価値観はどうやって生まれる?家庭や経験から形づくられる理由

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「自分にとっては当たり前なのに、なぜ相手はまったく違う考え方をするのだろう」と感じることがあります。

お金はできるだけ貯めたい人もいれば、経験のためなら使いたい人もいます。安定した生活を重視する人がいる一方で、新しいことへの挑戦を優先する人もいます。

こうした判断の違いに関わるのが「価値観」です。

価値観は生まれた瞬間に完成しているものではありません。家庭で触れる考え方をはじめ、友人や学校との関わり、文化や社会、その人自身が積み重ねてきた経験などが重なりながら、「何を大切にするか」という優先順位が形づくられていきます。

では、価値観はいつ頃から生まれ、何から影響を受けながら育っていくのでしょうか。

目次

価値観とは「何を大切にするか」の優先順位

価値観という言葉は日常的に使われていますが、単なる好みや、その場ごとの意見とは少し違います。

心理学の価値研究では、人が人生や行動の指針として重視する目標や考え方を「価値」として扱います。

価値研究で広く知られる心理学者シャローム・シュワルツの理論でも、価値は特定の一場面だけではなく、さまざまな状況で選択や行動を方向づけるものとして捉えられています。

たとえば、

「安定した生活を大切にしたい」
「新しいことへ挑戦したい」
「自分の力で成果を上げたい」
「周囲の人を助けたい」

といった考えです。

「この映画が好き」は主に好みです。「この制度には反対だ」という考えは、特定の問題への意見や態度として表れます。

それに対して「自由を大切にしたい」「安全を重視したい」といった価値は、一つの対象だけではなく、さまざまな場面での判断に関わります。

一人の中にも複数の価値がある

人は一つの価値だけを持っているわけではありません。

「安定したいけれど、新しいことにも挑戦したい」
「自分の希望も大切だけれど、周囲への配慮もしたい」

というように、一人の中にも複数の大切なものがあります。

そこで違いが表れやすいのが、どの価値をより優先するかという順番です。

たとえば転職を考える場面でも、

「収入や生活が安定している今の職場に残りたい」

という人もいれば、

「多少不安定でも、やりたい仕事へ挑戦したい」

という人もいます。

どちらかだけに価値観があるわけではありません。「安定」と「挑戦」のどちらをより重視するかが違うのです。

価値観は何によって形づくられる?

「価値観は育った家庭で決まる」と考えられることがあります。

家庭は重要な社会化環境の一つですが、それだけですべてが決まるわけではありません。成長する中で出会う人、暮らしている社会、その人自身が経験した出来事なども関わります。

1. 家庭で「何を大切にするか」に触れる

幼い子どもにとって、家庭は長い時間を過ごす身近な環境です。

「約束を守る」「困っている人を助ける」「勉強を大切にする」「お金を計画的に使う」といった考え方は、言葉で教えられるだけではありません。

周囲の大人が何を褒め、何を注意し、普段どのような選択をしているのかを見ることも、その家庭で大切にされている考え方を知る手がかりになります。

人が周囲との関わりを通じて、社会の規範や考え方、行動の仕方などを身につけていく過程は、社会化(socialization=社会の中で考え方や行動の仕方を学んでいく過程)と呼ばれます。

ただし、子どもは周囲から示された考えをすべて同じように受け入れるわけではありません。

同じ言葉を聞いても、自分の経験や感じ方を通して受け止めます。そのため、同じ家庭で暮らしていても、親子の価値観が完全に一致するとは限りません。

家庭での価値形成は親から子へ一方向に伝わるだけではなく、子ども自身が周囲の考えをどう受け止めるかも関わる過程として捉えられています。

2. 友人や学校から家庭とは違う考え方を知る

成長して生活範囲が広がると、触れる考え方も増えていきます。

学校では、家庭とは違う考え方を持つ友人や先生に出会います。

「自分の家では当たり前だったけれど、友達の家では違った」

という経験をすると、それまで普通だと思っていた基準が、すべての人に共通するわけではないと気づくこともあります。

友人関係と価値の関係を追跡した研究では、もともと似た価値を持つ相手と親しくなりやすい傾向だけでなく、友人との関わりの中で価値の優先順位が影響を受けることも報告されています。

つまり、価値観が似ているため親しくなる面と、親しく過ごす中で互いに影響を受ける面の両方があると考えられます。

家庭の外で異なる考え方に触れることも、「自分は何を大切にしたいのか」を形づくる材料になります。

3. 文化や社会も価値観の背景になる

価値観は家族や友人だけから生まれるものでもありません。

人は、ある時代や社会の中で生活しています。教育、社会制度、経済状況、宗教、地域の慣習などを通じて、多くの考え方に触れます。

社会や文化によって、特定の価値が重視されやすい傾向には違いがあります。

ただし、

「この国の人なら全員こう考える」
「この文化の人は必ずこの価値観を持つ」

ということではありません。

シュワルツの価値研究では、文化を越えて共通して捉えられる価値の構造が示される一方、何をどれほど重視するかという優先順位には個人差や集団差があります。

文化や社会は、何を大切だと感じるかに関わる背景の一つです。その人自身の考え方を一つに決めるものではありません。

4. 本人の経験や個人差も重なっていく

同じ家で育った兄弟姉妹でも、まったく同じ人生を経験するわけではありません。

友人関係、先生との出会い、習い事、進学先、成功した経験、失敗した経験などは一人ひとり違います。

さらに、同じ出来事が起きても、それを本人がどのように受け止めるかまで同じとは限りません。

価値の個人差を調べた双生児研究では、遺伝的要因の関与を示す結果がある一方で、家族で共有されていない環境や個別の経験も関係することが報告されています。

ここでいう遺伝的要因は、「特定の価値観を直接決める遺伝子がある」という意味ではありません。

また、研究で示された遺伝的寄与の割合を使って、特定の個人について「この価値観の何%が遺伝で決まった」と分けることもできません。

価値観の個人差を「生まれつきか、育ちか」という二択だけで説明することは難しく、研究では遺伝的要因と環境要因の双方が検討されています。

価値観はいつ頃から形づくられる?

価値観は、大人になったとき初めて持つものではありません。

2026年に公表された、5~14歳の子どもと初期青年期を対象とする研究45本の系統的レビューでは、この年代でも価値のまとまりや優先順位を捉えられることが示されています。

また、年齢が上がるにつれて、価値の優先順位がより安定していく傾向も報告されています。

つまり、子どもの頃からすでに「何をより大切にするか」という個人差が見られ、その優先順位は成長する中でしだいに安定していくということです。

幼い時期には家庭が重要な社会化環境の一つですが、成長とともに学校や友人など、家庭以外で関わる人や場面も増えます。

さらに、自分自身で選択する機会が増えるにつれて、周囲から示された考え方をそのまま受け取るだけでなく、「自分はどう考えるか」を経験する場面も増えていきます。

価値観の形成は、完成した考え方を誰かから渡されるというより、周囲から触れた考え方と、自分自身の経験を重ねる中で、何を優先するかが少しずつ形になっていく過程と捉えられます。

大人になったら価値観は変わらない?

価値観は成長とともに比較的安定していきますが、大人になった時点ですべて固定されるわけではありません。

16~84歳を長期間追跡した研究でも、価値には一定の安定性が見られる一方、成人期にも価値の優先順位には変化が確認されています。

生活環境や社会的な役割が変わる中で、それまでとは異なるものを以前より重視するようになることもあります。

たとえば、「挑戦」と「安定」の両方を大切にしている人でも、人生のある時期には挑戦をより重視し、別の時期には安定をより重視することがあります。

これは過去の価値観がなくなるというより、複数ある価値の中で優先する順番が変化したと見ることができます。

価値観は子どもの頃から形づくられ、成長とともに一定の安定性を持つようになります。それでも、その後の経験によって変化する余地は残されています。

まとめ

価値観は、一つの原因によって作られるものではありません。

幼い頃に家庭で触れる考え方をはじめ、学校や友人との関係、暮らしている文化や社会、本人自身が積み重ねてきた経験などが関わりながら、「何を大切にするか」という優先順位が形づくられていきます。

子どもの段階でも価値の違いは見られ、成長につれてその優先順位はしだいに安定していきます。ただし、大人になってから完全に変わらなくなるわけでもありません。

また、家庭の影響が大きいからといって、親と子が必ず同じ価値観になるわけではなく、価値観の個人差を生まれつきか環境かのどちらか一方だけで説明することもできません。

価値観は、周囲から触れた考え方と、その人自身が重ねてきた経験が関わり合う中で、「自分は何をより大切にするのか」という形を少しずつ持つようになっていきます。

参考情報

  • Evelia Murcia-Álvarez, Iva Tendais, Alice Ramosほか「The development of social values in childhood and early adolescence: a systematic review」Children and Youth Services Review.
  • Shalom H. Schwartz「An Overview of the Schwartz Theory of Basic Values」Online Readings in Psychology and Culture.
  • Joan E. Grusec「Socialization Processes in the Family: Social and Emotional Development」Annual Review of Psychology.
  • Jan Cieciuch, Maria Kwiatkowska, Martin Kindschiほか「Peers and value preferences among adolescents in school classes: a social network and longitudinal approach」European Journal of Psychology of Education.
  • Louise Twito, Ariel Knafo-Noam「Beyond culture and the family: Evidence from twin studies on the genetic and environmental contribution to values」Neuroscience & Biobehavioral Reviews.
  • Ingmar Leijen, Hester van Herk, Anat Bardi「Individual and generational value change in an adult population, a 12-year longitudinal panel study」Scientific Reports.

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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