9月26日はなぜ「台風襲来の日」?3つの大災害との関係

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9月26日は「台風襲来の日」と紹介されることがあります。

名前だけを見ると、「この日は統計的に台風が来やすいと証明された日なのでは?」と思うかもしれません。ところが、その意味は少し異なります。

9月26日が注目される大きな理由は、1954年の洞爺丸台風、1958年の狩野川台風、1959年の伊勢湾台風という甚大な災害が、異なる年の9月26日前後に日本へ大きな影響を与えたことです。内閣府の災害教訓資料でも、この日は「魔の9月26日」「台風の特異日」として取り上げられています。

ただし、9月26日だけ台風を引き寄せる特別な気象現象があるわけではありません。

なぜ異なる年の9月26日前後に、大きな台風災害が続いたのでしょうか。3つの台風をたどると、「台風襲来の日」という呼び名の背景と、9月の台風シーズンの特徴が見えてきます。

目次

9月26日が「台風襲来の日」と呼ばれるのはなぜ?

「台風襲来の日」という呼び名について、制定者や制定年を明記した公的な記録は確認できません。

民間の記念日紹介などでは「台風襲来の日」として取り上げられる一方、公的資料で確認できる表現は主に「魔の9月26日」「台風の特異日」です。

少なくとも、公的に制定された記念日であることは確認できず、民間では3つの台風災害との関係から「台風襲来の日」と紹介されています。

背景にあるのが次の3つの台風です。

年台風9月26日前後の主な出来事
1954年洞爺丸台風26日に大隅半島へ上陸。青函連絡船・洞爺丸などが遭難
1958年狩野川台風26日に伊豆半島付近へ接近し、夜から27日未明に関東を通過
1959年伊勢湾台風26日に紀伊半島へ上陸し、伊勢湾沿岸を中心に甚大な被害

「3つとも9月26日に上陸した」と簡略化して紹介される場合もありますが、厳密には少し違います。

狩野川台風は26日21時過ぎに伊豆半島南端をかすめ、27日0時ごろ三浦半島付近、1時ごろ東京付近を通過しています。

3つの台風はいずれも9月26日前後に日本へ大きな影響を与えましたが、発生した年も経路も同じではありません。

「上陸」と「接近」は同じ意味ではない

台風の記録を見ると、「上陸」「接近」「通過」といった表現が使い分けられています。

気象庁では、台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸に達した場合を「上陸」と呼びます。一方「接近」は、台風の中心が対象地点や地域の気象官署などから300km以内に入ることを指します。

そのため、ある地域で大きな被害が出たからといって、必ずしもその場所へ台風の中心が上陸したとは限りません。

過去の台風を日付だけで比べるときも、「上陸した日なのか」「接近して大雨や暴風をもたらした日なのか」まで見ると、資料による表現の違いも理解しやすくなります。

9月26日前後に大きな被害をもたらした3つの台風

異なる年に発生した3つの台風はいずれも9月26日前後と深く関係していますが、被害の現れ方はそれぞれ異なります。

船舶を襲った暴風と高波、河川を氾濫させた大雨、沿岸部へ押し寄せた高潮。同じ「台風災害」でも、被害を大きくする要因は一つではありません。

1. 洞爺丸台風―青函連絡船を襲った暴風と高波

1954年の台風第15号、いわゆる洞爺丸(とうやまる)台風は、9月26日2時ごろ鹿児島湾から大隅半島北部へ上陸しました。

その後、九州や中国地方を非常に速い速度で進み、日本海へ抜けてからも発達。北海道へ接近した夜には暴風が吹き荒れました。

函館港から出港した青函連絡船「洞爺丸」をはじめ、5隻の青函連絡船が暴風と高波によって遭難しました。

気象庁の記録では、洞爺丸だけでも乗員・乗客1,139人が死亡しています。台風全体では死者1,361人、行方不明者400人という大きな被害になりました。

この台風は、青函連絡船の遭難をはじめ甚大な被害をもたらした気象現象として、現在も気象庁の名称一覧に「洞爺丸台風」と記録されています。

2. 狩野川台風―風だけでなく大雨が被害を広げた

1958年の狩野川(かのがわ)台風では、台風そのものの風に加えて、前線の活動が活発になったことで大雨が深刻な被害をもたらしました。

台風第22号は9月26日21時過ぎに伊豆半島南端をかすめ、27日0時ごろ三浦半島、1時ごろ東京付近を通過しました。

東海・関東では激しい雨となり、狩野川の氾濫や土砂災害、市街地の浸水が相次ぎます。

気象庁によると、死者888人、行方不明者381人。合わせて1,200人を超える人が亡くなるか行方不明になる災害となりました。

狩野川台風では、暴風だけでなく大雨による河川氾濫や土砂災害が被害を大きくしました。台風によって暖かく湿った空気が流れ込み、前線の活動が活発になれば、中心から離れた場所でも激しい雨になることがあります。

3. 伊勢湾台風―高潮がもたらした戦後屈指の台風災害

翌1959年9月26日に日本へ上陸したのが伊勢湾台風です。

台風第15号は26日18時ごろ、潮岬(しおのみさき)の西へ上陸し、紀伊半島から東海地方を通過しました。

特に甚大だったのが伊勢湾沿岸の高潮被害です。強風や高波に加えて潮位が高くなる条件も重なり、低い土地を中心に広い範囲が浸水しました。

死者・行方不明者は5,000人を超え、戦後の日本で特に大きな人的被害を出した台風災害として知られています。

伊勢湾台風は、その後の日本の防災制度にも大きな影響を与えました。災害を受けて防災体制の見直しが進み、1961年には災害対策の基本となる災害対策基本法が制定されています。

9月26日という日付が強く記憶される背景には、1954年から1959年にかけて、異なる年の同じ時期にこれほど大きな台風災害が続いたことがあります。

なぜ3つの台風には名前が付いている?

普段の台風は「台風第○号」と呼ばれることが多いため、「洞爺丸台風」「狩野川台風」「伊勢湾台風」という名前を不思議に感じる人もいるでしょう。

気象庁では、顕著な災害をもたらした自然現象について、災害の経験や教訓を後世へ伝えることなどを目的として名称を定める場合があります。

この3つは、通常の台風番号とは別に、顕著な災害をもたらした気象現象として気象庁が名称を定めた台風です。

  • 1954年台風第15号 → 洞爺丸台風
  • 1958年台風第22号 → 狩野川台風
  • 1959年台風第15号 → 伊勢湾台風

気象庁の資料では、台風への名称付与が始まったのは1958年の狩野川台風からとされています。その際、1954年の台風第15号にもさかのぼって「洞爺丸台風」という名称が付けられました。

翌1959年の台風第15号も甚大な被害をもたらし、「伊勢湾台風」と命名されています。

3つはいずれも、現在も気象庁が名称を定めた気象現象の一覧に掲載されています。

9月26日は本当に「台風の特異日」なの?

異なる年の9月26日前後に3つの大きな台風災害が起きたことから、9月26日は「台風の特異日」と呼ばれることがあります。

ただし、9月26日そのものに台風が上陸しやすくなる特別な大気の仕組みが確認されているわけではありません。

「特異日」という言葉だけを見ると、毎年その日に同じ気象現象が起こりやすいように感じるかもしれません。しかし9月26日の場合、歴史的に大きな台風災害が、異なる年の9月26日前後に偶然集中したことが強く印象づけられています。

そのため、「9月26日は統計上、日本で最も台風が来る日」と断定できる公的な統計は確認できません。 また、9月26日だから台風が来るという意味でもありません。

「台風襲来の日」という呼び名から、将来の台風の発生や日本への上陸日を予測することはできません。

それでも9月に台風が多いのはなぜ?

9月26日だけが特別なわけではありませんが、9月そのものは日本へ台風が接近・上陸しやすい時期です。

気象庁の1991~2020年の平年値では、日本への台風上陸数は9月が月平均1.0個で最も多く、8月の0.9個が続きます。日本への接近数も8月と9月はともに多い時期です。

夏から秋へ季節が進むと、太平洋高気圧の位置や勢力も変化します。9月以降になると、南の海上から北上した台風が日本付近で向きを変え、放物線を描くような経路で通過する例も増えてきます。

さらに、この時期には秋雨前線が日本付近に現れることがあります。

台風から暖かく湿った空気が流れ込むことで前線の活動が活発になると、台風の中心から離れた場所でも大雨になる場合があります。狩野川台風のように、風だけではなく雨による災害が大きくなることもあります。

9月は、日本へ台風が接近・上陸しやすい季節にあたります。これは「9月26日」という特定の日付とは分けて考える必要があります。

なお、日本では昔から立春から数えて210日目ごろの「二百十日」や220日目ごろの「二百二十日」も、風雨に注意する時期として語られてきました。

これらも特定の日に必ず台風が来るという意味ではありませんが、夏の終わりから秋にかけて風雨への警戒が意識されてきたことを伝える季節の言葉です。

まとめ

9月26日が「台風襲来の日」と呼ばれる背景には、1954年の洞爺丸台風、1958年の狩野川台風、1959年の伊勢湾台風という甚大な台風災害が、異なる年の9月26日前後に大きな被害をもたらしたことがあります。

ただし、3つの台風がすべて同じ形で9月26日に上陸したわけではありません。「上陸」「接近」「通過」には違いがあり、狩野川台風は9月26日から27日にかけて関東へ大きな影響を与えました。

また、9月26日にだけ台風が来やすくなる特別な気象条件が確認されているわけでもありません。一方で、9月は実際に日本への台風接近・上陸が多い時期です。

「台風襲来の日」は、未来の天候を日付から予測するための日ではありません。1950年代に異なる年の9月26日前後で起きた大きな台風災害を知り、日本の台風シーズンや災害史を振り返るきっかけとなる呼び名です。

参考情報

  • 気象庁「洞爺丸台風 昭和29年(1954年)9月24日~9月27日」
  • 気象庁「狩野川台風 昭和33年(1958年)9月26日~9月28日」
  • 気象庁「伊勢湾台風 昭和34年(1959年)9月26日~9月27日」
  • 気象庁「台風による災害の例」
  • 気象庁「顕著な災害を起こした自然現象の名称について(平成30年7月9日)」
  • 内閣府「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 1959 伊勢湾台風」
  • 内閣府「令和5年版 防災白書 伊勢湾台風を契機とした総合的な防災体制の確立」
  • 名古屋大学宇宙地球環境研究所「気象50のなぜ+10 33. 9月26日は台風が上陸する日?」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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