神社の秋の行事予定を見ると、「秋季例祭(しゅうきれいさい)」という言葉を目にすることがあります。
神輿や屋台が並ぶ「秋祭り」と同じものに見えるかもしれませんが、秋季例祭は単に秋に開かれる催しを意味する言葉ではありません。
秋季例祭とは、その神社にとって特に大切な「例祭」を秋に行うものです。 例祭の日は、神社が鎮座した日や御祭神(ごさいじん)と縁の深い日などに定められるため、全国共通の日付があるわけではありません。
秋は収穫への感謝と結びついた祭りが多い季節ですが、秋季例祭のすべてが収穫祭というわけでもありません。「秋祭り」「例大祭」「新嘗祭」との違いまでたどると、神社の秋のお祭りがどのようなものなのか見えてきます。
秋季例祭とは秋に行われる神社の大切な「例祭」
秋季例祭は、文字通り秋の時期に行われる例祭です。
神社本庁では、例祭を神社の鎮座の日や御祭神に特に縁の深い日に行う祭りとし、その神社にとって最も重要な祭典と説明しています。祭祀の区分では「大祭」にあたります。
「例祭」は、毎年定められた時期に行われる恒例の祭りです。境内で行われる催しそのものよりも、神前で神さまへ祈りや感謝を捧げる祭典が中心になります。
「秋季例祭」は全国共通の名称ではない
秋に重要な祭典を行う神社でも、名前は一つに統一されていません。
「秋季例祭」のほか、
- 秋季例大祭
- 例大祭
- 例祭
- 秋季祭
などの名称が使われています。
神社本庁の祭祀区分では「例祭」そのものが大祭に位置づけられており、「秋季例祭」が独立した全国共通の祭祀区分になっているわけではありません。
そのため、ある神社では「秋季例祭」、別の神社では「秋季祭」と書かれていても、名称だけを見て祭りの重要度を比較することはできません。
秋に神社の祭りが多いのはなぜ?
日本では昔から、季節の移り変わりと農耕が祭りに深く関わってきました。
春には作物の豊作を願い、秋には無事に収穫できたことを神さまへ感謝する祭りが各地で行われています。米や作物を育てて暮らしてきた人々にとって、秋は一年の実りを神さまへ報告する大切な時期でもありました。
こうした背景から、秋には現在も多くの神社で祭りが行われています。ただし、例祭の日は神社の鎮座や御祭神にまつわる日など、その神社独自の由緒に基づいている場合もあります。
秋の収穫への感謝と結びつく祭りもあれば、神社の歴史に由来して秋に例祭を迎えるところもあるということです。
秋季例祭では何をする?
秋季例祭の内容は神社や地域によって違いますが、中心となるのは神前で行われる祭典です。
一般にはお祓いを行い、神さまへ神饌(しんせん)と呼ばれる食べ物や酒などを供え、神職が祝詞(のりと)を奏上します。参列者が玉串を捧げて拝礼することもあります。
さらに地域によって、神輿、山車、だんじり、神楽、舞、獅子舞などが加わります。
私たちが町中で目にするにぎやかな神輿や奉納芸能だけでなく、その前後で行われる神前の祭典まで含めて、一連の祭礼が成り立っています。
神輿が出ない秋季例祭もある
「神社のお祭り」と聞くと、神輿や山車を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、神輿が出ないからといって例祭ではないわけではありません。
神さまが神輿や山車に遷り、氏子地域を巡る祭りは「渡御祭(とぎょさい)」と呼ばれます。大規模な渡御が行われる神社もあれば、社殿での祭典を中心に執り行う神社もあります。
氏子(うじこ)とは、その氏神神社が鎮座する周辺の一定地域に暮らす人々を指します。
地域によっては、氏子が神輿や山車、奉納行事、祭礼の準備などを担いながら、祭りを受け継いできました。秋季例祭には神前で祈りを捧げる祭典という面だけでなく、地域の人々が世代を越えて支えてきた行事という側面もあります。
祭典のあとには「直会」が行われることもある
祭典のあとには、直会(なおらい)が行われることがあります。
直会では、神さまへ供えた食べ物や御酒を神職や参列者がいただきます。現在では御神酒をいただく形など、簡略な方法で行われる場合もあります。
単なる「祭りのあとの宴会」と同じものではなく、祭典に伴う行事の一つです。祭典に奉仕する際に行う斎戒を解き、日常へ戻る節目という意味も持っています。
屋台や神輿からは見えにくい部分にも、神社の祭りならではの習わしが残されています。
秋季例祭と秋祭り・例大祭・新嘗祭は何が違う?
秋季例祭について調べると、「秋祭り」「例大祭」「新嘗祭(にいなめさい)」といった似た言葉も出てきます。
同じ祭礼について複数の呼び方が使われる場合もありますが、言葉が指している範囲や祭典の位置づけには違いがあります。
| 名称 | 主な意味 |
|---|---|
| 秋季例祭 | 秋に行われる、その神社の例祭 |
| 秋祭り | 秋に行われる祭りを幅広く表す呼び方 |
| 例大祭 | 例祭を「例大祭」と呼ぶ神社もある。神社本庁の祭祀区分では例祭そのものが大祭にあたる |
| 新嘗祭 | 11月23日に新穀を神さまへ供え、収穫に感謝する祭り |
秋祭りは幅の広い呼び方
「秋祭り」は、秋に行われる祭りを広く表す一般的な言葉です。
地域の秋祭りが、その土地の神社の秋季例祭に合わせて行われることもあります。その場合、住民の間では「秋祭り」と呼ばれていても、神社の年間行事には「秋季例祭」や「例祭」と記載されていることがあります。
逆に、秋に行われる祭りがすべて例祭というわけでもありません。
「秋祭り」は季節を基準にした幅広い呼び方で、「秋季例祭」はその神社の例祭を秋に行う場合に使われる名称です。
例祭と例大祭は別の祭りとは限らない
「例祭」と「例大祭」は、名前だけを見ると格の違う別々の祭りに思えるかもしれません。
神社本庁の祭祀区分では、例祭そのものが「大祭」にあたります。そのため神社によって、「例祭」「例大祭」「秋季例大祭」など異なる呼称が使われています。
「例大祭」という名称が付いているからといって、必ずその下に別の「例祭」があるわけではありません。名称や位置づけは各神社によって異なり、年間祭典などではそれぞれの例祭が案内されています。
新嘗祭は11月23日に行われる別の祭り
秋季例祭と混同しやすい祭りの一つが、新嘗祭(にいなめさい)です。
新嘗祭は11月23日に行われ、その年に収穫された新穀を神さまへ供え、収穫に感謝する祭りです。宮中で行われる新嘗祭に合わせ、全国の神社でも新穀の収穫に感謝する祭りが行われます。
秋季例祭にも収穫への感謝が含まれる地域がありますが、新嘗祭とは同じものではありません。
秋季例祭は各神社の由緒などに基づいて日程が決まり、新嘗祭は11月23日に行われます。
秋季例祭の日は神社ごとに違う
秋季例祭には全国共通の日付がありません。
例祭は神社の鎮座の日や御祭神と縁の深い日などに行われるため、9月に迎える神社もあれば、10月や11月に重要な祭典を行う神社もあります。
秋に代表的な祭典を行う神社を比べると、時期の幅がよく表れています。
| 神社 | 祭典名 | 主な日程 | 主な内容・特徴 |
|---|---|---|---|
| 鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市) | 例大祭 | 9月14日~16日、例大祭は9月15日 | 宵宮祭、例大祭、神幸祭、流鏑馬神事など |
| 霧島神宮(鹿児島県霧島市) | 例祭 | 9月19日 | 神宮にとって特に重要な祭事として行われる |
| 日光東照宮(栃木県日光市) | 秋季祭 | 10月16日・17日 | 16日に神事流鏑馬、17日に秋季祭・渡御祭 |
| 明治神宮(東京都渋谷区) | 秋の大祭・例祭 | 11月1日 鎮座記念祭、11月3日 例祭 | 秋の大祭に伴う奉祝行事が行われ、11月3日に例祭を斎行 |
鶴岡八幡宮では、9月15日の例大祭だけでなく、前後の日にも宵宮祭や神幸祭、流鏑馬神事などが行われます。一日だけの祭典ではなく、9月14日から16日にわたる一連の祭礼となっています。
霧島神宮では9月19日に例祭があり、一年の中でも特に重要な祭事として位置づけられています。鶴岡八幡宮と同じ9月でも、日程や祭礼の構成は異なります。
日光東照宮では10月16日に神事流鏑馬、17日に秋季祭と渡御祭「百物揃千人武者行列」が行われます。春には例大祭があり、秋には「秋季祭」という名称が使われている点も特徴です。
明治神宮では11月1日に鎮座記念祭、11月3日に例祭が行われます。11月初めには秋の大祭に伴う奉祝行事もあり、秋の祭典が11月に行われる代表例の一つです。
この4例だけでも、秋の重要な祭典が9月から11月まで幅広い時期に行われていることが分かります。
日曜日などに秋季例祭を行う神社もある
神社によっては、秋季例祭を「10月第4日曜日」のように曜日を基準として定めている例もあります。
この場合、開催日は毎年少しずつ変わります。
また、神前で行う祭典と神輿渡御、奉納芸能、露店などが別の日や時間帯に設定されることもあります。神事の一部が氏子や関係者のみで執り行われる場合もあります。
特定の神社の秋季例祭を見に行く場合は、過去の日付だけでなく、その年の神社公式サイトや公式SNS、自治体・観光協会などの案内を確認しておくと確実です。
まとめ
秋季例祭とは、その神社にとって重要な「例祭」を秋に行うものです。
例祭は神社の鎮座の日や御祭神と縁の深い日などに行われ、時期は神社によって異なります。秋に行われる祭典でも、「秋季例祭」「例大祭」「秋季祭」など名称はさまざまです。
神前では神饌を供え、祝詞を奏上するなどの祭典が行われます。地域によっては神輿や山車、神楽なども加わり、氏子をはじめとする地域の人々によって受け継がれてきました。
普段「秋祭り」と呼んでいる行事も、神社の予定を見ると「秋季例祭」や「例祭」と記されていることがあります。にぎやかな催しの背景にある祭典の意味を知ると、身近な秋祭りの見え方も少し変わるかもしれません。
参考情報
- 神社本庁「恒例祭」
- 神社本庁「神社のお祭りとは」
- 神社本庁「直会」
- 神社本庁「氏神さまと崇敬神社」
