時代劇やアニメなどで耳にする一人称「妾(わらわ)」。どこか特別な立場の女性が使う、偉そうな言葉という印象を持つ人もいるかもしれません。しかし実は、「妾(わらわ)」は自分をへりくだって表す一人称でした。「妾(めかけ)」という名詞と混同されやすい言葉でもあり、意味を誤解されがちです。本記事では、「妾(わらわ)」が本来どのような意味で使われていたのか、そしてなぜ現代では特別な言葉に感じられるのかを、日本語の雑学として分かりやすく解説します。
「妾(わらわ)」とは本来どんな言葉?
結論から言うと、「妾(わらわ)」は自分を低く表すための一人称です。
現代の感覚では想像しにくいかもしれませんが、古い日本語では、一人称そのものが話し手の立場や姿勢を表す役割を持っていました。
「妾(わらわ)」は、「私はまだ未熟な存在です」「私はあなたより下の立場です」といったニュアンスを含んでおり、相手を立てるための言い回しとして使われていたと考えられています。
一人称としての「妾(わらわ)」の意味
一人称「妾(わらわ)」に含まれる意味を整理すると、次のような姿勢を表していました。
- 自分は未熟な存在である
- 自分は身分の低い者である
- 相手を上位として立てる
つまり、「妾(わらわ)」は威張るための言葉ではなく、へりくだるための言葉です。
この点が、現代のイメージと大きく異なる部分と言えるでしょう。
「妾(めかけ)」との混同が生まれやすい理由
「妾」という漢字には、もう一つ重要な読み方があります。
それが、名詞として使われる 妾(めかけ) です。
妾(めかけ)は、側室を指す言葉として歴史的に使われてきました。
この意味が辞書的・歴史的な文脈で現代まで残っているため、「妾」という漢字を見ると、側室の意味を思い浮かべる人も少なくありません。
しかし、妾(わらわ)と妾(めかけ)は、読みも役割もまったく異なる言葉です。
妾(わらわ)は一人称、妾(めかけ)は立場を示す名詞であり、意味が直接つながっているわけではありません。
側室が「妾(わらわ)」を使ったことはあった?
歴史上、側室という立場にあった女性(=妾[めかけ])が、一人称として妾(わらわ)を使う場面は確かにありました。
ただし、これは「私は側室です」という意味で妾(わらわ)を使っていたわけではありません。
妾(わらわ)はあくまで、自分の立場を低く示す話し方です。
側室という身分の女性が使った結果として結びつけて認識されるようになっただけで、妾(わらわ)そのものが側室を名乗る言葉だったわけではないのです。
現代で「妾(わらわ)」が特別に感じられる理由
現代日本語では、「私」「僕」「自分」など、一人称に身分や上下関係が強く反映されることはほとんどありません。
そのため、妾(わらわ)のように立場を明確に示す一人称は、非常に古風で特殊な表現に感じられます。
さらに、時代劇や創作作品の影響で、「妾(わらわ)=高貴な女性の一人称」というイメージが強調されてきました。
この創作上の印象が広まったことで、本来の「へりくだった一人称」という意味が分かりにくくなっているのです。
まとめ
一人称「妾(わらわ)」は、もともと自分を低く表すための言葉でした。側室を意味する妾(めかけ)とは読みも役割も異なり、「私は側室です」という意味を持つ表現ではありません。妾(わらわ)は、未熟さや身分の低さを自覚し、相手を立てる姿勢を示すための一人称でした。現代では創作作品の影響によって特別な言葉に感じられますが、日本語の歴史を知ることで、その本来の意味が見えてきます。
