Patents に掲載されている関連特許では、出願日が 2003年4月29日 と確認できます。さらに NCBI Bookshelf では、2004年に中国市場へ Ruyan の名で投入された とされており、2003年は「装置が形になった年」、2004年は「市場に出た年」と考えると流れがつかみやすくなります。


それ以前にも、似た発想はあった

ここでよく比較されるのが、アメリカの ハーバート・A・ギルバート(Herbert A. Gilbert) です。Google Patents で確認できるように、ギルバートは 1963年に “Smokeless non-tobacco cigarette” を出願し、1965年に特許を取得 しています。この特許では、燃焼の代わりに 加熱された湿った風味付きの空気 を吸う仕組みが示されていて、「煙を出さずに吸う装置」という発想そのものはかなり早い時期から存在していたことがわかります。

ただし、この装置は現在の電子タバコとそのまま同じものではなく、広く商業化されたわけでもありません。だから発明史では、1963年のギルバートが先行する着想を示し、2003年の韓力が現代型電子タバコを実用的な形で成立させた と分けて説明されることが多いのです。この二段階で見ると、「誰が発明したのか」という問いもかなりすっきりします。


歴史に残ったのは「広がる形」にした人物だった

韓力の名前が特に残った理由は、単に似た考えを出したからではなく、実際に市場へ届く形に近づけた からです。 NCBI Bookshelf では、韓力の装置が 2004年に中国市場へ出たことが紹介されており、ここがギルバートの時代との大きな違いになっています。発明の歴史では、「最初に発想した人」と「今につながる形にした人」が別になることは珍しくありません。電子タバコの歴史も、まさにその例として見ることができます。


今の日本では、言葉の受け取られ方が少しややこしい

なお、現在の日本では 電子たばこ加熱式たばこ が混同されやすい点にも注意が必要です。厚生労働省は、電子たばこを「液体を加熱して煙霧を発生させる製品」、加熱式たばこを「たばこ葉やその加工品を電気で加熱する製品」と分けています。一方で消費者庁も、電子たばこは 加熱式たばこと混同されやすい と説明しており、市場や日常会話では両者がまとめて受け取られることも少なくありません。発明史を知ると、そもそも電子タバコがどの製品群を指していたのかも見えやすくなります。


まとめ

電子タバコの発明者として最もよく知られているのは、2003年に現代型の装置を開発した中国の薬剤師・韓力(Hon Lik) です。関連特許の出願は2003年、製品の市場投入は2004年で、この流れが「2003年発明」と言われる理由になっています。いっぽうで、1963年のハーバート・A・ギルバート には、燃焼しない吸引装置の先行特許がありました。電子タバコの歴史は、最初の着想現代型として広まった実用化 を分けて見ると、ぐっと理解しやすくなります。


参考情報

  • Hon Lik「Electronic atomization cigarette」Patent US8490628B2
  • Herbert A. Gilbert「Smokeless non-tobacco cigarette」Patent US3200819A
  • National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion (US) Office on Smoking and Health
    「Introduction, Conclusions, and Historical Background Relative to E-Cigarettes」
    In: E-Cigarette Use Among Youth and Young Adults: A Report of the Surgeon General, 2016
  • 厚生労働省「電子たばこに係る注意喚起」

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