ファンタジーとは、ひとことで言えば現実とは違う法則や存在を前提にして物語を組み立てるジャンルです。日常会話では「空想」や「夢のような話」という意味でも使われますが、本や映画、ゲームの話になると、想像上の世界や超自然的な存在を含む作品を指す言葉として使われます。辞書では fantasy を「想像によって生まれたもの」や「奇妙な設定や登場人物を含む想像上の物語」と説明しており、百科事典でも「奇妙な舞台」や「超自然的・不自然な存在」に支えられる物語ジャンルとして扱っています。
言葉としてのファンタジーは何を指すのか
まず、ファンタジーはジャンル名だけを指す言葉ではありません。もともとこの語には、想像力、空想、心の中に思い描く像といった意味があります。語源をたどると、中世英語を経て、後期ラテン語の phantasia、さらにその元になったギリシャ語の phantasia(φαντασία)にさかのぼり、その中心には「目の前にないものを心に思い浮かべること」という感覚がありました。だから、ファンタジーが「空想」という意味でも、「物語ジャンル」という意味でも使われるのは自然な流れです。
この語の面白いところは、現実から離れた想像そのものを表しつつ、そこから想像上の物語全体を指すようになった点です。つまり、ファンタジーは単なる飾り言葉ではなく、「想像力が形になった物語」を示す言葉として広がってきたわけです。
ジャンルとしてのファンタジーは何が特徴なのか
ファンタジーというと、魔法使い、竜、城、剣の世界を思い浮かべる人が多いはずです。もちろんそれも代表的な形ですが、ファンタジーらしさは魔法が出るかどうかだけで決まるわけではありません。大事なのは、現実には存在しないものが、その作品の中では世界の前提として受け入れられていることです。異世界がある、精霊が暮らしている、時間の流れが違う、死者と会話できる。そうした不思議が特別な例外ではなく、世界の土台になっているとき、その作品はファンタジーとして読まれやすくなります。
ブリタニカでも、ファンタジーは「奇妙な舞台」と「奇妙な登場人物」に支えられるジャンルだと説明されています。ここでいう奇妙さは、単に変わっているという意味ではなく、現実の法則だけでは成り立たない不思議さです。だから、中世風の王国が舞台でなくても、現代の町に異界や妖精が入り込む作品なら十分にファンタジーになりえます。見た目よりも、その世界がどんな前提で動いているかのほうが大切なのです。
昔話や神話とはどう違うのか
昔話との違い
ファンタジーは、昔話や童話とかなり近いところがあります。ブリタニカでは fairy tale(昔話・童話)を、驚くような出来事や魔法的な要素を含む物語だと説明しています。たしかに、変身、怪物、試練、魔法の助けといった要素は、昔話にもファンタジーにもよく出てきます。
ただ、違いもあります。昔話は「むかしむかし」で始まるように、時間や場所があえてあいまいにされやすく、語り継がれてきた型を持っています。これに対してファンタジーは、近代以降の文学や娯楽作品として、作者が意識的に世界の歴史や地理、種族、ルールまで作り込む傾向が強いジャンルです。昔話が共有されてきた物語の型だとすれば、ファンタジーはそこから発展した、設計された世界の物語と見るとつかみやすくなります。
神話との違い
神話もまた、ファンタジーと近い関係にあります。神々、英雄、怪物、異界といった要素は神話にも数多く現れます。ただ、ブリタニカが説明するように、神話は宗教や共同体の起源、世界の成り立ち、神と人間の関係と深く結びついてきました。また、神話と他の物語形式の境界は固定的ではないものの、神話には単なる娯楽以上の役割があると考えられてきました。
それに対してファンタジーは、そうした古い語りの力を受け継ぎながらも、近代以降の作者が意識的に組み立てた物語ジャンルとして読まれます。神話が世界観そのものを支える語りだとすれば、ファンタジーはその不思議さを借りながら、読者を別の現実へ連れていくために作られた物語だと言えます。
SFとはどこが違うのか
ファンタジーとよく並べて語られるのが SF です。二つは近い棚に置かれがちですが、同じものではありません。ブリタニカでは、SF は未来や科学技術に基づく傾向が強く、ファンタジーは想像上の世界と魔法的・神話的存在を特徴とすると説明しています。
大まかに言えば、その世界の不思議さを科学や技術で支えようとするなら SF 寄り、世界の不思議そのものを前提として受け入れるならファンタジー寄りです。もちろん境目がはっきりしない作品もあります。ただ、読者が「この世界ではそういうものなのだ」と受け入れる仕組みの違いを見ると、両者の差はかなり見えやすくなります。
ファンタジーの幅はかなり広い
ファンタジーは、中世風の異世界だけを指す狭い言葉ではありません。ブリタニカが挙げる代表例を見ても、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』、スウィフトの『ガリヴァー旅行記』、トールキンの『指輪物語』のように、時代も雰囲気もかなり違います。つまりファンタジーは、「この見た目なら成立する」という型ではなく、現実を少しずらして、別の法則で動く世界を見せる物語を広く含むジャンルです。
そのため、壮大な冒険ものもあれば、現実の町へ不思議が入り込む作品もあります。恋愛が中心でも、恐怖が強くても、成長物語でも、その世界の土台が現実離れした法則で成り立っていれば、やはりファンタジーとして読まれます。ファンタジーには、異世界を大きく描くものや、現実に近い世界へ不思議な要素が入り込むものなど、いくつかのタイプがあります。ここでは補足にとどめますが、種類ごとの違いまで見ていくと、このジャンルの広さはさらに分かりやすくなります。
なぜ今も人気があるのか
ファンタジーが長く読まれ続けている理由のひとつは、現実では体験できない世界を描きながら、現実の感情や悩みもきちんと映せるからです。友情、成長、喪失、権力争い、恐怖、希望といったテーマは、舞台が異世界でもしっかり伝わります。現実から少し距離を取った場所で人間の本質を描けるところに、このジャンルの強さがあります。古典から現代作品まで広く含められるのも、その懐の深さがあるからでしょう。
もうひとつは、ファンタジーが現実逃避だけで終わらないからです。現実とは違う世界に入ることで、逆に現実の見え方がはっきりすることがあります。異世界を読むことは現実を忘れることでもありますが、同時に現実を別の角度から見直すことでもあります。だからこそ、子ども向けにも大人向けにも広がり続けてきたのだと考えられます。
Q&A(よくある疑問)
まとめ
ファンタジーとは、ただの空想話ではなく、現実とは違う法則や存在を前提に物語を組み立てるジャンルです。言葉のもともとの意味には想像力や心に思い浮かべる像があり、ジャンルとしては奇妙な舞台や超自然的な存在を含む物語として発展してきました。昔話や神話、SF と重なる部分はありますが、世界の不思議を前提にして読者を別の現実へ連れていくところに、ファンタジーらしさがあります。
参考情報
- Merriam-Webster「fantasy」
- Encyclopaedia Britannica「Fantasy | Definition, Meaning, Genre, & Examples」
- Encyclopaedia Britannica「Fairy tale」
- Encyclopaedia Britannica「Myth – Relation of myths to other narrative forms」
- Encyclopaedia Britannica「Science fiction」
