海面上昇はなぜ起こる?1cmで見える地球規模の変化

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海面上昇と聞くと、氷が解けて海の水が増える様子を思い浮かべる人は多いかもしれません。たしかに、陸上の氷が解けて海へ流れ込むことは、海面上昇の大きな理由です。

ただ、海面が上がる理由はそれだけではありません。海水は温まると膨張します。つまり、新しい水が大量に加わらなくても、海そのものの体積が少し大きくなれば、平均的な海面は上がります。

では、世界の海面が平均で1cm上がるとは、どれくらい大きな変化なのでしょうか。1cmという小さな数字から見ると、海面上昇のスケールを実感しやすくなります。


目次

海面上昇とは何が上がることなのか

海面上昇とは、世界の海の平均的な高さが、長い期間で上がっていく現象です。

海は毎日、同じ高さで静かに止まっているわけではありません。潮の満ち引き、風、気圧、波、海流などによって、海面はいつも動いています。台風や低気圧が近づくと、一時的に海面が高く見えることもあります。

そのため、ある港で今日だけ海面が高く見えたとしても、それだけで海面上昇とは言えません。海面上昇でよく使われるのは、世界全体の海面をならして見た「世界平均海面」という考え方です。

NASA(米航空宇宙局)は、人工衛星による観測が始まった1993年以降、世界平均海面が約10cm上がったとしています。また、2024年の世界平均海面は0.59cm上昇し、その年の上昇には海水の熱膨張が大きく関わったとされています。

年ごとの変化にはばらつきがあります。雨の降り方や陸上に一時的にたまる水の量によって、ある年だけ上昇幅が小さく見えることもあります。それでも、長い期間で見ると、世界平均海面は上昇傾向にあります。


海面上昇が起こる主な理由

海面上昇の大きな理由は、主に2つあります。

1つは、海水が温まって膨張すること。もう1つは、陸上にある氷が解けて海へ流れ込むことです。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)でも、世界平均海面の上昇は主に海水の熱膨張と、氷河・氷床の質量減少によって起こるとされています。

海水が温まると膨張する

水は温まると、体積が少し変わります。海水も同じです。

コップの水ではほとんど気づかない変化でも、海は地球表面の約7割を占める巨大な水の層です。NOAA(米海洋大気庁)によると、海の表面積は約3億6000万平方km、平均水深は約3,682mとされています。

この広い海全体で水温が変われば、わずかな膨張でも海面の高さに影響します。この場合、海に新しい水が足されたわけではありません。同じ量の水でも、温まって体積が増えることで、平均的な海面が上がります。

陸上の氷が解けると海水が増える

もう1つの大きな理由が、陸の上にある氷の減少です。

山岳氷河、グリーンランド氷床、南極氷床などは、もともと海の外にある氷です。これらが解けて川や氷河を通じて海へ流れ込むと、海水の量そのものが増えます。

ここで大切なのは、海に浮いている氷と、陸の上にある氷を分けて考えることです。海に浮かぶ氷は、氷全体の重さに見合う量の海水をすでに押しのけて浮いています。

そのため、海に浮いている氷が解けても、それだけで世界平均海面を大きく上げるわけではありません。厳密には、海水と氷、解けた淡水の密度差も関わりますが、陸上の氷が海へ流れ込む場合に比べると、直接の影響は小さいと考えられます。

一方、陸上の氷は、もともと海の外にたまっていた水です。それが海へ加わると、海水の量が増えます。海面上昇の話で氷河や氷床がよく注目されるのは、この違いがあるためです。

陸にある水の増減も少し関係する

海面は、海だけで決まるわけではありません。

雨として陸に降った水は、川、地下水、湖、雪、土壌の水分などとして一時的に陸にとどまることがあります。反対に、地下水のくみ上げなどによって、陸にあった水が最終的に海へ移ることもあります。

IPCCでは、海面変化には海水の熱膨張や氷の減少に加え、陸上の水の貯留変化も関わるとされています。主役ではありませんが、地球全体の水の移動を考えると、海と陸はつながっています。


海面上昇は温暖化とどう関係しているのか

海面上昇は、温暖化と深く関係している現象の一つです。

気温や海水温が上がると、海水の熱膨張が進みやすくなります。さらに、陸上の氷河や氷床も減りやすくなり、その水が海へ流れ込めば海水の量が増えます。

もう一つ大切なのが、海が熱を長くためこむことです。海はとても広く深いため、少しずつ熱をためこむだけでも、地球全体では大きな変化になります。NOAAも、海は地球の熱を大きく受け止める場所だとしています。

つまり、海面上昇は「今日暑いから明日すぐ大きく上がる」という短い話ではありません。海の温度、氷の量、陸上にとどまる水の量が、長い時間をかけて重なって表れる変化です。


海面上昇は世界中で同じように見えるわけではない

世界平均海面が上がっているとしても、すべての海岸で同じように上がるわけではありません。

地域ごとの差には、海流、風、海水温、塩分、地盤沈下、地殻変動などが関係します。ある地域では平均より大きく上がって見え、別の地域では小さく見えることがあります。

また、海面上昇は「海の高さ」だけでなく、「陸の高さ」との関係でも感じ方が変わります。地盤が沈んでいる地域では、海面そのものの上昇以上に、海が高くなったように見えることがあります。

干潟、砂浜、河口の町、低い島のような場所では、数cmの差でも満潮時や高潮時の見え方が変わることがあります。世界平均の数字と、身近な海岸での変化は、分けて見ると理解しやすくなります。


海面上昇の1cmはどれくらい大きいのか

ここからは、海面上昇の規模感を1cmで見てみます。

1cmと聞くと、とても小さく感じます。けれど、海面上昇の1cmは、世界中の海に広がる1cmです。地球全体で考えると、かなり大きな量になります。

NOAAによると、海の表面積は約3億6000万平方kmです。

この広さ全体を平均で1cm、つまり0.01m上げると考えると、必要な体積は次のようになります。

約3億6000万平方km × 1cm
= 約3,600立方km

1立方kmの水は、およそ10億トン、つまり1ギガトンに相当します。

そのため、世界平均海面を1cm上げるには、計算上は約3,600立方km、約3,600ギガトンの水に相当する体積変化が必要です。海水の密度まで細かく考えると質量は少し変わりますが、規模感としては「1cmで約3,600ギガトン相当」と覚えるとわかりやすいです。

これは、1mmなら約360立方km、10cmなら約3万6000立方kmにあたります。わずか1cmでも、世界の海全体に広げると、想像しにくいほど大きな量になります。

ただし、実際の海面上昇は、すべてが「水が追加された分」ではありません。海水が温まって膨張した分も含まれます。つまり、1cmの上昇は、氷が解けて増えた水と、海水の体積変化が重なった結果として見る必要があります。


1cm下げるには同じ量を減らせばいいのか

体積だけで考えるなら、世界平均海面を1cm下げるにも、約3,600立方km分の変化が必要です。

ただし、現実の海はお風呂の水のようにまっすぐ増えたり減ったりするものではありません。海水の量だけでなく、海水温、塩分、海流、風、気圧、陸地の上下動なども海面の見え方に関わります。

たとえば、海水が冷えて体積が小さくなれば、同じ水の量でも海面は下がる方向に働きます。反対に、陸上の氷が解けて海に入れば、海水の量が増えて海面は上がる方向に働きます。

さらに、海の水は水循環の中で動いています。海面の水は蒸発して水蒸気になり、雲をつくり、雨や雪として海や陸に降ります。陸に降った水も、川や地下水を通じて海へ戻るものがあります。

そのため、水量だけで海面を下げると考えるなら、長い期間、海へ戻りにくい形で陸上に水をとどめる必要が出てきます。現実には、その量が非常に大きいため、世界平均海面を人為的に1cm下げるには、規模だけを見ても非常に大きな前提が必要です。


1cmが小さく見えない理由

海面上昇の数字は、数mmや数cmで語られることが多いため、感覚的には小さく見えます。

けれど、世界平均海面の1cmは、地球全体の海に広がる1cmです。先ほどの計算のように、約3,600立方kmの水に相当する規模です。

NASAの観測では、1993年以降の世界平均海面上昇は約10cmに達しています。1cmが約3,600立方kmに相当すると考えると、10cmは計算上で約3万6000立方km分の体積変化にあたります。実際には熱膨張の分もあるため、すべてが新しく加わった水ではありませんが、海全体で見ると非常に大きな変化です。

世界気象機関(WMO)の「State of the Global Climate 2025(世界の気候の現状2025)」では、海が大きな熱の受け皿になっていることも示されています。海は大気や陸地と比べて熱を長くためこむため、海面の変化も短い期間だけでは見えにくい面があります。

1cmはものさしで見れば小さな長さです。けれど、海面上昇の1cmは、地球規模の熱や水の動きが積み重なった結果です。


海面上昇を身近に考えるポイント

海面上昇は、遠い国の島や未来の話として語られることがあります。

もちろん、場所によって影響の出方は違います。高い崖の海岸と、低い砂浜や河口の町では、同じ海面変化でも意味が変わります。低い土地では、高潮や満潮、大雨の水はけなどと重なることで、数cmの差が気になりやすくなる場合があります。

海面上昇は不安を感じやすいテーマですが、仕組みを知ると数字の受け止め方が少し変わります。まずは、海水が温まると膨張すること。陸上の氷が解けると海へ水が加わること。世界平均と地域の海面は同じではないこと。この3つを押さえると、ニュースの数字も理解しやすくなります。

そして、1cmという小さな単位を見ることで、海の大きさも実感しやすくなります。海面上昇は、水位だけの話ではなく、海の温度、氷、陸地、気候の変化が重なった結果として表れる現象です。


Q&A(よくある疑問)

海面上昇はなぜ起こるのですか?

主な理由は、海水が温まって膨張することと、陸上の氷が解けて海へ流れ込むことです。海に水が増えるだけでなく、同じ水でも温度が上がると体積が少し大きくなります。この2つが重なり、世界平均海面が上がります。

温暖化と海面上昇はどう関係していますか?

温暖化によって海水温が上がると、海水が膨張しやすくなります。また、陸上の氷河や氷床が減ると、その水が海へ流れ込みます。海は熱を長くためこむため、海面上昇は短期間では変化が見えにくい現象でもあります。

海面を1cm上げるにはどのくらいの水が必要ですか?

海の表面積を約3億6000万平方kmとして考えると、世界平均海面を1cm上げるには約3,600立方kmの体積変化が必要です。これは水にすると約3,600ギガトンに相当します。ただし、実際の海面上昇には海水の熱膨張も含まれます。

海面を1cm下げるには同じ量を減らせばいいのですか?

体積だけで見れば、1cm下げるにも約3,600立方km分の変化が必要です。ただし、海面は水の量だけでなく、海水温、海流、風、気圧、陸地の上下動にも影響されます。水は蒸発や雨、川を通じて循環するため、海から一時的に動かすだけでは十分とはいえません。

海に浮いている氷が解けると海面は上がりますか?

海に浮いている氷は、氷全体の重さに見合う量の海水をすでに押しのけて浮いています。そのため、解けても世界平均海面を大きく上げるわけではありません。厳密には密度差の影響もありますが、海面上昇に大きく関わるのは、陸上の氷河や氷床が解けて海へ流れ込む場合です。

海面上昇はどこでも同じですか?

同じではありません。世界平均では上がっていても、地域ごとに変化の大きさは違います。海流、風、海水温、地盤沈下、地殻変動などが関係します。そのため、世界平均の数字と、住んでいる地域の海岸で見える変化は分けて見ると理解しやすくなります。


まとめ

海面上昇は、海に水が増えるだけで起こる現象ではありません。海水が温まって膨張すること、陸上の氷が解けて海へ流れ込むことが大きな理由です。

世界の海の表面積を約3億6000万平方kmとして考えると、平均海面を1cm上げるには約3,600立方km、約3,600ギガトンの水に相当する体積変化が必要です。1cmは小さく見えても、地球全体に広げると非常に大きな量になります。

また、海面を1cm下げる場合も、単に水をどこかへ移せば終わりではありません。海の水は蒸発し、雨や雪になり、川や地下水を通じて戻る水循環の中にあります。海水温や陸上の水の動きも関わるため、海面は単なる水位だけでは説明できません。

海面上昇の数字は、海の温度、氷、陸地、気候の変化が重なった結果です。1cmという小さな単位から見ても、地球規模の水と熱の動きが少し身近に感じられます。


参考情報

  • NASA Sea Level Change Portal「NASA Analysis Shows Unexpected Amount of Sea Level Rise in 2024」
  • NOAA Ocean Exploration「How much of the ocean has been explored?」
  • IPCC「Chapter 9: Ocean, Cryosphere and Sea Level Change」
  • NOAA Climate.gov「Climate Change: Ocean Heat Content」
  • WMO「State of the Global Climate 2025」

この記事を書いた人

気になったテーマを中心に、公開情報や資料を読みながら記事をまとめています。背景や違いが見えにくい話題も、公式サイトや公開資料を確認しつつ、できるだけわかりやすく整理してお届けしています。

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